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全て物語の核心に関するネタバレを含みます。

最近視聴・再視聴等したものの感想、考察。SF、仮想世界、異世界などが多い。

血界戦線(2015)S1E5、アニメ史上稀に見る完璧な30分。ヘタレ主人公レオと原作にいないヒロインホワイトの恋愛模様。素直になれないレオが偏執王アリギュラに連れ去られ、「押して押して押しまくる」という豪快な恋愛を見せられて、救出されたのちホワイトを映画の野外上映に誘う。兄弟の不和を描いたクソ映画だったがホワイトは涙を流す。一見するといきなり泣き出すやばい女に見えるが、レオはホワイトが泣いた理由を察し、出来の良い妹を持っている自分の境遇を打ち明けて慰める。ここでホワイトが「あんたはいいやつよ」と言ってレオを抱き寄せるとED「シュガーソングとビターステップ」が流れ始める、というシーンは出色の出来。NY市街を暴走する超巨大トラックを止めるために、イケメン氷使いのスティーブが技を決めて白い息を吐き出すカットもいい。

ログ・ホライズン(2014)S2。MMORPG「エルダー・テイル」の異世界に飛ばされたゲーマーたちが世界の秘密に迫る。アキバの街に結成された転生者たちの互助組織である円卓会議は財政難に陥っていた。それを解決するため、モンスターに通貨を供給しているシステムの中核があると目されるダンジョンの最下層に潜入する。主人公のシロエは極秘裏に事を進めるために独立系武闘派ギルド「シルバーソード」を誘っていた。ボス3体同時レイドという不可能とも思える難関クエストを前にして、シルバーソードのギルメンたちの心が折れてしまう。ここでギルマスのウィリアムが演説する。口下手ながらも素直な言葉で、リアルに何もなくリアルの全てを捧げてきたゲーム廃人として、「神様にだって無駄だったなんて言わせない」「サーバーに記録された情報に何の意味があるかって?あるんだよ意味が、オレがあるんだって決めたんだ」とゲーマーとしての矜持を語り、「お前たちは友達だ」「オレらはクソゲーマーだ」と豪快に開き直る。それを聞いたギルメンは次々と再起する。この独白はリゼロレムの告白よりも長い。E10のほぼ全てを使うほど長いがログ・ホライズンで一番いいシーンであり、OPの歌詞にある「Database Database Just living in the Database」とも繋がっていて本質的 。S2はゲームシステムに経済の視点があるのもいい。作者が納税の方法を知らなかったのが一番の笑いどころだが。

マトリックス(2002)、同リローデッド(2004)視聴。3部作で完結していたが4作目が年末公開予定。ポリコレ用語だが「マジカルニグロ」と呼ばれる、鋭敏な感性を持ち示唆的な助言を与える黒人がモーフィアスとオラクルの二人も登場する。解説要員である彼らがミステリアスで意味深で哲学的なセリフを連発するのが世の陰謀論者をひきつけてやまない理由だと思う。『ニューロマンサー』のように一度見ただけでは理解できない深淵な世界観になっているのが現実とかけ離れたSFに必要なものな気がする。

Ghost in the shell(1995)イノセンス(2006)。攻殻機動隊シリーズのジャパニメーションの傑作。マトリックスにも絶大な影響を与えているのがよくわかる。英BBC制作の東京五輪2020PVは音楽の川井憲次が参加しているが全体的にイノセンスっぽい雰囲気になっている。長尺で出てくる検死官のヘビースモーカーのハラウェイも押井守のオバサン好きが現れているのを感じるが、「ぶらどらぶ」に比べるとだいぶ抑えられている。映画自体は同著の『イノセンス創作ノート 人形・建築・身体の旅+対談』を読まないと理解できない部分が多い。ゴーストダビング装置自体はSAC E7で扱ったネタ。ネットにアップロードされた素子と人形にダビングされていた少女にどのような違いがあるのかよくわからない。余談だがこの手の作品でハラウェイや赤木リツコやサイコパスの唐之杜分析官みたいな白衣でヘビースモーカーで明るい髪の年長の女性技官を登場させなければいけない決まりがあるのだろうか?

