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胸いっぱいの感謝をミモザの花束に託して
祖母が亡くなった。
わたしが大学を卒業する頃には認知症はだいぶ進行していた。就職のために引っ越しを余儀なくされたとき、《いってらっしゃい》の声はあったが、《おかえり》の声はもう実家にはなかった。帰省したときには病院での生活がすでに始まっていたのだ。
病院と介護施設での転院を繰り返しているなかで、ごはんを食べることもままならなくなったらしい。コロナ禍で会えない日々が続き、コロナが終息しつつあるな
ホットミルクは精神安定剤
春が近づいてくる!と心躍っていたわたしを諭すように窓の外には雪が積もっている。
そんなときはまろみを帯びた香りに包まれたくなる。
火にかけた小鍋がコトコトと音を立てる。ゆっくりと張る膜が厚くならぬよう、その一瞬を見極めて火を止める。
ふわふわのブランケットにくるまれたように優しい香りが辺りいっぱいに立ち込める。
まだひとくちも味わっていないのにほっとひと息ついてしまうのは魔法だろうか。