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【ポカチェ】Nash ICM Calculatorの誤差について

こんにちは。ARAです。
今回は、Nash ICM Calculatorの誤差について解説します。

Nash ICM Calculatorを終盤のpush or fold時に指針にしている人も多いと思うので、参考にしていただけると幸いです。

タイトルの通り、誤差について解説しているのですが、実は一番重要なことは5節だったりします。

その他、発展的内容としてICM戦略が-EVになる場合、そもそもICM≠賞金期待値という話も盛り込みました。
余力のある方は、ぜひこちらもお読みください。


ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです!

今回もidenyanさんに監修していただきました。
idenyanさんありがとうございました!


0. Nash ICM Calculatorとは

Nash ICM Calculatorを知らないという方は、ぜひこちらの動画[1]を見てください。

とてもわかりやすく解説してくださっています。

Nash ICM Calculatorのリンクは、こちらになります。

そもそも、ICMを知らないという方は、こちらの動画[3]や、

こちらの記事[4]等を参考にしてみてください。

今回は、Nash ICM Calculatorの誤差についての記事なので、まずは、ICMという概念やNash ICM Calculatorに慣れることをおすすめします。

それらに慣れた後で、より詳しいことを知りたい場合に、ぜひこの記事を読んでくださると嬉しいです。

1. ポカチェでのPrizeの入れ方

[1]の動画でもみていただいたように、Nash ICM Calculatorでは、全員のスタックと、Prizeを入力することでNash ICMを計算します。

[1]の動画で、Prizeに(6,5,4,3,2,1)と入力すると解説していましたが、その通りで、基本は(6,5,4,3,2,1)または(5,4,3,2,1,0)と入力します。

ただし、シズマの場合は(6,5,4,2,1,0)と入力してください。

(6,5,4,3,2,1)という表記は、1位で6,2位で5,3位で4,4位で3,5位で2,6位で1もらえることを意味しています。

なぜランク戦とシズマにおいて、そうように入力するのかは、次の記事[5]の2節で解説しています。

ただし、これらは3位が最低+1ポイントもらえるという保証が掛からない場合に成り立ちます。

2. レート補正は誤差になるか

1節で触れたように、Nash ICM CalculatorのPrizeの部分は、(6,5,4,3,2,1)と入力するのが基本となります。

ただし、ランク戦には、レート補正があります。

例えば、レート補正が-2の場合は、もらえるポイントが(33,19,5,-9,-23,-37)になります。

こうした場合に、Prizeに(6,5,4,3,2,1)と入力するべきか、レート補正を考慮して(33,19,5,-9,-23,-37)と入力すべきか迷った方がいるかもしれません。

さらには、自分のレート補正が-2であっても、他プレイヤーのレート補正は-1だったり、+1だったりと、プレイヤーによってもらえるポイント配分が違ったりと複雑なので、混乱する人もいるかもしれません。

答えは、「どちらでも良い」です。

実は、多くの場合レート補正は、誤差の要因にはならないのです。
これは、1節で参考にあげた記事にも書かれている通り、ICMの線形性によるものです。

ただし、条件があって、それが誰も3位+1保証の補正が掛かるレート帯にいないということです。

誰かしらのプレイヤーに、3位+1保証のルールが掛かると、線形性が崩れ、
誤差が生じてしまいます。

3.  Nash ICM Calculatorの誤差

3位+1保証のルールが掛からない限り、レート補正は誤差にならないことを解説しました。

では、それ以外にNash ICM Calculatorの出す解には誤差はないのでしょうか。
実は、あります。

それは、Nash ICM CalculatorはNash均衡における解を算出しているのですが、

その解が、本来は混合戦略になることに起因します。

混合戦略とは、AI 80%、fold 20%みたいに、同じハンドでも、AIかfoldかが頻度で分かれている戦略のことを意味します。

それを、Nash ICM Calculatorでは、使いやすさのために、純粋戦略(AIが100%かfoldが100%かのどちらか)だけをとるものとして結果を算出しています。

その結果、誤差が生じています。

Nash均衡がわからないという方は、例えば以下の文献[6]等を参考にしてみてください。

4. 誤差を許容する必要性

では、3位+1保証のルールや、混合戦略を純粋戦略として解を算出するなどの誤差が生じてしまうNash ICM Calculatorは、あまり役に立たないのでしょうか。

答えはNOです。

厳密に正確な解を求めることはできなくても、ある程度の誤差を認めて近似的なものを用いることは、とても有用なことです。

例えば、次の√(1+a^2)という量を考えてみてください。

これは、もしaが十分に小さい時は、a<<1として1+a^2を1に近似することができます。

もし誤差が小さいなら、√(1+a^2)という扱いにくい量が、1という、とても簡単な量になります。

物理学や化学、さらには数学も、このような近似を活かすことで発展してきました。

誤差があるすなわちダメ、ではないのです。
このような理解は、物理や化学を勉強してみると、共感していただけると思います。

それに、誤差があることは否めないですが、その誤差レベルの違いを、私たちは実践できるのでしょうか。

例えば、Nash ICM Calculatorで算出されるpush,call/foldの際となるハンドは、混合戦略になることが多いと考えられますが、その頻度を調整することはできるのでしょうか。

