見出し画像

青山オペレッタ第5弾公演感想

 青山オペレッタ THE STAGE ~ストーリア・パラッレーラ・ウノ~ 10月6日(金)夜公演見たので感想。
※注意。わりと失礼なことも言ってる。オペラとギリシャ悲劇の話が長い。



 青オペは3作目から劇場で見始めて、今はとっても好きな作品なんだけど、悲しいことに毎回とても空いているのよね。なんでだろうね……。
そして空いてるけどちゃんと次の舞台が作られている。なんでだろうね←
 今回もとっても楽しかったですよ!

 第1幕が本編、第2幕が劇中劇、第3幕がレビューショーという構成。公演時間は休憩含めても3時間無いくらいかな? かなりぎゅっとしてるけど、やっぱりやることは多いので、役者さんは大変だな~と毎度思う。

 今回の劇中劇の公演時期は、第4作目が終わった後ってことになるんだけど、本編は1作目、ノーヴァの初公演が終わったところから始まった。
そこから2作目、3作目と、どんなことが起こったのかを軽く説明しながら、その間のエピソードを補完していくような形で話が進んでいく。
始めての人向けに全体を振り返ったのかもしれないけど、あんまり印象には残らなかったかなぁ。
いや、それぞれのキャラに愛着のあるファンは嬉しいのかもしれない。サイさんのあさひ大好きエピとか、普通におもしろかったし。ただ、大きなストーリーではなくて、小さなネタの積み重ねという感じだったので、どうも本編がおまけ、みたいに感じちゃって。
あとなー、私はファルチェのギャグシーンがいつも全然ハマらないから……笑いのツボがずれててごめん……。
のっけから文句しか言ってねえじゃねえか、って感じになってきてしまった←
元々劇中劇が好きでハマったようなところあるので、すごく期待してたわけでもないんだけど、でも3作目の第一幕はとても丁寧で面白くて好きだったので、正直もうちょっとなんとかしてくれ~と思いました。

で、4作目で行われたチーム合同レビューショーの練習中、「こんなに全員成長してるのになんでレビューショーだけなんだ!」という演出の八木尾さんの一声で、合同劇も行うことが突如決まる。演目は「オルペウスとエウリュディケー」、主演は櫻井ノエ。ノエは戸惑いを見せるけど、ノーヴァの面々に背中を押されて、主演への覚悟を決める……というとこで一幕は終わり。
ノエを中心にするのに、輝夜が不在なのは残念だね。ノエも大事なところで輝夜の名前を出すので、その2人の絆が原作的には重要なんだろうけど……。私は舞台しか追ってないので(青オペはメディアミックス演劇コンテンツ)、なんでここで揃えられなかったんだろうなぁとよけいに思ってしまったなぁ。正直、ノエがどんな人で、2人の関係性がどうで、ってところは想像で補わないといけない部分が多くて。もう少しエピソードが欲しかったかも。
いや、全部追ってるファンだけ相手にするなら全然大丈夫なんですけど(でも埋まってないよ座席(小声))
てかさー、今気づいたけど公演ごとのHPのキャラクター紹介にも少しどんな人か書いておくといいんじゃないかな。大元のキャラクター紹介まで行かないとキャラのプロフとか見られないの不便だよ~。

気を取り直して第2幕。
オルペウスとエウリュディケーはギリシャ神話を題材とした演目。
偶然にも、先日ギリシャ悲劇「オイディプス王」を見に行った関係で、今の私は妙にギリシャについて知識を得ている女なので、二倍楽しめてしまった。

まー、この劇中劇が大変によかった。
第1幕で若干うーん……と思っていたのをすっかり忘れて、楽しかったなー! と思うほどによかった。そして、そういや青オペの最初の印象って、2幕・3幕に全振りしすぎw だったのを思い出した。それがまた面白いって思っちゃってた節はあるけどさ、3作目は1幕もよかったから、忘れてたわ。

