###2024/06/01###

初めまして6月。これから少しの間だけ宜しく。

ーーー本当の自分"という幻想ーーー
今日は古本市でこの本と出合いました。

5月病を快方に向かわせるべく、着付け薬として購入。逆効果かも笑。
実際、どうして手に取ったのかも説明できません。
パッと見て印象に残ったというか。そういう"偶然"が大好きです。

書評というほど高尚ではありませんが感想。

本作は、主人公のJKと友人達の"ありふれた日常"を描いた群像劇小説なんですが、この"ありふれた日常"がミソです。

誇張じゃなくて本当にどこにでもありそうな感じなんです。
「特別なサイノウ」、とか「運命のデアイ」、とか創作に許された特権、時に実存在の僕らを掻き乱してくるような要素は一切合切排斥されてます。
で、故に小説特有の贅沢な将来への不安と違って、割と生々しい現実が彼女達の前には広がってるんですよ。
というか、普通に彼女達の人生は順当に行けばそこまで明るくないんです。
「田舎」、「底辺高校」、「就職難」、生気を削いでくる現実に隣接してそれを悲観しながら"忘れる"んです。
この"んー忘れちゃえ"精神が一番印象的でした。
これは決して楽観とか希望的観測がある訳でもなく、分類的には諦めなんですね。
"まっ、いっか(笑顔)"でも"早く隕石降って死なないかな"でも無い。
"んー忘れちゃえ"

で、別にそれを肯定するかと言われれば僕は寧ろ「はぁ?」って感じですよ。自分の話ならね。お金持ちになりたいもん。
ただ、そういう曖昧さを許容できる、(できるというかただ事実として"する")中で"ありふれた日常"を楽しむんですよ。
このグレーゾーンっていうのが現実と理想とのギャップを埋めて、人生を成り立たせるためのパーツなんですかね。

まぁ、ふと冷静に考えたら異常事態。
養鶏場から逃げ出さない知性のある鶏。
ホントは勉強すべきなんですよ。
しないなら就活対策、スキル探しするとか将来設計するとか。それを自覚してるけど置き去る。
同じ事をアナウンスする教師達の声が、届いてるけど響いてない、っていう描写が繊細な心の動きを捉えているようで見事でした。
繰り返すけど、"ただ今を生きてる"
そこに意味付けも紐付けも介入する余地は無い。

ここで
「では、尊ぶべき将来には価値があるのかい?」
っていう命題との衝突が生じる。
極論、本当に"先"しか考えないなら不老不死の研究が成就するまで絶対家から出るべきじゃないんですよ。だって死んだら終わりだもん。

でね、彼女達は絶対に"幸せだった"んですよ。
何十年経とうと、死のうとね。
現実は残る。というかあった"事実"は消えない。

これを最近受け入れられるようになって少し息がしやすくなった。
万事が"過去として消費"されくなら価値あるものなんて無いじゃない、と絶望してた浪人初期だったんですけど、変化発生。
時間が解決してくれるの典型例だね。ミーハー野郎め。

友人に前言われた言葉を思い出します。
「過去が正解かの答え合わせまでは時間が必要だから考えても仕方ない」
的な。もうちょい良い感じだったはずだけどなぁ。
荒んでた頃は刺さらなかったけど、今は少し沁みます。

結局、価値観と感情のトレードオフで彩られたレールが人生なのかなぁと最近は思います。
"したい"と"できない"の板挟みで藻掻き続けた末に各人の答えが出るんだろうなって。
絶対的な答えを求める事の愚かさ。宗教への嫌悪感の正体ですね。
まぁ、そういう否定も含め、相対的な「ワタシの声」で出来てるのが世の中だしね。イライラするだけ無駄。
一々マクロに逃げる前に現実とバトル!

うーん、というか彼女達を不幸としてしまう発想のほうが異常でしたね。
ヘルジャパン…。もう終わりだよ、この国!

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初めの句の話すんの忘れてた。
印象的だったシーンです。
友人達が普段見せないような側面を主人公の前で出す時に「くるん」って表現するんです。カードがひっくり返って違う面が出てくる感じ。
それが主人公の目には少し恐ろしく映る。未知への恐怖でしょうか。
でも、その人が見せてくれる所がどこかって所まで含めてが人間関係、信頼の形だと個人的には思うんですね。
無意識であっても「くるん」が起きちゃう時、そこには心の揺らめきがあると思ってて。

「ボクの知らない顔だ。怖い。」
じゃなくて、
「こんな顔もするんだ、この人。」
ってのを喜べるなら、そこには絆が生まれてるんじゃないかなぁと。
一方的かもだけどねっ!
ちょっと重いな。この話は終わり!

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「ふいに、スウちゃんの顔から表情が消える。平べったい、何の感情もない顔になる。唇だけが、ひくりと動く。くるりだ。反転。あの怖いドラマに出てきた戸板のように、反転したスウちゃんは、あたしの見知らぬ人になる。」
あさのあつこ, 『ガールズ・ブルー』p100~101

「一緒にいて、しゃべったり笑ったりしていても、自分を全部、さらすことなんて、なかなかできない。屈辱や周知の想いは、なおさらだ。固くカギをしめて、心の奥に埋めておく。あたしの心が疼く。好奇心だ。カギを開けてのぞき見したいと疼く。同時に、自分も他人も尊びたい。卑しいことをしたくないとも疼く。尊ぶこと、貶めること、潔いこと、卑屈なこと、肯ずること、否めること、あたしたちの振幅は大きい。両極端の間を大きく動く」
あさのあつこ, 『ガールズ・ブルー』p172~173

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では。

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