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音の情景

音には情景があります。
いや、間違えました。
音楽家は音に情景を染み込ませています。

場所、風景、人物、自然、動物、不自然、不条理、怒り、悲しみ、喜び、、、

音楽家はこういった情景を演奏する時に音に染み込ませます。
しかし、染み込ませる情景の元となる情報が少ないといつも情景が同じになってしまいます。

私は小学生の頃に映画音楽にハマりました。
初めて買ったCDは「バックドラフト」です笑
映画音楽は情景に音楽が当てはめられています。なので、音楽を聴くだけでどんな場面の曲なのか、どんな感情をあらわしているのかすぐに理解できます。

その後50枚以上のCDをお年玉を貯めて買っていました。もちろん音楽だけでなく映画も好きで観ていました。今だと年齢制限で観られなかった作品もあることでしょう。

そしてサントラを聴きながらまるで映画を観ているような想像力が身についていきます。
これが私の音楽表現の原点です。

自分の感情や経験だけでは表現しきれない音楽ばかりなのがクラシック音楽です。
その時に想像する世界観がよりリアルにみえているとお客様へとその情景が伝わりやすくなります。
そこで必要になるのが想像の元となる情報。すなわち想像力の引き出しです。
この引き出しの数が多ければ多いほど細かな情景を伝える事が可能になります。

引き出しを増やす方法は…
楽しむことです。
色んな世界を楽しむ事がとても大切です。

よく言われるのは、美術館ですね。色んな作品の世界観から想像力を養います。
私は映画からその想像力を身につけていきました。

さて、絵画と映画は何が違うか。
それは動いているかどうかです。音楽は動き続けます。世界を色んな場面へと動かしていきます。なので絵画を観ただけでは足りずその絵画の前後の動きを想像する必要があります。
そこでヒントになるのが映画です。
どんな物語が絵画の中に広がっているのかを想像するのにとても良いヒントを与えてくれるはずです。

よく楽譜が読めません…という方がいますが、音楽は楽譜には書いていません。
本当の意味で音楽は皆さんの心の中にあるのです。
ついつい楽譜に忠実に音を並べてしまいますがそれは準備運動であり、本番はその先にある情景を作ることです。

クラシックコンサートに馴染みのない方は、難しい…という感想をお持ちですが、音楽の聴き方はこういう情景を自分の経験や感情と照らし合わせて聴いて頂ければ嬉しいです。
そうすると音の難しさなど関係なくなり、きっとコンサート最中に色んな事が頭に浮かんでくる事でしょう。
今度はそのお客様の頭の中に浮かんだものが音楽家にも伝わってくるのです。
こうして更にその空間の中に新たな物語が始まります。

これが生演奏にしかない醍醐味なのです。
コロナ禍で生演奏を聴く機会が減りました。こういう音の刺激というのはヘッドホンでは味わえないのです。
これから状況が変わりまたコンサートが多く開催されるようになったら是非、音の情景をご覧になって頂きたいと思います。


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