ノエが演じる吟遊詩人のオルペウスは竪琴の名手。
あさひが演じる森の妖精エウリュディケーと出会い、2人は惹かれあって結婚する。
2人とも、とっても美しかった。衣装もメイクもとびきり素敵。特にあさひが演じるエウリュディケーのかわいらしいこと……本物の妖精さんみたい……。
そして歌がうまい~~~。
正直1幕見てるとそんなでも無いんだけど、2幕のノエはめっちゃ輝いている。歌がうまいから。
てか、音楽担当の人がツイートで、それぞれの一番良い音域が生きるように曲を作ったって言ってて度肝を抜かれたんですけど、世の中の舞台って全部そうなんですか……? OPで誰も声が出てなくてずっこけた某ミュージカル作品を作った人たちに聞かせてあげたいエピソードなんですが……。
それもあってか、本当に聞きごたえのある歌だったなぁ。

2人は思いあったのも束の間、エウリュディケーが毒蛇に噛まれ、命を落としてしまう。悲しみにくれるオルペウスの元に、愛の神アモーレが現れて、冥界へエウリュディケーを連れ戻しに行くよう導くのだけど、このアモーレとエウリュディケーを、あさひは1人2役で演じている。
で、このアモーレがまた恐ろしくかわいい。 
エウリュディケーが心優しい、柔らかな雰囲気の乙女であるのに対して、アモーレは怪しげでキュートな雰囲気と、神としての威厳みたいなものの二面性を見せてくる。さっきまでウキウキと冥界への道を示していたと思ったら、急にその行為の恐ろしさを語り、覚悟を問うてきたりする。
本当に言うこと聞いて大丈夫そ? という不安な気持ちにさせられる存在感、人では無い感じが出ていて、たまらなかったなぁ~。
長江くんの演じ分けにしびれました。なんでもできる。えらい。

アモーレに言われた通り冥界へ向かうオルペウスの前には、冥府の番犬ケルベロスが現れる。ここが何故かサービスコーナーみたいになっていて、二頭のケルベロス(つまり、6人)が出てきて客席の間をかけっこするという客降りが……。
え! 必要!? 笑
いやでも、こういうの無いと固すぎるのかな。うん。
あと、登場人物少なすぎて、他の人出せないもんね、こうでもしないと。役者のファンからすれば嬉しいよね。

オルペウスは竪琴の調べでケルベロスをおとなしくさせて、ついに冥界の王ハーデースと、その妃ペルセポネーの前にたどり着く。
嘆き悲しむオルペウスに心絆されたペルセポネーの進言により、ハーデースはエウリュディケーを連れていくことを許すが、地上に出るまでは決してその姿を見てはいけない、事情を話してもいけないと言われる。エウリュディケーは必ずお前の後ろをついていくから、と。

日本の神話にも似たような話があるし、とても有名なエピソードだから、この後どうなるかはわかってた。わかってたんだけど、ここのオルペウスとエウリュディケーのやり取りがとてもよくって、ハラハラしたし、苦しい気持ちになった。
エウリュディケーはオルペウスの様子に、愛が冷めたのではないかと疑って、こんなことならどうして生き返らせたのだと嘆く。オルペウスも、何度もその声に答えて振り返ってしまいたいと思うのだけど、それをこらえているうちに、あまりに苦しくて黙れ! なんて言ってしまう。
そして、エウリュディケーはついにオルペウスの呼びかけに答えなくなる。
舞台が真っ暗になって、オルペウスただ一人が照らされる。音楽も消えて、しんと、劇場が静まり返る。オルペウスは、不安げにエウリュディケーの名前を囁き、ついに後ろを振り向いてしまう。
その瞬間、ふっと彼の背後が明るくなって、そこにずっと立っていたかのように、エウリュディケーの姿が現れる……。

ここ、めっちゃよかった~! 
震えた。鳥肌立った。このシーンの迫力、すごかったよ~。
本当に真っ暗で、静かで、そこに居るのが全然見えていなかったから、エウリュディケーの美しい姿が浮かび上がった瞬間、めちゃくちゃびっくりしてしまった。

