AV女優になった理由 アイリの場合 01退屈な日常

「ああ、指が痛いなあ」
そう小さくひとりごとを言ってアイリはスマートフォンを机の上に置いた。
アイリの職業はエステティシャン。
自分の指を酷使して、お客様の体を癒やす仕事だ。
アイリは笑顔でいることが苦にならない性格で、だれかを楽しませることが好きだ。
その性格が功を奏したのか、お客様からはたくさん指名をもらい、お給料も手取りで30万円程度を手にしている。

「私って勝ち組だよね」

アイリはそれを確認するかのように、スマートフォンに検索ワードを打ち込む。

【エステティシャン 指名 取れない】

そうすると、たくさんの「負け組エステティシャン」たちの嘆きを見ることができた。

『私は今年で三年目なのに、指名がとれなくて、手取り10万円しかもらえていません。こんなブラックな業界だと思いませんでした。どうしたらよいですか?』

世の中、ブラック、ブラックって、何を甘えた事を言っているんだろう?
働からざるもの食うべからず。パンがなければケーキを食べれば良いじゃない?

そう思いながら、アイリは実際にケーキを口に頬張った。

ケーキを食べながら、先程撮影したケーキの写真をインスタグラムにアップする。

``Happy time 幸せです``

さっそく、投稿に対して「いいね!」がいくつもつく。

私は幸せだ。勝ち組だ。私の人生はうまくいっている。アイリはそう確信した。

けれど、仕事をやめたいから結婚したい。そして、よき妻、よき母になりたい。
それはアイリの小さい頃からの夢であった。

「もしエリートの男と結婚できたら、私の指がこのように痛むこともなくなるよね。。。」

このとき、アイリはお客様の一人である「鈴木」という男の連絡を待っていた。

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