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惑星が好きなはなし

物心ついた時から宇宙が好きだった。小学生の初めの方に住んでいた家の近くにはプラネタリウムがあって、ほとんど毎日通っていた。小さい頃は宇宙に関わる仕事がしたかった。小3の頃に仲が良かった男の子が私に小惑星探査機の絵をかいてくれて、その子のことが好きになった。

宇宙はなぜあんなにも魅力的なんだろう。一番先に思いつくのはあの美しさである。宇宙は果てしなく広がり、果てしなく美しい。
特に好きな惑星は木星と土星だ。
木星はあのなんとも暖かそうな、木目調のふんわりとしたフォルムが、たまらない。木目調に見える表面は全てガス、水素とヘリウムでできているらしい。そんな巨大な(太陽系の中で一番大きい)風船のようなものが、暗い闇の中でふんわりと、静かに浮かんでいる様に、感動を覚える。
土星は何といってもあのシャープな輪である。黄土色の中に少し混じった深紫。美しく鋭く弧を描く輪。幼いころから私を魅了して離さない。まるで鋭くとがった刃のような、暗闇に光る黒猫の目のような、静かな美しさを持っている。

宇宙は静かで、美しい。
宇宙では空気がないから音が聞こえない。
私はよく想像する。宇宙服を着て船外に出る。目の前に広がるのは大きな大きな惑星。聞こえるのは自分の息遣いだけ。
なんて美しいのだろう。その空間で私と惑星との交信を邪魔するものは何もない。ただ自分が思うように、涙を流せばいいのだ。

宇宙の終わりはまだ誰も知らない。宇宙のにおいも、味も、感触も私はまだ知らない。
それは人間だってそう。
気になるあの子のにおいも、味も、感触も知らない。自分の終わりさえ分からない。
私は宇宙の終わりを知りたいとは思わない。世の中・宇宙の中には知らなくてもよいこともあるのだ。
私は自分の好きな人間とも、惑星と対峙するように静かに向き合いたいと思う。
その時はこの地球上でも、私の呼吸音しか聞こえないといいな。


あかいめだまのさそり
ひろげた鷲のつばさ
あをいめだまの小いぬ
ひかりのへびのとぐろ
オリオンは高くうたひ
つゆとしもとをおとす

アンドロメダのくもは
さかなのくちのかたち
大ぐまのあしをきたに
五つのばしたところ
小熊のひたいのうへは
そらのめぐりのめあて

星めぐりの歌/宮沢賢治


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