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文句なし100点満点の神ゲー / It Takes Two

賞レースというものはたいてい政治的な側面があり、大賞を受賞したからと言って・・・・・・ということは、ゲームのみならず映画などでも多い。要は「こういうのが審査員は好きなんだな」という嗜好の確認でしか無く、作品の良さは割と二の次な印象がある。

しかし、The Game Awards 2021におけるゲーム・オブ・ザ・イヤー大賞『It Takes Two』はその受賞がふさわしいものであると、心から納得できた。これが受賞しなかったらさすがに狂ってるとまで言えるぐらい、作品のクオリティが凄まじかった。

当時、GOTYに他にノミネートされたものをあげると、『DEATHLOOP』『メトロイド ドレッド』『Psychonauts 2』『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』『バイオハザード ヴィレッジ』などなど・・・・・・錚々たる面々が並ぶ。

確かに、他作品も素晴らしいものばかりだ。シンプルに面白いという点もそうだし、それである必要性(独特のゲーム体験)も持ち合わせている。しかし、しかしそれでも頭一つ抜けてIt Takes Twoが強い。彼らを押しのけて受賞したのに、何も違和感はない。

さて、少し前置きが長くなってしまったが、そろそろ本編に行きたいと思う。この記事は、つい最近It Takes Twoをクリアした男による感想、レビューだ。タイトルに有る通り、文句なしの神ゲーだったので、その熱があるうちに語りたい。


「ゲームであるということ」の必要性が明確

操作できる時間が長いことの大切さ

世の中には「別にゲームじゃなくても良い」と言われるようなものが残念ながらある。仕方なくゲームというプラットフォームにあるだけで、そもそもゲームじゃなくて良くねえ? ってなってしまう作品が今も昔もある。コントローラーを握らない時間のほうが長いとかとか。

しかし、本作はとにかく、プレイヤーが能動的な行動をすることにフォーカスを置いている。もちろん、ムービーはあるが、それも過不足無い容量に収まっている。少なくとも、長いムービーのあとに長いムービー、イベントをこなしたらイベント・・・・・・なんて展開はない。

歩き、触り、動かし、考える。アクションゲームだけの話じゃなく、インタラクティブな営みであるゲームとして最も大切な、双方向性が確かにある。It Takes Twoはゲームでしか成り立たない、そういう作りになっている。それは普段のプレイはもちろん、イベントもだ。

たとえば、最終盤におけるメイの歌。そこで抱き合うシーンのボタン操作は、映画では絶対にできない表現だ。そこでただ見るだけではなく、プレイヤーが介入することによって「ゲームである必要性」が生まれる。自分が参加する余剰があるのだ。

野郎2人でやってたのでやや困惑

QTEとは違う側面のイベント内操作

オセアーノンか?

ただ、この操作は一般的なQTEとは少し違うと思っている。確かに、QTEも没入感を高める作りになっているとは思うし、そもそもそれが目的のひとつではある。『ゴッド・オブ・ウォー』や『ファイナルファンタジーXVI』のそれは、間違いなくそういう意図がある演出だろう(FF16のは厳密にはQTEではないんだけど)。

しかし、それらは言うなれば「試練」としての側面が強い。要は、それ自体がひとつのアトラクション扱いになっているのだ。

一方、本作のは違う。「クリアや達成感に寄与しているわけではない」というところがミソだ。別にやったからと言ってダメージが入るわけでも、失敗してやり直しのゲームオーバーになるわけじゃない。

本作のイベント内操作は、ゲームに触れられる・・・・・・自分が、その作品に関われる舞台装置として組み込まれているのだ。なので、QTEと本質的な部分(ゲームへの没入感の増大)は同じであれ、目的は少し違う。眺めるだけではなく、プレイヤーたちが主人公として、作品に干渉できる手段としてこれがある。

普遍的なストーリー、展開

ここ賛否両論

本作のジャンルはアクションアドベンチャーだ。自分がその世界を探索し、物語を進めていくスタイルになっている。その場合、最も大切なのはやはりストーリー。ADVにおいてここが蔑ろになるというのは考えられない。もしそうなら、中身がスカスカということと同義だ。

さて、ではシナリオがどうだったかと言えば、語るに及ばず、言わずもがな、もちろんそりゃ当然のとても良いものだった。そして、その上でゲーム部分が素晴らしいのだからスゴい・・・・・・という話は後述するとしよう。

すれ違いから始まる離婚騒動、家族の分裂・・・・・・そこに降りかかる不思議な出来事。そして数々の試練を2人で乗り越えることで、彼らはお互いに「大切なもの」や「忘れていたこと」を思い出す。書いてしまえばありきたりだが、逆に「こういうのでいいんだよ」と落ち着く内容とも言える。

無理に奇をてらうわけでも、壮大な物語にするわけでもない。過不足無く、本筋を逸れず、誰にでも通用する普遍的な物語であるということを強く評価したい。ボリューム面も含め「こういうのでいいんだよ」という感想がピッタリな起承転結だった。

ゲームとしての手触りが抜群に良い

火を点けろ、向かってくる敵に

さて、ストーリーが良いということはともかく、しかしそれだけじゃ「神ゲー」には程遠い。ゲームなのだから、ゲーム部分が面白くないならそれは最初に言った「別にゲームである必要がないもの」になってしまう。ストーリーだけが良いRPGと同じだ。

だがそこはさすがGOTY大賞。そんじょそこらのゲームより圧倒的に、狂気的な作り込みが施されたプレイアブルシーンは、最初から最後まで(ここ超重要)面白い。とにかくバリエーションに富んだ、様々なゲーム体験をもたらしてくれる。

あるときはラチェクラにおけるガラメカのような火器で蹂躙したり、あるときはディアブロのような剣と魔法のファンタジーが展開され、あるいは時を止め、戻し、謎を解くこともあれば、レインボーロードを駆け巡ることもできる。これらが、すべて1つのゲーム内で体験できる。

スゴいのは、単に遊びの種類が豊富なだけじゃない。それら1つ1つが非常に丁寧に作られ、ゲームプレイの楽しさの最大値を常に更新し続けているということだ。中だるみが存在せず、最初から面白いのに、進むに連れてさらに楽しくなっていく・・・・・・そんなゲームがあるだろうか?

