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支援者としての矜持の話

ビッグイシューにはホームレスへの支援者として恥ずかしくない振る舞いをしてほしい。

中学生の頃、帰り道友人と歩いていたら公園でホームレスの男性がガラの悪い若者に蹴たぐり回されているのを見た。
若者は何かを喚きながら蹴り続け、ホームレスの男性は座ったまま目を瞑り、それに耐えていた。
まだ陽は高く、それを通り過ぎざま目に留める者はいたが、止めに入る者はなかった。
110番を、と思った私だが、当時携帯電話を持っておらず、同行した友人に通報をお願いしたが「仕返しが怖いから通報したくない」と渋られたため、なんとか電話だけ貸してもらい、通報をした。声も体も震えていたように思う。

通報を終えてしばらくしてから、友人の携帯に警察から電話がかかってきたため、私が対応した。
該当の若者とホームレスはおらず、おそらく逃げてしまったであろうことを伝えられた後、電話口の警官から穏やかな声で「勇気をもって通報してくれてありがとう」といった旨の言葉をかけてもらったことを覚えている。

そこから数年後、ホームレスの方が販売するビッグイシューという雑誌が日本でも発売する、というニュースを見て、中学生の頃のことを思い出した。
ああしたひどい目に遭っている人が少しでも楽になるなら、という素朴な気持ちで販売していそうな場所を探し、創刊から何度かそこで購入していた。残念ながら内容はどういったものだったか覚えていないが、購入するという行為で、私は中学生の頃止めに入れなかった申し訳なさを解消していたのだとも思う。

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