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【技術読み物】ミルグレインのお話

荒井技巧で加工するミルグレインは、必ず粒の両側にタガネで細い溝を切っています(但し覆輪上部への加工の場合には溝を切る必要性がなく、指環の両側等の場合はそれぞれ1本だけ切ります)。又、タガネの先端を四角く加工して使っています。
これらにより、どういった効果があるのかのお話です。

効果は大きく分けて4つ。
1)周辺に不要な変形をさせない。
2)勝手に綺麗に並ぶ。
3)綺麗なラインを見せる。
4)「未加工部分」を残さない。
です。

1)周辺に不要な変形をさせない。

ミルグレインは「塑性変形」に分類させる金属加工で、言ってみれば「曲げたり押したりの変形」です。その為、押されて凹んだ分、周りは出っ張ります。それが「カエリ」と呼ばれるものです。この部分には皴が寄りますし、光沢面であれば反射方向が変わり、折角の面出しが失われます。もちろん加工後に再度面出しをすれば良いのですが、テクスチャを入れてある場合等にはそう簡単にはできません。 溝を予め切ることで、このカエリの発生を無くせます。

2)勝手に綺麗に並ぶ。

タガネの先端を四角くすると、横から見たときに「窪み」ができます。これが勝手に溝の間の山に収まる為、ぶれなく綺麗に粒が並びます。つまり、溝を切ってカエリを出なくすると同時に、この「山」を作ることも重要なのです。

3)綺麗なラインを見せる。

溝の外側にはタガネで切った光沢面がシャープに残りますので、綺麗なラインになって見えます。

4)「未加工部分」を残さない。

たとえ溝を切ったとしても、先端の丸いタガネを使うと、粒の間に必ず三角形の「未加工部分」が残ります。この部分は1)で書いたカエリと同じなので、光沢もなく、綺麗ではありません。これを少しでも少なくしようと間を詰めると、三角が残る上に粒同士が食い合ってしまいます。 口を四角することで、これを完全に防げるのです。径の小さい石の周りにミルグレインを入れる場合には、口を台形にして綺麗に丸く並ぶ様にします。

左側は「正方形の口」のタガネを使った場合
右側は「台形の口」のタガネを使った場合

この様に、加工の仕上がりに大きな違いが出て来る訳です。 但し、これもまた使い分けで、覆輪の幅があり過ぎてこういった加工が困難な場合、口の丸いタガネを浅く入れて「型押し」の様に並べるのも方法の一つです。

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