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#ネタバレ TV「婚姻届に判を捺しただけですが」と「義母と娘のブルース」

ドラマの「偽装結婚」と「母への想い」
2024.1.2

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

(2021.9.11)

戸籍には長期間履歴が残ります。迷惑だという人もいらっしゃるかもしれませんが、証明のために履歴が必要な場合もあり、それが戸籍の使命でもあるのです。

ですから、戯れに届をしてはいけません。後々まで、孫子の時代まで、戯れる人間であることが残ってしまいます。

ましてや、不法就労に伴う偽装結婚等で、自分の戸籍を売るようなことは、自分の戸籍に(犯罪がらみの)赤の他人の外国人氏名が記載されるわけですから、とてもできないことです。

(2021.10.22)

@ TVドラマ「婚姻届に判を捺しただけですが」を観ています。主役の二人は好きな俳優さんですので、楽しめる作品です。

その上で申し上げるのですが、気になる点があります。このドラマは500万円というお金も絡む偽装結婚のお話のようで、「婚姻届に押印する」とか「戸籍を売る」といった言葉も出てきて、婚姻届まで役所に提出するようなのです(タイトル通り「…判を捺しただけですが」という落ちなら良いのですが)。

しかし、もし婚姻届を役所に出せば、刑法の「電磁的公正証書原本不実記録罪」にあたる恐れはないでしょうか。仮にそれに該当しなくとも、行政にとって最重要書類の一つである戸籍原本に嘘を記載されるとしたら、迷惑行為であることに変わりがありません。

多分、私などが心配する前に、プロの法律家のチェックを済ませているでしょうから、そのようなストーリー展開にはならないと思いますが、視聴者は一般論として「偽装結婚には懲役刑もありうる」ということを知っておく必要があると思いました。

追記

設定では共働きなので良いですが、(もし妻側が失業すれば)夫の控除対象配偶者となり、所得控除が受けられます。年金も本来なら妻は1号被保険者として掛け金を毎月支払う義務が生じますが、会社員の控除対象配偶者の場合は3号被保険者になり、支払わなくとも将来年金がもらえるのです。さらに、夫の会社で妻の扶養手当が出る場合があります。偽装結婚は、こちらにも問題が波及しそうです。

追記2

>婚姻届まで役所に提出するようなのです(タイトル通り「…判を捺しただけですが」という落ちなら良いのですが)。(本文より)

思い出しましたが、二人で役所に婚姻届を提出し、窓口担当が点検するシーンがありました。そして、あれは不自然なシーンだと思いました。

なぜなら添付書類がゼロだったからです。私の知識は最新ではありませんので改正されているかもしれませんが、婚姻届の添付書類には、本籍地への届出ではない場合には戸籍抄本が、婚姻にともなう住変がある場合には転居・転入届が必要になります。さらに住変・氏変にともない印鑑登録の新規登録も必要になるかもしれません。

( ちなみに、戸籍の届と、住所の届・印鑑登録の届は、それぞれに別の法律があり、届出可能地が違う場合がありますから、一度に同じ窓口では提出できない場合もあります。)

しかし、彼等は婚姻届一枚を提出しただけなのです。

しかも、窓口担当は「添付書類はありませんか?」とも聞かず、すぐに点検に入りました。不自然な光景です。

印鑑登録をせず、住所変更もすでに済んでおり、二人ともその役所管内が本籍地なら、添付書類ゼロもあり得るかもしれませんが、ドラマに相応しくないような大変レアなケースです。すると、やはり「添付書類が無かったので、役所で門前払いになったまま、婚姻届を出しそびれた」というお話になるのかもしれませんね。

追記3

ちなみに、婚姻届等が窓口に提出されると、窓口担当者は腕時計などを見て届出の時・分を上部に記載すると思います。これは、万一、不受理申出があった場合に、婚姻届等を受理するか否かの役所の判断材料の一つになるものです。TVドラマではそのシーンもありませんでした。

追記4

婚姻届の添付種類として戸籍抄本と書きました。以前は確かにその記憶ですが、現在は戸籍が電算化されたせいか、戸籍全部事項証明書1通(又は戸籍謄本)となったようです。

ちなみに抄本と謄本の違いは、抄本は一部の写しであり、謄本は全部の写しになります。以前は5人家族で太郎さん1人が婚姻する場合には、太郎さんの戸籍抄本だけが必要だったのです。その他4人は婚姻に関係ないため、謄本まで出すことは情報の漏洩だと判断されていました。

(2021.10.24)

@ 2021.10.22にTVドラマから偽装結婚についての話をしましたが、たとえば太郎さんの偽装結婚が発覚し婚姻無効となれば、太郎さんは婚姻前の戸籍に戻ると思います。

そして、離婚届を出したわけではないので戻る理由は離婚ではなく、婚姻無効と記されると思います。

すると、例えば妹の花子さんが正規の婚姻届をするために戸籍謄本とり、相手や相手の親族がそれを見れば、「太朗さんの婚姻無効って何?」となる可能性があるわけです。

婚姻無効がすべて偽装結婚ではありませんが、相手方にそれが偽装結婚によるものだと思われると、ならば花子さんの結婚は大丈夫か、花子は結婚詐欺ではないのか、詐欺でなくとも、そのような家族と親せきになって大丈夫か、みたいな話に発展しかねないと思います。

追記

花子さんが太郎さんの過去を隠したいと思った場合どうしたら良いのか。戸籍には分籍届というものがあり、一定の条件の元、親から独立して自分一人だけの戸籍を作ることができるのです。その戸籍なら結婚相手やその親族に花子さんの戸籍謄本を見せても、太郎さんのプライバシーは守られます。

しかし、分籍届を花子さん自身の過去を隠すために使うこともできるので(分籍後の戸籍には、過去の履歴が全部は乗らないため)、未婚の花子さんが分籍していると、「花子さんの過去に何かあるの?」などと、花子さんまで痛くもない腹を探られる心配もあります。

ですから、「田舎から東京に出てきたので、住所だけでなく、戸籍も分籍して東京に置きたい」などと思う人には、「軽々な事はやめたほうが…」とアドバイスしたくなります。


また、TVドラマ「義母と娘のブルース」にも「偽装結婚」という言葉が出て来たような記憶があります。物語の詳細は忘れてしまいましたが、再放送を録画しましたので、また、観られればと思います。

ちなみに、ヒロイン・岩木亜希子は、(ぽつりと吐露するシーンがありましたが)幼い頃に母を亡くしたか何かで、母の記憶が無いようです。だから彼女も、木枯し紋次郎と同じように、愛を知らない人であるのかもれませんね。その内面をデフォルメして表現したのが、無表情で男性的というか、一見ロボットのような人物像なのでしょう。

そんな亜希子は、宮本みゆきの義母となり、みゆきに気に入られるような義母になろと努力しますが、実は、本人は無自覚でしょうが、深層的には、みゆきの亡き母をモデルケースに、記憶がない自分の母のイメージを創造しようとしているように思いました。

ですから、この物語の深層は、岩木亜希子が自分の母を探し求める物語でもあったのかもしれませんね。

( 上記は2021.9.11以降のパレット記事から抜粋・加筆再掲したものです。一般論ですし、法律改正等もあるかもしれませんから、具体的な事例がありましたら担当する役所にご相談ください。 )



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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