マナミとナースの仕事②

アレから一ヶ月、ほぼ毎日の様に細かい失敗を見つけられてどやされている
まるで監視されてるみたいで気が休まらない…
ビクビクしながら仕事をしてるからかちょっとした失敗をしやすくなってきている…そこを師長に見つかりボロクソに言われるのだ
段々と気分が落ち込む事が多くなってくる…毎日の様に看護師に向いていないと連呼されればそうなるだろう…
昼休みに昼食が喉を通らず食欲もイマイチだったので外に出てタバコを吸っていた
『最近元気ないっすよ、大丈夫ですか?』
私より一年先に看護師になった男の子だ、年下やけどすごくしっかりしてるしナースとしても優秀やと思う
『師長がね…最近当たり強くて…さ』
『やたら突っかかってますよね〜あんなんキツいと思いますわ』
彼もタバコに火をつける
『前に師長の言うことに反論した事があってね、その時から当たり強いなとは思ってたけど』
『あーあの時っすか、言われてみたらそうっすよね』
『まあ今は我慢のしどきやと思うしもう一踏ん張りしてみるわ』

それから2週間もしないうちに私に異変が起き始める
いつも30分前には病棟に入っているのにある日気づくと時間ギリギリだったのだ
『いつも通りの電車に乗ったはずやのに…』
なんか電車降りたあと足取りが重いなとは思ってたけど
『新人のクセに遅刻寸前とか舐めてんの?』
よりにもよってこんな日に師長が出勤だ…
『ヤル気ないんやったら辞めてもええんやで』
簡単に辞めてたまるかといつもなら思うがそう思わずにただ落ち込んだ
次の日出勤する時異変に気付く、足が重い…動かない
ゆっくりとしか進めない…周りの人にどんどん抜かされていく
昨日遅れたのはコレが原因だ…意識しても体が動かない、どうしてしまったんだろう
案の定着いたのはギリギリ…師長が休みだったのは救いだ
けど明日は師長が出勤してくる…嫌だな…また何か言われるのかな…
そう思いながら仕事を終えて電車を待つ
特急通過のアナウンスが流れる、ここでふと思い付く
『ここで飛び降りたら明日から仕事へ行かなくていい』
この時はものすごく画期的な案に思えた
『電車が来るのに合わせて飛び降りるだけで明日から仕事から解放されるんだ』
そう思いながら一歩一歩進んでいく
そこでふと思い出した
『今日は肉じゃがにしようかな』
リュウジの肉じゃが食べたいな…そう思った瞬間目の前を電車が通り過ぎる
あと一歩でホームから落ちていた…
『私、何しようとしてたんだろ…』
自分の行為と思考が怖かった…死ぬことになんの疑問も抱かなかったのが何より怖かった
私…病んでるのかな…そう思い翌日には仕事を休み病院に行くことにした

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