運動会
僕は田舎の小学校に通っていた。全校生徒は20名で、4年生のクラスは僕とたかしとゆうじの男3人である。たかしとゆうじはサッカーが得意で、僕は2人に比べると一回り体も小さかった。
運動会は地域をあげてのイベントだが、僕は大嫌いだった。なぜなら、かけっこはいつも3人で走る。小学1年生から僕はビリ街道まっしぐらだった。そして運動会の練習でも何度も何度も3人で走らされる。いつも1位はたかし、2位はゆうじ、3位が僕である。同じ動画を何度も見せられ続けていた。競馬なら鉄板のレースである。2人に追い付け、追い越そうなんて気持ちは僕には少しも湧かない。
運動会当日、4年生のかけっこが始まる。いつものように自分の役割を演じるためにスタートにつく。静まり返った中、ピストルがなる。たかしとゆうじが僕の前を走る。何度も見た2人の背中。コーナーに差し掛かったときにたかしの足が滑り、ゆうじの足に絡まり二人が転倒をした。「え!」その時、僕の前にはっきりとゴールまでの道が見えた。「勝てる?勝てる!勝てるぞ!」僕は歯を食いしばって走った。むちゃくちゃに腕を振り回し、生まれて初めての1着のゴールテープを切る………はずだった。必死な僕の横を駆け抜ける二人の姿がただ眩しかった。