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歌姫は旗を立て


 Kalafinaが武道館ライブを行うと発表された時、正直に思ったのが「え、大丈夫?」だった。
 歌唱力も知名度も十分にあるけれど、王道のアニソンでもポップスでもない、分類することができないKalafinaの音楽はとても好き嫌いが分かれる。と、思う。特にメインの客層であるアニオタに対して、武道館を二日間も埋めることができるほどの集客力はないんじゃないか。これは私に限らず少なくないファンが思っていたことだと思う。
 ところが蓋を開けてみると一般は激戦、立ち見も完売した上に制作解放などが発表されるなど反響は上々で、いつの間にかこんなに大きな存在になっていたんだと感慨深かった。
 『 空の境界』のために結成され、渋谷の小さなライブハウスから始まって7年。 初めてラジオでobliviousを聴いたときは、UTAGEやmusic fairに出たり、武道館二日間も埋められたりするグループになるなんて想像していなかった。

 そんな感傷と喜びを抱きながら向かった武道館2days。

 REDとBLUEの二色を銘打った今回のアルバム&ライブだけれど、MCやインタビューでも散々言われていたように赤が情熱的で青がバラード。という風に分かれているわけではない。
 なぜならKalafinaの音楽はそういう分類ができないから。
 もしも例えるなら、青い炎。
 哀しみを情熱的に歌って、情熱をひそやかに歌う。
 だから青にもアッパーで情熱的な歌があるし、赤にも静かな歌があって。
 それを踏まえてTHE BESTにぴったりな、片方でも両方合わせてでも彼女たちのことがちゃんとわかる選曲で、7年間の軌跡を辿った素晴らしいアルバム&ライブだった。

 三人のテンションもいつになく高い。
 MCもなんだかふわふわしていて微笑ましく、それでいて歌い始めるといつものようにいや、いつも以上に声が出ている、乗りに乗っているように感じた。何よりもHikaruの「武道館の!東から!西まで!!!」ってところに最高に笑ってしまった。どうしたのHikaru?!って普段のKalafinaライブ参加者はもちろんメンバーも思っていたんじゃないかな。本当に、最近喋れるようになってきたなーとは思ってたけれど、あれだけ喋るハイテンションで男らしいHikaruは初めて見た気が……あれが武道館の力……

 
 バンドメンバーも、いつものFBMに加えてフルートの赤木さん、今野均ストリングスのみなさんによる4本のバイオリン、ビオラとチェロが2本づつ。二日目はそれに加えてアコーディオンの佐藤さんという贅沢な布陣。佐藤さんが加わったsignal大好きだから本当に本当に嬉しかった。

 あとバンドメンバーといえば、幕間に演奏されたwhen the fairy tale endsとNumquam vincarは外せない。特にblue dayのNumquam vincarは個人的にライブで聴くのが大好きなのもあって印象深い。三人が衣装替えにはけて、櫻田さんのキーボードだからとおしゃべりを始めた人たちにガツンと浴びせられた音の奔流。FBMの力を忘れるなと奏でられる重厚な音楽は本当に贅沢で、まさしくFront Band Membersの名前に相応しいパフォーマンスだった。

 そんな素晴らしいサポートメンバーと三人によって織り成される音楽は、聴いている人々の心を揺さぶって、高い天井に木霊し融けていく。そしてその響くための空間を演出する照明やスモーク、映像も全てを合わせて一つの物語のようだった。そんな空間にいると、儀式っぽい。という評価をする人がいるけれどそれもあながち間違えではないと思ってしまう。

ただただ美しくて切なくて、そして何かを渇望するような歌は、三人によって昇華されていく。歌声と楽器の音色が、幾重にも重なって絡まり合い、まるで天に伸びる祈りのように響き渡る。


 Kalafinaの歌は祈りだと思う。今を乗り越えるために、未来を掴むために足掻いてもがいて、天にも届けと願う歌。何か尊いものに捧げる歌。思い返せば、ARIA、lacrimosa、Kyrie、Gloria、アレルヤなど聖歌関連の曲名がとても多い。


 この公演は通過点。ここに大きな旗を立てて、彼女たちはこれからも先へと進んで行く。

 その未来を、祈りの先をこれからも見守っていきたい。


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