ディアブロチャプターで大盛り上がりする人たちの図

考えられたギミック、テンポ

「なるほどなあ」「なるほどねー」

私と友人がプレイしていて一番多く使った言葉、それは間違いなく「なるほど」だ。次点で「ナイス」かな。

本作はパズルを解きながらアクションしつつ先に進んでいく作りになっているのだが、このパズルやギミックの仕組みがとにかくよくできている。クリアした時に心から納得できる、その気持ちよさがスゴい。先に進めたとき、「よくできてるなあ」なんて関心が生まれるのは毎度のことだ。

パズルやギミックは、この「納得感」というのが非常に大切だ。要は、「想像」と「実践」に乖離がないということの証左でもある。いやこれできないのかよ、いやそんなことできんのかよ、これはちょっとなあ・・・・・・というギミックが本当に無い。ヤバない?

しっかり観察し、お互いに知恵を絞れば気持ちの良い解法が絶対に見つかる。達成感を得られる適切なレベルデザインと、そう簡単には解けない絶妙な難易度・・・・・・この奇跡的なラインがすべてのギミックに対応してるんだからスゴいとしか言えない。

「あー、なるほど」「なるほどね!」

美しいグラフィック、彩られた小人の世界

時計塔はギミックも景観も完璧

中身の話をしたのであれば外見の話もしない訳にはいかないだろう。これについてはスクショを参照してほしいが、こちらも素晴らしい。

物語は家の中の、さらに一部分だけで起こる。しかし、小人にとってはそれも広大な世界。鳩時計、スノードーム・・・・・・これらを彩るグラフィックは見とれてしまうほど鮮やかだ。まるでファンタジーワールドに飛び込んでしまったかのような高揚感が歩いてるだけで感じられる。家の中なんですけどね。

このグラフィックの良さが臨場感を生み出していることは言うまでもない。『トイ・ストーリー』よろしく、飛行機で庭を飛ぶシーンも、崩壊する氷の道をスケートで駆け巡るのも、細部まで作り込んであるからこそ楽しい。まあだいたいやってること『アンチャーテッド』だけど。

あと嬉しかったのは、虫のビジュアルがマイルドだったこと。これだけが怖かったが(小さくなる物語でのクソデカい虫はおなじみでしょ)、配慮されてるのかそんなキモくはなかった。超安堵。

スノードームはBGMも良い

誰しもがやる価値のあるゲーム

大団円の終わり方

人によって合う合わないはある。これは仕方のないことだし、やはり万人受けは難しい。しかし、それを踏まえてなお、私は本作を「誰しもがやる価値のあるゲーム」だと心から言いたい。とりあえずやってみろと、そう思う。

このゲームは、アクションが苦手、あるいはゲームそのものが苦手、という人でもクリアできる難易度になっている。そもそもゲーム全体が、制作者の「クリアさせたい!」という強い意思を感じる作りになっているのだ。それはリトライのしやすさもそうだし、ヒントの丁寧さや、様々なユーザビリティからも感じる。

そんな丁寧な作りのゲーム、やらいでか?

何度も言っている通り、そもそもゲーム体験として素晴らしいという部分もある。しかし、それ以上に私が本作を推したい理由は「ゲームを通じて人とつながる」ということのプリミティブな楽しみを改めて実感できたからに他ならない。ゲームを誰かと遊ぶと楽しい・・・・・・本作は、そんな当たり前のことを思い出させてくれるのだ。

2人協力プレイということの意味

笑いすぎて過呼吸になることも

このゲームは2人でやる以外に選択肢はない。昨今だとまず見ない、画面分割でやるゲームだ。オンラインなのに。だから、常にお互いの画面を見てプレイできる。このゲームのプレイ中は、自分だけの孤立した空間ではないのだ。

2人ならもっと楽しい、2人ならすぐに感想が共有できる、2人なら難しいギミックも解ける・・・・・・誰かとやることの楽しさが、本作に詰まっている。オフゲーばかりやっていた最近に、誰かと争うわけじゃないゴリゴリのコープゲーはスゴく刺さった。

ぜひにとも、夫婦や、恋人や、仲の良い友達とプレイして欲しい。最後までたどり着いたときには、きっと本作がただの面白いゲームじゃなく、それ以上の思い出として形になっているはずだ。

友人のチンパンプレイとか自分のポンコツプレイに笑おう。相棒の発想を称賛しよう。困難なギミックやわからないことがあったら相談しよう。2人なら最後までクリアできる。2人なら、なんでもできる。

さいごに

泥仕合

ここまでいろいろ書いてきたが、正直「面白いからやってくれ」以外の感想はない。

自分にとって神ゲーとは「他で代替できないもの」になる。なので、シンプルに良いゲームとかだとそういうカテゴライズはしない。だって「他でも良いから」。しかし本作はそうじゃない。故に神ゲーになる。神ゲーは黙ってやれ。

さて、「ゲームカタログから消えそうだからやりませんか?」という駆け足気味の誘いに、年末のクソ忙しい時にわざわざ時間を作って一緒にプレイしてくれた友人には感謝しか無い。本当に楽しかったです。ありがとうございました!!!

最高のゲームでした。満足!!!!!!!!!!

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