それが難しい以上、厳密性にこだわる意味はあまりないのではないでしょうか。

ランク戦で(5,4,3,2,1,0)、シズマなら(6,5,4,2,1,0)というPrizeを、大まかな目安として活用することは、とても意義のあることです。

5. 相手のレンジを想定することの重要性

ここからは、さらに本質的な話になります。

これまで、Nash ICM Calculatorの誤差や有用性について解説してきました。

しかし、実は、Nash ICM Calculatorの結果に従うことは絶対ではありません。

それは、相手のレンジを想定することがより重要になるからです。

例えば、以下のようなシチュエーションを考えてみましょう。
(創作盤面です。全員のスタックの合計は51BBですが、このようなシチュエーションはポカチェのランク戦では起こりません。わかりやすさのために、スタック数を整数にしています)

残り5人盤面。あなたはBTNで、88を持っています。
COが特大チップリです。

UTG:5BB
CO:25BB
BTN:6BB
SB:9BB
BB:6BB

UTG:fold
CO:AI

ここで、あなたはcallすべきでしょうか。foldすべきでしょうか。

COは、Nash ICMに従うと、any handでAIできる状態のようです。

一方のBTNは、Nash ICMを計算すると、88+でした。

では、コールすることは正解なのでしょうか。

これについては、

相手がNash通りany handでAIしていると考えられる場合にコールしてよい

となります。

というのも、このときNash ICM Calculatorで算出されるレンジは、相手がany handでAIする場合に、ICMを考慮した必要勝率を満たすハンドで構成されています。

相手がany handよりもタイトにプレイしている場合は、自分のコールハンドも、よりタイトにしなければならないのです。

実際に、Nashでany handで入れていい状況で、その通りに25oとかでもAIに入れるプレイヤーは多いでしょうか。

経験上、もう少しハンドを選ぶプレイヤーが多いような気がします。

なので、この場合は88はfoldが良いでしょう。

このように、Nash ICM Calculatorは参考にしつつ、相手のレンジを想定して戦うことが重要なのです。

6.【発展】最適であるICM戦略が-EVになるケース

実は、最適戦略であるかのように思われるICMも、EVがマイナスになる場合があります。
その原因が、相手のミスプレイです。
相手がミスプレイをすることは、本来ゼロサムゲームにおいてこちらにとって+EVのはずですが、ICM下では、1対1の衝突でもゼロサムゲームにならないため、それが自分の-EVになる可能性があります。

それは、基本的に、特定の2人が大きくポットをやり合うことは、他のプレイヤーにとっても利益となるからです。

例えば、ショートを飛ばしたい殺意の高いプレイヤーが適切なレンジより広くコールすることは、プッシュした側のICM-EVもロスさせることが頻繁にあるので、他のプレイヤーが存在する以上、-EVになる可能性があるのです。

7.【発展】 ICM自体が、賞金期待値を近似したもの

ここまできて、何を言うんだと考える方もいるかもしれませんが、実はICM
自体は、そもそも賞金期待値を近似したものです。

ICMは、「あるプレイヤーが優勝する確率は、そのプレイヤーの持つチップが、全員分のチップに占める割合」という仮定のもと成り立っています。

例えば、3人のプレイヤーがいて、それぞれ50BB,30BB,20BBだった場合、
1人目のプレイヤーが優勝する確率は、50%、2人目のプレイヤーが優勝する確率は30%、3人目のプレイヤーが優勝する確率は20%というように。

実際は、チップリーダーは賞金ストラクチャーにより圧力をかけることができるので、チップリーダーの優勝する確率が、理論値よりも高くなります。
(この誤差はチップEV重視のプレイヤーが多いほど小さくなり、場合によってはチップリーダーの優勝確率は理論値よりも小さくなります。)

それにより、賞金期待値も変わってきます。

8.まとめ

今回は、Nash ICM Calculatorの誤差について解説しました。
このように、Nash ICM Calculatorの算出する結果には誤差があります。
ただし、だからといって、Nash ICM Calculatorが役に立たないというわけではありません。
さらに、Nash ICM Calculatorを過信するのではなく、相手のレンジを想定して臨機応変に戦うことが、重要になります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

9.参考文献

[1]ポーカーチェイスのトップランカーになるなら必須のツール『Nash ICM Calculator』【コーチング切り抜き】【PokerChase】ショートのポーカー冒険譚
https://www.youtube.com/watch?v=4KpvgzEdE8o

[2]Nash ICM Calculator      Holdem Resource.net

https://www.holdemresources.net/nashicm

[3]ICM~ポカチェのランク戦で勝つための必須知識~【ポーカー講座】【PokerChase】
https://www.youtube.com/watch?v=vSmfKbbdCAA&t

[4]ICM(Independent Chip Model) Poker道 初心者でもできるテキサスホールデム
https://www.pokerdou.com/tournament/icm/

[5]【ポカチェ】分散ICMをかんたんに紹介します Aragami
https://note.com/aragami830/n/n6fbe9bc0304b

[6]ナッシュ均衡 高校数学の美しい物語
https://manabitimes.jp/math/2123

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