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犯罪被害者等基本法

 平成16年秋の臨時国会(第161回国会)において,「犯罪被害者等基本法」が成立した.同法は,犯罪被害者の多くは,(中略)社会において孤立することを余儀なくされており,さらに犯罪等による直接的被害にとどまらず,その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくないとの認識のもと,国民のだれもが犯罪被害者となる可能性があるため,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならないとして制定された.そのうえ,犯罪被害者のための施策を総合的かつ計画的に推進することによって,犯罪被害者の権利利益の保護を図ることを目的としており,その基本理念として,犯罪被害者は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することなどが定められている.
その後,犯罪被害者等基本法に基づき,平成17年12月に犯罪被害者等基本計画,平成 23 年3月には第二次犯罪被害者等基本計画,平成28年4月には第三次犯罪被害者等基本計画がそれぞれ制定され,我が国の犯罪被害者支援は大きく発展したと言われている.
そして,内閣府(2006)は,平成18年度交通事故被害者サポート事業報告書のなかで,交通事故の加害者は,業務上過失致死傷罪(刑法211条),運転致死傷罪(刑法208条の2)などの罪に問われることがあるとしている.富田(2006)は,交通事故の被害者は,「事故」の被害者であると同時に「犯罪」の被害者ともなりうるため,その場合の被害者は犯罪被害者の側面も有することになるが,従来交通事故被害者を犯罪被害者として理解し,その支援のあり方を検討することはあまり無かったように思われると主張している.

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