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韻を踏んでみよう

1はじめに

あじさいアチアチParty Night

こんにちは。青柳ういろーです。
今回は私の趣味の一つである「押韻」、すなわち韻を踏む行為について詳しくお話させて頂きます。私の個人的な見解を多分に含んだ内容となっているので、話半分に読んで頂ければと思います。

2 「韻を踏む」とは?

@E_M_O_N_G_Aさんより頂いたイラスト


韻を踏むってそもそもどういうこっちゃ?
という方も沢山いらっしゃると思いますので、まずは「韻」の定義について見てみましょう。

詩や文章で、同一または類似の音を、特定の場所に繰り返して用いること。「韻律/押韻・脚韻・頭韻・和韻」

(weblio国語辞典 デジタル大辞林より)


これだけ見ても分かりづらいと思うので、皆さんにも馴染みの深いであろう楽曲を例に出してみます。

いつもどおり通り独り
こんな日々もはや懲り懲り
もうどこにも行けやしないのに
夢見ておやすみ
いつでも僕らはこんな風に
ぼんくらな夜に飽き飽き
また踊り踊り出す明日に
出会うためにさよなら

米津玄師「LOSER」

太線になってる部分で韻が踏まれています。
具体的には…

①「オイ」または「オオイ」の音
どおり 通り 独り 懲り どこに 踊り

②「オアウイ」の音
おやすみ こんな風に

③「オウアア」の音
僕らは ボンクラな

④「アイアイ」の音
飽き飽き 明日に

また、1小節目から7小節目にかけて「イ」の脚韻(のちに解説します)が継続しています。何気ない歌い出しですが、これでもかと言わんばかりに韻が歌詞に散りばめられている事が分かりますね。明らかに意図して韻が踏まれています。

「曲で韻踏むのってラッパーだけでしょ?」

という印象をお持ちだった方もいらっしゃるかもしれないですが、実際のところはそうではありません。世に出回っている音楽の多くは、「LOSER」のように曲のどこかしらで韻が踏まれています。韻は曲の聞き心地を良くするとともに、小節の末尾を引き締める役割を果たしているのです。

3 韻の基本的なカテゴリ

ティラノサウルス 地下の産物

先程の辞書の定義や曲の解説でも少し出てきましたが、韻にも種類がございます。私の知っている範囲で大まかに分類すると、以下の5つが挙げられます。

  1. 頭韻(とういん)

  2. 脚韻(きゃくいん)

  3. 完踏み

  4. 子音踏み

  5. 語感踏み

一つ一つ順番に解説していきます。

① 頭韻
冒頭部が同じ母音で構成された単語で韻を踏む事。
(ex. トランスフォーム トラボルタ)

②脚韻
末部が同じ母音で構成された単語で韻を踏む事。頭韻の対、と覚えて頂いても大丈夫ですが、一文字だけでも韻として分かりやすいのが大きな違いかなと思います。韻をガッツリ踏まない楽曲でも、小節末尾の母音を揃えて脚韻は踏む、というタイプは結構多いです。
(ex. マグニチュード アディチュード)

③完踏み
母音が一致した単語で韻を踏む事。
(ex. オタクの悪ノリ モラル終わる時)

④子音踏み
母音だけでなく子音もキッチリ合わせる、要は同音異義語で韻を踏む事。めっちゃ難しい。
(ex. 二十日以降 初邂逅)

⑤語感踏み
①②の頭韻と脚韻を揃え、「全体の母音は一致していないものの、やや濁った発音で口に出すと韻として成立する」韻を踏む事。一番難しい。日本語におけるこの踏み方はラッパーの「韻マン」が創始者とされています。(間違っていたらごめんなさい…)一応具体例を載せておきますが、文字起こししても伝わらないと思うので、こちらの動画を見て下さい。

(ex.早めのパブロン ジャネットジャクソン)


語感踏みはかなり極端な例ですが、「発音を寄せる事で韻を明瞭にする」というテクニックは、意外と頻繁に用いられています。たとえば①の引用元である楽曲「トラボルタカスタム」の該当部分では、頭韻の「オ」と脚韻の「イ」を誇張して発音する事で、韻として成立させる、という事を行っています。

ら遊び トランスフォーム済み
トラボルタもビック

4 第六の韻「なんちゃって完踏み」

永見の「スチールウール」の発音は必見


画像の人物はM-1グランプリ2022のファイナリスト、「カベポスター」です。ここまで見てきた方はいきなりどうした?という感じかもしれないですが、しばしお付き合い下さい。今回の話に関係するのは、彼らが披露したネタ「大声大会」です。大まかな内容としては

声量で勝敗をつける競技に参加したものの、大人の参加者が「ウ」「ン」で終わる単語ばかりを叫び、小学生が勝利してしまう

というものになっています。ここで注目すべきなのは、ネタの核である「『ウ』『ン』の音は発声の際に口がすぼむため、強く発音されない」という点です。この要素が、韻を踏む上では大事になってきます。押韻においてこれを言い換えると、「ウ」と「ン」の音は目立たないため、無理して揃えなくても韻として成立しやすい、という事です。

本記事ではそれら、即ちウとンの音を誤魔化した韻を第六のカテゴリ「なんちゃって完踏み」(私が勝手に考えたネーミングです)と分類させて頂きたいと思います。実際のところ、楽曲やMCバトルで出てくる長い韻の多くはこの「なんちゃって完踏み」です。具体例を見てみましょう。

カップル料金 完封勝利

2語の発音を分析すると

カップル料金は 「アウウウ/イオウイン」
完封勝利は   「アンウウ/イオウイ」

で構成されています。
(※本記事では「ン」は特別な子音「撥音」としてカテゴライズされます)

「ン」の有無などで完踏みとは言えない2語ですが、発音してみるとあたかも完踏みしているかのように聞こえます。このカラクリを言語化してみると

①料金の「ン」が尻すぼみになっているので、発音が認識されない
②完封の「ン」がカップルの「ウ」と同じ場所に配置されている

という感じになりますね。
「ウ」と「ン」の音の関係はちょうど、原料の異なる鍵のようなものです。両者は材質(母音の構成)こそ違えど形状(単語全体としての音の強弱)が一致しているため、同じ鍵穴にはめる(韻を踏む)事が出来、「なんちゃって完踏み」が成立しているのです。
他にもいくつか「なんちゃって完踏み」に当てはまる例を用意したので、試しに声に出して読んでみてください。

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いかがでしたか?
今回の記事を通して、皆様が韻を踏む事に興味を持って頂ければ著者冥利に尽きます。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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