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私の心臓と眼と心

海空先生に数学を教えてもらう約束をした数日後、小児総合病院の受診があった。
診察の結果、3月の発熱は先天性心疾患の悪化や、感染性心内膜炎などは心配しなくて大丈夫とのこと。
今まで通り、年1回の経過観察でいいと言われた。
しかし、眼の状態が良くないと指摘されて、急遽、循環器科から院内紹介で眼科を受診。
検査の結果、間欠性外斜視という状態で、手術を勧められた。
確かに中学入学頃から、疲れると左眼が外へ行ってしまうことを、友達によく指摘されていた。
海空先生は気が付いていなかったのかな?と、ふと思った。

15歳だとギリギリ小児総合病院で手術できる年齢になる。
他の大人を診察している総合病院での手術も説明された。
ただ総合病院だと局所麻酔での治療になると言われ悩んだ。
親は、夏休み中に手術できるのであれば、どちらの病院でもいいという意見だった。
私は、少し考えさせてほしいとお願いし、小児総合病院での手術の仮予約だけしてもらった。

帰宅してから、頭に浮かんでくるのは海空先生のことばかり。
 あの時、私の胸に傷が出来ないといいなと心配してくれたっけ。
 もし入院したら、海空先生はお見舞いに来てくれるかな?
 小児総合病院だったら、病棟には親しか入れないから来てくれないかな?
 総合病院だったら、コッソリ病棟に来てくれるかな?

全く勉強が頭に入らない状態となってしまった。

高校には、手術が必要な状態になったことを親が伝えてくれた。
ただ心臓ではなく、眼の手術になったと。
すると心臓は問題ないとのことで、控えめに参加していた体育は、1000m走に参加することとなり、かなり辛かった。
この1000m走は、学校近くの海沿いの公園内を走ることになっていた。
授業で走りに行く途中で、公園の駐車場で見覚えのある黒いハッチバックタイプの車が停まっていた。
同じタイプの車なんてたくさんあるからと私は気にしていなかった。
すると授業後、同級生たちが
「あの黒い車の中で、カップルがキスしてたよね~」
「あぁ~見た見た!」
「こんな昼間っから、いい加減にしてほしいよね~」
「イチャつきたいなら、ホテルでも行けよ~」

と話していて、急に私の心がモヤモヤしてきたのだった。

これは、1993年5月中旬頃のエピソード。
私の心の中が真っ黒になっていく予感がした。
海空先生はそんな人じゃないと、自分に言い聞かせるようにしていました。

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