夜行少女と呼ばれて

うちにいる二匹の姉妹猫。

姉(と夫が主張して「アーネ」と名付けて通称あーちゃん)の三毛猫が毎晩、毎朝すさまじく騒々しいので、わたしたち夫婦はすっかり寝不足でふらふらなのです……。

昨日も4時半に起きて、今朝も4時に起きた。

起き出すのがその時間だけど、その前の2時、3時にもたたき起こされていて、もう床から出ない限りは鳴き止まないので、根負けして布団から出るのが4時という訳なんです。

あーちゃんはわたしがリビングに出てくるまで寝室からぎゃんぎゃん鳴きながら誘導するように足元にまとまわついているもののの、その後は、「あんた誰?」「なに?」という顔で一瞥したあと、出窓のさんに座って、うっすらと夜が明けて白く浮かび上がってくる外を眺めている。

「いったい、なんの目的?」

最近、あーちゃんが鳴くたびに、わたしは思わず、そう聞いてしまう。

ほんまにいったいなにが目的なんや。

教えてくれたら、要求出してもろたら、それのもやないか!

誘拐犯とのやり取りみたいに、要求があるならただひたすらそれが知りたい。

「なんの目的ですか?」
「にゃー」

あーちゃんは律儀な猫というか、とんでもなくおしゃべりな猫なので、聞かれる前から「んにゃー、にゃ〜〜〜〜〜〜〜」と答えてくれる。
その叫び声に「だから、なんなんですか?目的はなによ!?」とついつい詰問口調で、声が大きくなってしまう。大人げないにもほどがある。

しかしながらあーちゃんは全く意に介せず、「いやっほう、盛り上がってきた〜」とばかりに、ますます挑発的にぎゃん鳴きが加熱するのである。

子育ての経験がないのであくまで想像だが、よく耳にする「夜鳴き」のことを思う。
赤ちゃんが泣くとこんなふうに困惑するのかな。
いや、人間だと、病気なのかとか、もっと心配な気持ちが強いかもしれない。

あーちゃんは特に病気っぽくもなく、むしろ元気すぎるだけだろう。
よく年老いた夫婦が「孫はかわいいけど、長時間付き合うのはしんどいのよね。ほどほどで帰ってもらいたい」などとこぼしているのを聞くがあるが、そっちの気持ちに近いように思う。

最近、あーちゃんのことが、夜になると特に目的なく渋谷のセンター街に集まってくる女子高生に見えている(ただのイメージです)。

ルーズソックスをはいて、眉を細く尖らせ、目の周りを念入りにメイクしたガングロギャルのような(いろんな時代のいろんな要素が入り混じっています)。

静かに机に向かって勉強するのが嫌いで、夜になると家を抜けだして、ストリートに出てきて集まって、誰かときゃっきゃとつるんで騒ぐのが楽しい。
そういうギャルに見えている。

あーちゃんは昼間はひたすら寝ている(猫なのでそういうもんなのだが)。
そうして決まって夜の10時頃になると、「あー」とか「うぃーす」とか言いながら、急にわたしに軽く絡んでくる。

そろそろ寝ようと浴室やら、台所を移動するわたしの進路を先回りして、路上に身体をほうりだし、くねくねと躍るように身体を弾かせて、つまり「わたしに構ってくれ」と主張するのは、夜の街の客引きのようでもある。

そうこうしているうちに11時頃になり、さて、寝室に、という気配のわたしを目にすると、挑発的に目をぎらぎらさせて、うぎゅぎゅぎゅ、などどうなり声をあげて、煽ってくる。

「え〜、これからが夜も本番でしょ〜。いぇーい。寝るとかつまんないこと言ってないで、遊ぼうよ〜。きゃっほ〜♪♪」

ネオンが煌めく夜というだけで、渋谷という解放区で(すべてイメージです)、「この一瞬がさいこー!」と盛り上がっている女子高生たちのように。

やっぱ若さなのかな。
ギャルのような衝動的な行動を見ていると、若さに圧倒されそうになる。

目的なんてないんだろうな。突き動かされるように、あーちゃんは夜を生きているのだろう。

ま、猫は夜行性やしね。

ああ、今日も寝不足で頭がぼんやりしていて、このようなどうでもいい話をだらだら書いてしまった。
仕事します。

あいつ……(ギャルあーちゃんのこと)。指導して、型にはめたい。全然手に負えそうにないけど。夜は寝てほしい。おばちゃんの願いはそれだけです。

[今日の予定]作品を読む(そろそろおひとり戻せそうな)。書き下ろしの続き(そろそろ仕上げかな)。合間にジム。

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