攻殻機動隊SAC(2002)視聴。全てが完成されている究極のアニメ。通称「笑い男事件」の話と、オムニバス形式の短編で構成されている。笑い男事件の終盤で、薬害事件の裏を暴いたせいで公安9課が解体されメンバー全員が海軍の特殊部隊「海坊主」に追われるパートがあるが、9課崩壊をドラマチックに演出させるために緻密さよりもアクション寄りだった。というのも課長は全員無事で逃げ延びる目算だったのが甘すぎるというのが主な理由。特殊部隊を何人も殺したのに9課が再編されているのも政治的な取引があったにせよ疑問符が残る。やはり短編のE2「暴走の証明」が至高だという結論に至った。タチコマ辺りのAIが自我を宿すような話とか、臓器を横流ししている医学生を素子が懲らしめる話とか、政治劇よりもSFらしい話の方がやっぱり面白い。

攻殻機動隊SAC_2045(2020)。SACの正統続編で監督も同じ。しかし過去作のようにサリンジャーや薬害、難民問題、独居老人など現実をベースにした作風ではなく、ポスト・シンギュラリティ、つまり人間を超えるAIが軍事的脅威となりつつある世界を描いている。アクションシーンはドローンを効果的に使ったり現実での軍事技術の進歩を反映して見応えがあるが、ストーリー的には未完であり、「ポスト・ヒューマン」についての何の解答も示されないまま終わっている。テーマもシーズンを通して「ポスト・ヒューマン」であり、それが深堀りされないまま終わったのは非常に残念。ポリスアクションではなくどちらかと言うと戦争屋になっているため、E1で素子が砂漠を爆走してるだけのチンピラをボコボコにして説教をするシーンは、犯罪者への戒めというより説教臭い何かだった。

Ghost in the shell(2018)スカヨハ版。ホワイトウォッシュの批判は免れない。荒巻はビートたけしで滑舌が悪すぎてもはや別キャラ。というか全員別キャラ。映像としてはブレードランナーそのもの。

AKIRA(1988)視聴。原作未読。若者同士の人間関係と暴走する異能がマッチしていていい。サイバーパンクの原型だが電脳世界は出てこない。ジャパニメーションの多くは異能をいかに表現するかに主眼があり、これは手法の違いだと思う。AKIRAは科学ベースの異能のうちでも、「サイキックベースの異能」であり、仮想世界とハッキングに置き換えた攻殻機動隊のような「ハッキングベースの異能」の方が洗練されているように感じる。ジュブナイルでサイバーパンクは「パンク」という反社会を帯びたものという性質上、主人公が金田たちのようにヤンキーか、ニンジャスレイヤー派生作品の『スズメバチの黄色』のようなヤクザの少年ものになるのが妥当な気がする。学生生活を送る少年が主人公になると雰囲気が崩れるのではと思っている。原作未読なのは、昔大学生協を通して書籍を買うと10%オフだったのを使おうとしてそのデカ本を取り寄せたことがあるが、取りに行かずにいたら結局返本になったことがあり、その間何度も電話がかかってきた申し訳なさを思い出すのであまり好きになれないため。隙あらば自分語り。

SSSS.DYNAZENON(2021)。グリッドマンの派生作品。前作で箱庭世界のメタフィクションエンドをやっているので全てが茶番になっているが、ゆるい部活のような雰囲気で内面を描写しつつ怪獣と戦ったりするので作風は確立されている。敵勢力「怪獣優生思想」の長身の恵体女性ムジナが好きだったが、ニート男とくっつくかと思いきや、いきなりキャラが変わり、ノリノリになって赤モヒカンと絡み始めて一緒に怪獣を操ったりして性格がブレているのが残念だった。前作に継続して構図に凝った背景カットを多用しており、アニメーターの好きなアニメという印象。