話の筋だけ聞けば、なんで振り返っちゃうんだよ、と思うんだけど、舞台で見せられると、振り返ってしまうオルペウスの気持ちもわかるというか……これはかなり難しい試練だったのかも、と思わされたというか……。
本当に、よくよく知っているエピソードで、こんな気持ちにさせられると思っていなかったから、やっぱり昔から愛されている題材の持つ力ってすげーな、と思ったし、そう思わせてくれた2人の演技にも感動しちゃった。

オルペウスが振り返った後、エウリュディケーは「なぜ神との約束に背いたのか」みたいなことを言うんだよね。不思議。だってエウリュディケーはそれを知らないはずだから。なんでだろうって思ってた。
これはウィキで軽く調べただけなので色々間違えてる可能性もある付け焼刃知識なんだけど、アモーレは神話のエピソードには登場していなくて、グルックという人の「オルフェオとエウリディーチェ」という有名なオペラ作品の中に登場するみたいなんだよね。なので今回の劇中劇はこの作品を下敷きにしているのかなあと思ったんだけど、このオペラ作品にはハーデースや、ペルセポネーは登場しないらしい。
じゃあ誰が「エウリュディケーの姿を見てはいけない」と言うのかというと、アモーレなんだよね。彼女が、冥界へ行けと言う時に、一緒にそれを告げるのだそう。
つまり、アモーレは神が与える試練の伝達者であり、1人2役で演じられるこの劇中においては、あの瞬間エウリュディケーはアモーレと同様の役割を担っていて、神と同等の存在になっていたのかもしれないなぁ、などと考えてる。少なくとも、このオペラを知っている人は、連想するよね。それを狙った台詞だったのかも、なんて。

他にも調べてて知ったんだけど、オルペウスがなぜ振り返ってしまったのかってはっきりとはわからないらしい。神話の解説サイトなんかだと、大体エウリュディケーがついてきているのか不安になって、って書かれている。
神話には、エウリュディケーのことはあまり書かれていないので、エウリュディケーが愛を疑って嘆く、というのは後世オペラ作品になるときに加わったエピソードらしい。オペラ版のあらすじ読むと、オルペウスはその嘆きに耐えられず振り向いてしまう、となっていたりもする。
今回の青オペVerだと、エウリュディケーは嘆き悲しむけど、オルペウスはそれに答えて振り返った感じではなかったと思う。色々な要素をミックスして作ってるんだなぁ、と、後から知識を補完してみてより面白さを感じた。

あと、劇中の情景や、心情を現すト書きというか、ナレーションのようなものがあって、それを他のメンバーが演じているのだけど、みんなフードを被って個を消して、同じ台詞を全員で高らかに朗読するんだよね。
これ、コロスだよね? と、ギリシャ悲劇見てきたばっかりの私は驚いてしまった。え、絶対そうだよね。意識してやらせてるよね? と。
で、調べてみたらそもそもオペラって、ギリシャ悲劇の復活を目的に作られたものなんだそう。えー!そうなの!? びっくり……これって一般教養ですか……???
しかも、このオルペウスとエウリュディケーの物語は、最古のオペラ作品とも言われてるんだって。
だから、オペラ作品を元にして作られている劇中劇が、ギリシャ悲劇の演出を踏襲しているのは当たり前のことなんですねー。なるほどねー。

