見出し画像

まなみのりさ新曲レビュー⑤「Diamond dust」

8/7でこの曲のパフォーマンスが配信で初披露されるのを観たとき、もうね「待ってました!」この感想に尽きた訳ですよ。同じタイトルの付いた3/28、4/2のクアトロ2デイズ「Diamond dust」で初披露されるはずだったこの曲が、春霞が舞い散る季節を過ぎもう真夏だよ、という時期ですよ(笑)。

新型コロナウイルスの影響で、世界中が自粛モードとなり、日本でもオリンピック延期が発表された2月後半からライブを始めとするイベントの中止、延期が相次いだ。まなみのりさの場合も例外ではなく、2月29日に予定されていたGIG TAKAHASHI TOUR2020仙台公演以降のライブ予定が全て中止または延期。今年前半の大目標であった3/28、4/2のクアトロ2デイズ「Diamond dust」も中止となってしまった訳だが、そのタイトル「Diamond dust」を冠した新曲MVが公開されたのが3/20。それから4ヶ月半もの間、ライブパフォーマンスの披露が待たされることになる。

この曲、MV作成された前2作とはガラッと変わった感じの映像だったり、音楽的にも「今のまみり」の方向性を指し示すようなアレンジャー星山卓満の「星山節」がビンビンに伝わってくる作品だったりと、いろいろ語りたいことがあるのだが、やはり特筆すべきは歌詞なんじゃないかと思うんだ。

昨年8月に対バンしたH△Gが作詞作曲。対バン時にステージの上から「H△Gさんに曲を作ってほしいなぁ」と懇願したというだけあって、これまでのまみりを描いたような歌詞が端々に表れている。

真っ暗な夜と真っ白な朝の隙間で
ただ僕らは夜明けを待っていた

どうしても半年間の活休期間を思い出さずにはいられない歌詞。

故郷のこと思い泣いた夜を
何度でも乗り越えて来た

上京したての頃は、予想はしてたけど東京はそれ以上に厳しかったと泣いたことも一度や二度ではなかったという。それを経験したからこその歌詞。

流した泪と隠した傷痕の数だけ
きっとまた強くなれる

そうやって、何度も泪を流し、傷つきながら、それでも前を向いて歩いてきたからこその説得力。先の「できるなら…」もそうだが、今のまなみのりさを語るにピッタリの歌詞である。

ただ、この曲のすごいところはそれだけではない。12月のヒューリックホールで曲と同じタイトルを冠したワンマンが発表されたことを考えれば、おそらくだが昨年末にはこの歌の仮歌は出来上がっていたのではないかと思われる。その時にまさかこんな状況になっているとは誰も想像ができなかったであろう。にも関わらず今のこの状況を見越していたかのようなこの歌詞。

暗闇の中に差し込んだ光の角度は
また僕らを未来へと誘う
ダイヤモンドダストみたいな桜が舞い散る
この春を忘れないよ

奇しくも今年の春は「忘れられない春」となってしまった。でも、この期間があったからこそミニアルバムを出せるだけの新曲を用意することができた、とも言える。それが「暗闇の中に差し込んだ光」なのかもしれない。

真っ暗な夜と真っ白な朝の隙間で
いま僕らは夜明けを待っている

過去形の「待っていた」が、かつてまなみのりさが復活に費やしていた活休期間のことを指しているのだとすれば、現在進行系の「待っている」は正に今の状態。配信ライブは復活したものの有観客ライブは8/7、8で再始動するはずが断念し、まだ復活出来ていない。それでも10月には少しでも進めたい、という意志で動いている様子。

単なるまみりの活動と重ね合わせるだけではない。世の中全体がコロナ禍で自粛を余儀なくされた今春、そしてその状況は夏を過ぎ秋となりつつある今も続いている。ただ、その状況もようやく収束の兆候を見せ始め、これから徐々に生活を元に戻していくフェーズに向かっていく、今は正にその夜明け前の暗闇の状態だろう。

そういう意味では、今のこの世の中だからこそ、多くの人に聴いてほしい逸曲、とも言える。

明けない夜はない。いま僕らは夜明けを待っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?