バック・アロウ(2021)。谷口悟朗監督、脚本は中島かずきのTVシリーズ。同脚本の「グレンラガン」「プロメア」は熱血系なんでもありバトルアニメだが、本作も「信念子」というメンタルパワーで戦うロボットアニメである。序盤のギャグっぽい勢いのある会話劇で引き込まれた。絶対に壊せない壁に囲まれた箱庭世界という興味をそそられる世界観で、メカは様々なフォルムをしていて面白い。Wikipedia記事が異様に充実している。レッカ国の文官シュウの部下であるレンが堅物で好きだったが、最序盤にシュウが裏切って以降、シュウに復讐するためにその親友である武官カイに鞍替えしたのが残念だった。第二の主人公であるシュウが世界の真理に近づくためとはいえ葛藤なく親友を欺いたり、人体実験に供せられていた美少年牧場の少年たちを面白がったりしていて、倫理観がなさすぎて好きになれなかった。サイコパスならサイコパスなりの美学があればよかった。第一の主人公であるバックアロウも信念がないというキャラ設定で、とりあえず戦って勝つの繰り返しだったので終始人形のようだった。終盤で敵に覚醒させられて自分を制御できず虐殺を行うのも良くなかった。実はこの世界はいくつもある世界のうちの一つで、ノアの方舟的な宇宙船に唯一残された赤ちゃんのために信念子を生み出すシステムの一部だったことが明かされる。管理者を打倒し、その赤ちゃんのために母星である地球を目指すところで物語は終わる。管理者はこのシステムと宇宙についてお前らには理解できないと言っていたが、直後にシュウが完全に理解して惑星間航行システムを作っていたのが印象的。

十三騎兵防衛圏(2019)Playstation4用ゲーム。重大なネタバレを含みます。タイムリープものだった→実は違う→並行世界ものだった→実は違う→実は人類の遺伝子と文化を保全するための仮想世界で、登場人物は最後の人類だったというオチ。しかも全てがテラフォーミングされた惑星に降り立ったポッドの中で起きていた。さらにそのポッドは宇宙に他にいくつもあった、というオチ。SF要素を全て詰め込んだ大作。仮想世界自体は何度もリセットと再起動を繰り返しており、その回ごとに人間関係や恋愛関係も入れ替わるため、全体で何が起きているかは全員のシナリオを読まないとわかってこない。「シュタインズ・ゲート」や「CROSS†CHANNEL」のようなノベルゲームの繰り返される物語とゲームシステムをリンクさせたものに分類される。世界の真実に迫る系の作品のオチは、ファンタジーなら最後に神と戦うし、SFならば仮想世界から抜け出すのが定番なのかもしれない。

レディ・プレイヤー1(2018)。スピルバーグ作品。仮想現実空間のゲームを題材としたアクションムービーで、モチーフやガジェットとしてスーパーマンやデロリアンなどのハリウッド有名作品からガンダムやメカゴジラ、三船敏郎などの日本作品までおびただしい数の有名作品のキャラクターやロボットが出てくる。前述のAKIRAの金田バイクもヒロインの駆るバイクとして重要アイテムとして登場する。ストーリーはゲーム内に隠された「イースターエッグ」を手にしたものは、今はなき製作者から5000万ドル相当の株式とゲームの運営権を譲渡されると発表されたため、多数のガンター(エッグハンター)が探し回っているというトレジャーハンターもの。ゲーム内の報酬が現実の生活を改善する価値あるものであるという点は前述のゲーム廃人的な価値観に立脚したログホラとは趣を異にしている。世界は格差社会のディストピアで、多額の借財を負わされた労働者がガンターとして強制労働させられていたりもする。仮想世界にアクセスする際にはOculusGoのようなヘッドマウントディスプレイを装着し、トレッドミルのようなベルトコンベア式の床の上でプレイする。圧力のかかるスーツによってゲーム内の感覚がフィードバックされる仕組みになっていて、これらは「ソードアート・オンライン」のような体への信号を完全に遮断するフルダイブ型とは全く異なり、実現可能な技術である。作中ではそれを生かした作劇になっており、現実世界の体が揺さぶられるとゲーム内の体も動くため、現実とゲーム内が交互に映し出される描写が多用される。そのためフルダイブ型ゲームの映像作品に比べてより皮膚感覚に近いものであるが、現実でジョイコンを振り回す滑稽さは少なからずある。テーマは現実とアバターの姿が違うというこの種のオンラインゲームネタとしては古典的なものもあるが、根底にあるのはゲーム愛が勝利を導くところだ。主人公はナードの貧しいゲーマーでスラムのような場所で暮らしているが、サブカル作品や古い映画やゲームに精通しており、製作者の意図を汲み取り「イースターエッグ」に近づいていく。対比されるのは金で全てを解決しようとする悪の企業の重役であり、ゲームや製作者のゲーム愛そのものには興味がないため暴力に訴える。展開は大味だが現実への回帰を訴えておりそれを納得させるストーリーになっている。

