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2021年9月、渋谷道頓堀劇場で美月春さんを観た

※投稿しておいてなんですが、この程度のぼかしで書いていい内容なのかわかっていません。その辺の事情に詳しいかた、もしストリップ観劇のルールとしてアウトならお手数ですがご指摘ください。また今回は特別であり、今後、他の演者・演目について詳しく書くつもりはありません


数日前に初めて観た踊り子さんが、きょう引退した。
もともと行くつもりはなかったんだけど、観に行かなかったら一生後悔するような気がして、仕事帰りに行った。

劇場内はこわい。いくら初心者向けの案内を読んだところで、実際の様子はわからない。たぶんわたしの知らないルールやマナーがたくさんあって、とくに居場所探しには苦労した。少しうろうろして、ここでいいかとほっとしていると、柵のところに誰かの傘があって、別の場所を探す。あの空席は座っていいのか?この時間はなに?

勇気を出して聞けばみんな優しく教えてくれるけど、関係はそれっきりなので、どっと疲れてしまう。みんな何度も来たことがあるんでしょう?わたしはまだ2回目なのよ。とにかく目立たないように緊張した。携帯の電源は切ってしまったから、時間を見ることもできない。ポラの時間が終わって場内が暗くなると安心した。

1曲目までは自分のことばかり考えていた。美月春さんが出てきて、「かわいい」とおもった。道成寺、読みかたすら知らなかったけど予習してきてよかった。手紙らしきものを破って、衣装がはだけて、客席に向けてなにかを投げたあたりから、わたしは釘づけになっていた。

怒りを表現した姿が本当に怖くて、ゾッとした。ついさっき初めてこのひとを見たのに、もうこんなに怖い思いさせられるの?でも目が離せない。ステージからおりて、こちらへ来たらどうしよう。映画のなかでしか存在しない会ったら終わりのヤバいヤツ。感情に支配されている人間。本当に怖い存在だった。薄暗い照明と、ステージを叩く音が気味悪く、心底引いていた。

次の曲、ひとを殺していた。予習して知っていたはずの展開。でもすごく悲しい。あの指は首をしめているのか、震える、曲がった指の関節を見ながら「本当はこんなことしたくなかったのに」という悲痛な叫びを感じた。細かい設定は知らない。愛を感じて、どうしようもなくつらかった。悲しかった。

すべての演出が終わり、美月春さんを見たとき「こんなにちいさいひとだったのか」とおもった。なんかぷりっとしていてかわいい。さっきまでの迫力はどこへいったのか。すごかった。もう一度観たいなあ。


もっとはやく知っていたら、とおもう。

4月頃、「ストリップを観に行きませんか?」と誘われたわたしは、先約があったので断った。
あのとき会った友達とは、会う前より良い関係になっている。全く後悔はしていない。あの日があったからいまの関係がある。これからも続けていきたいとおもえる。

あのときストリップを観に行っていたら、美月春さんを最大6か月追うことができた。たぶん、新しい出会いもあった。ストリップを通して、自分についてのなにかが分かったり、なにかが決まったりしていたかもしれない。

まいにち選んで生きているなあとおもう。
あの日ああしたから出会えなかったひと、これからもすれ違い続けて全く知らずに生きていく。

もう記憶も曖昧だけど、美月春さんに「間に合ったね」と声をかけてもらったこと。名前も覚えていない誰かのツイートであの日、渋谷へ行こうとおもえたこと。本当によかった。ありがとう。

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