……と一瞬思ったけどそれって全然当たり前のことではないんじゃない????
だって、そこまでやるかどうかって、制作側の判断なんだもの。
そもそも、台詞回しとかも、古風で、ギリシャ神話っぽ~い表現(うまく言語化できない)が多分に残されていて、最近ギリシャに触れている私はなんとも思わなかったけど、ちょっと前の私だったら、回りくどいな……って思ったかもしれない。
舞台に一度に3人までしか役者が出てこないのも、状況を全員の朗読で表現するのも、違和感を抱いたかもしれない。メインじゃない役者の出演時間短いんだから、ちゃんと顔見せて、個を出して、調整しろよって思ったかもしれない。そして、それはそれで面白かったかもしれない。
でも、そうはしないで、元にしたオペラの要素を真面目にやろうとしたからこそ、そのオペラの元になったギリシャ悲劇の演出が見て取れて、そして偶然にもギリシャ悲劇の知識を得ていた私がギリシャ悲劇だ! って感じとれたわけで。
これってすごいこだわりだと思うな……こうやろう!って決めて、こだわって作ってるよな……。

これまでの劇中劇もそうだったのかもしれないね。そこまで考えたことはなかったけど。何も知らなくても面白かったのは、きっと丁寧に作られていたからなんじゃないかな、と思う。短い時間、限られたセットの中で、元にしたオペラ作品の面白さが伝わるようにこだわって作られていたのではないかなぁって。
いや、まぁ、そうだったらいいなぁ、みたいなふわっとした話ですけどね。

レビューショーも毎度のことながら、きらびやかでとっても素敵だった!
衣装もかわいいし、メイクもウィッグもすごく似合っててみんな素敵だし、歌もダンスもやばい人ひとりもいないし、ものすごいちゃんとしてるんですよね……。
どうしてもよそを落とすみたいになっちゃうんですけど、よそで感じたことがあるようなアレ???みたいなとこがないのですよね、青オペ。
そういうとこが好きでもあるし、でもこれってちょっとほめにくいとこでもあるなと、今書いてて思ったよ。当たり前じゃん、と言われてしまえばそれまでなのかも。
いやでもこの物量からくる満足感は、堂々とほめたいです。3幕構成お腹いっぱい楽しめるよ! みんな見に来て~!

と、堂々と言うためにももうちょっと1幕がいい感じになると嬉しい…………(情緒ジェットコースターか)

今回、レビューショーまでの間にボイスドラマが流れたのだけど、そこでノエが「役にこだわりはなかった」って語るエピソードがあったんですね。自分は追い出されてきたから、舞台に立てるだけでよかったんだって。
私、これめっちゃいい話だなって思って。そういう、過去の出来事に起因する繊細な心情こそ、ちゃんとお芝居で見たかったなって……。いやまぁ青オペはもとからボイスドラマも混みのコンテンツなので、これも立派な本編ですよって言われたらそうですね、って感じなんだけど……。
難しいな。でも、ぜひ演じてるとこ見たかったなって思っちゃった。

こういうふうに、キャラクターのエピソードとかが、まったく刺さらないってわけでもなくて。いいなって思うことも、もちろんある。
前作で、めいちゃんが八木尾さんに現役復帰しないのか?って聞かれて、他にもっとやりたいことができたから、ってきっぱり言うところとか。
ファルチェが次回公演について話している中で、真鳥はベネラに対してもやる気を見せていて、でもきっとあいつはそうじゃないだろうな、って、八田くんだけが尚の気持ちに気付いているところとか。
小さいことだけど、めっちゃいいなぁって思う、忘れられない瞬間があるから、ここまではまってるのだと思う。
だからこそもっとできるでしょ~! って思っちゃうんだよねえ。
脚本もそうだけど、あの、それぞれ演技力にかなり差を感じるので、そこもどうにか……稽古でもう少しどうにか……。
次回どんな話になるかわからないけど、いい感じになってくれたらいいな(ぼんやりとした期待)

そう! 次回作発表されましたね! やったー!
あんなに空席だらけなのに(小声)
今回ほぼ顔見せだけだったメッザの理玖さん、めちゃくちゃ美しかったので、楽しみでございます。
そんで次回は波留さんが出るぞ~!!!
どどど年度末だけど、なんとかしていきたいと思います!


おまけ。大平くん、幕がしまる最後の最後まで自分のペンラ見つけてファンサしてる。プロ。えらい。ファン思い。かわいい。どこに差し込んでいいかわからなかった私の思い出。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?