幼女戦記劇場版(2019)第一次大戦と第二次大戦の混ざった時代のドイツっぽい国に転生して魔法で無双する戦記物の劇場版。1期の続編で放送予定の2期の前提なので視聴。共産主義者を徹底的に馬鹿にして国家を斉唱しながら赤の広場やクレムリンっぽい建物を爆撃するシーンは非常に露悪的。明らかにスターリンやゴルバチョフを模したキャラクターが出てきており、ゴルバチョフに限ってはロリコンで幼女姿の主人公に執着する。

究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら(2021)。メインヒロインが下品なまでの巨乳なので視聴意欲が継続した。主人公が何度もボコボコにされたり、ヒロインたちにお漏らしを馬鹿にされたり四肢切断されそうになったり殺されそうになったりするのがいい。

ノーゲーム・ノーライフ(2014)。改めて視聴すると非常に出来が良いアニメ化だと思う。ヒロインが全員かわいい。テンポも良く、緩急もあって野心的な主人公の内面がよく表現されている。

ゴジラSP(2021)円城塔が脚本のゴジラ。ペダンティックなセリフ回しにイライラした。内容は理解できなかったが、人工知能のペロ2は出色の出来。

HELLOWORLD(2019)。核心のネタバレあります。SAOの伊藤監督の京都を舞台にしたオリジナルアニメ映画。実は主人公の住む世界は量子コンピューター上に構築された仮想世界。しかしながらマトリョーシカのような入れ子構造になっており、宇宙の中に宇宙があり、その中にも宇宙がある。そのため悲劇と思われていたキャラにも救いがあり、「この物語はラスト1秒でひっくり返る」というキャッチフレーズも間違いではなかった。

劇場版ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか-オリオンの矢-(2019)。ダンまち3期が鬱展開だったが、これもだいぶ鬱展開だった。ヒロインのアルテミスのデザインは素晴らしいの一言。だが登場時点で既に死んでいて、ベルの前に現れたのは幻覚的な何か。本体はサソリ型の巨大モンスターに取り込まれている。アルテミスファミリアのメンバーは全員死んでいる。それでいて主人公ベルと仲を深めていくから全体を通して悲劇だった。

閃光のハサウェイ(2021)。ガンダムの表現としてガンダムユニコーンを越えられたかというと微妙。暗いシーンが多いのはCGっぽさをわからなくするためだろう。MS戦闘中に澤野オサレBGMに音ハメしていたのがかっこよかった。以降のガンダムはミノフスキークラフトで浮遊するようになるだろうし、もっさりMS戦闘には戻れなくなるかもしれない。喩えるならばペーネーロペーはもうガンダムというよりアーマード・コアだ。地球に住む富裕層が使う高級感あふれる旅客機やホテルの描写は秀逸。コンテ段階でCGモデルを配置して美しい映像になっているようだ。所謂富野節と呼ばれる妙にハイコンテクスト会話は鳴りを潜めたが、逆シャア等の過去作を見ていないと何を言っているのかわからないだろう。

夏への扉(2021)。未見。日本での映画化。ハインラインの中でも本作が日本で人気があるのは翻訳の質が高いからであって、『宇宙の戦士』や『月は無慈悲な夜の女王』の方が評価は高い。青春映画風にプロモーションされているのもLiSAが主題歌なのもツッコミどころが多すぎる。


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