宮崎駿監督最新作「君たちはどう生きるか」ノー忖度感想(ネタバレあり)
割とネタバレには寛容派の自分ですが、「宮崎駿監督作品を事前情報無しの状態で劇場鑑賞出来る」という経験は、さすがに人生でもう二度と出来ないと思ったので、初日に2000円(厳密には2000ポイント)消費して鑑賞してきました。いつもなら安い平日に行くのですが、さすがに来週の火曜日までネット上の情報接触を制限し続けられる自信が無かったので。
「君たちはどう生きるか」という作品タイトルの印象から、結構身構えて観に行ったのですが、思ったより「内容は普通の冒険活劇」だなという印象でその点では肩透かしでした。
新海誠や細田守とやってることに大差は無い。
ストーリー的な側面での評価としては、庵野秀明や押井守の方がよっぽど作家性の主張が強い。
しかし絵作りとしては、見応え充分で、これまでの宮崎駿・ジブリ作品の集大成のような内容でした。過去のジブリ作品のセルフオマージュみたいなシーンが多くて(低い木の枝を潜るのは明らかにトトロを想起させるし)、キャラクター造形はもののけ姫や千と千尋、ポニョに似たキャラが多かったですね。その点ではニヤニヤしながら結構楽しんで観ることが出来ました。
「宮崎駿の精神世界ツアー」という感想を見かけたのですが、言い得て妙だなと。やりたいシーンの絵コンテ集みたいなものが監督の頭の中に沢山あって、後半パートは特にストーリー的な整合性を度外視して、それを無理して沢山詰め込みましたみたいな内容だったかなという印象。
恐らく前半までは結構真面目に作ってたと思うのですが、途中で諦めて「俺の見たいコンテを切るんだ!」という感じになっていったのではないかと推察出来る、なかなかのハチャメチャっぷりでしたね。この辺りの好みは分かれそうかなと。
本編の内容は124分、体感時間はもっと長かった印象。時間の使い方が贅沢だなぁと。
特に前半の異世界転送されるまでのお屋敷でのパート。台詞が少なくて絵コンテだけで話を進めてく感じは、結構引き込まれるので好みでした。
潮目が変わったなと明確に感じたのは、主人公がアオサギ達と一緒に「下の世界」に飛ばされてからでしょうか。
ラピュタやトトロの頃の宮崎駿は一貫して「子供向け」を意識して作品づくりをしていたと思うのですが、このストーリーを子供に理解しろというのはさすがに無理があるし、普通に気持ち悪い。
そもそも感情移入出来るキャラクターが少ない。主人公からして転校先の学校で馴染めずに喧嘩して帰り道にいきなり石で頭を打ち付けたのも割と「???」でしたし、アオサギが敵から「トモダチ」になる過程ももう少し丁寧に描いても良いのかなと。
宮崎駿ファン・ジブリファンならば、色々考察する余地はあるけれども、それにしては後半の冗長さ・支離滅裂さがちょっとしんどいので、気楽に周回出来る作品になってないのは残念ポイント。
あと、普通に鳥が嫌いになる映画だし、鳥が苦手な人なら要注意作品かなと。
子供が観たら場合によってはトラウマになりそうな気も。
他には、エンドロールが終わって帰り際に若い女の子二人から「っていうか、妹と再婚するって普通にキモくない?無理!と思ったんだけど」という感想が聞こえてきて、笑ってしまいましたね。まあ時代背景とか、色々あるんでしょうけど。
まとめると、「宣伝をしなかった」理由がよく分かる内容でした。「宣伝が難しい」タイプの作品なんですよね。
「この作品のプロモーションビデオを作れ!」と言われても、どこをどの程度切り取ってどう編集すれば良いか難しいし、上手くいくかどうかは分からないけど、割と悩んだ末の決断だったように思う。
まあこういう実験的・挑戦的な手法が取れるのも、長年培ってきた、宮崎駿とスタジオジブリのネームバリューがあってこそだし、自分はその手法にまんまと釣られてしまったので、これはこれでアリだったのかもしれないと思いました。
この先この作品が口コミによって、どの程度興行収入を伸ばすのか、非常に楽しみですね。
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