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怠惰への道はタイパに舗装されている - 今日も釣れねえンだわ

 今回の記事は釣行についてではなく、ちょっと思ったことについて書いていきたいとおもう。
 きっかけはXのフォロワーの安田氏の書いたこのブログの記事である。


 このブログを読んで「そういえば最近、ブログを書いてねンだわ」と思った。魚釣りは結構行っているのだが、釣行のたびにブログを書くのが億劫になってきて放置気味になってしまった。
 なぜかというと、やはりブログのような長い文章を書くのは大仕事で、それなりの時間を費やしてしまう。
 記事をひとつ書くために、場合によっては8時間くらい使ってしまったりして、どうにもタイムパフォーマンス(タイパ)が良くない。
 まあ、釣行に関する記事はそこまでの時間はかけていないのだが、それでも「今日はおっきい魚が釣れました!」くらいの内容であればXにポストするだけで充分に目的は達成されるし、なにしろ俺もしがないサラリーマンで、老後の不安を抱えながら子供も養っている身だし、周りに遅れを取らぬよう仕事に追われながら、空き時間を縫うようにして趣味に興じている立場であるからして、あまり多くの時間をブログ投稿などに砕くことができないのである。

 そういうわけだから、ブログなどを書いているうちに「あれ?俺こんなことに時間使ってて大丈夫なんだっけ?」という気持ちが湧いてきて、「やっぱやめとこう、自分の主張など手軽にXにでも投稿して、明日に備えてもう寝よう」となり、手軽さに逃避してしまうのである。それに、ブログのような辺鄙な惑星に魚拓を飾るより、Xのほうがよほど閲覧者も多いというのもある。

 これは何もブログに限ったことではなく、ゲームだって長々とできたものではない。factorioなどやり始めるとものすごい勢いで時間を消耗してしまうのでおいそれと手を出さないようにしている。そして気づけば大量の時間をXに割いている。

 しかし、本当にそれで良いのだろうか? 手軽だからといって、足元に同じような小さな砂山をいくつも作って何になろうか?
 子供の頃の「今日は砂場でめちゃくちゃでかい砂山作ったるでぇ!」という野心はどこに消えたのだろうか?

 大仕事になったとしても、それなりの時間をかけることでしか積み上げられないことがあるのは間違いない。
 一方で、タイパはそれと真逆の考えである。タイパはあくまで目的に対して、時間対効果を最大にする考え方であって、ひとつのことに長い時間をかけることを嫌う。
 砂山をひとつ作るにしても、砂山が高くなっていくにつれ、1センチ高くするために必要となる砂の量もどんどん増えていく。

 しかし、タイパで動く人間にギザのピラミッドが作れただろうか?
 タイパを優先する人間が「よし、20年かけてピラミッド作るか」とはならんやろ。

 ピラミッドなんてまだマシな方である。サグラダファミリアなんて、着工してから100年以上経っているし、パナマ運河は約400年かけて作られている。日本を例にあげても、徳川の治水事業は何十年もかけて実施されたそうだが、それが今の関東を作っているわけである。
 人類の歴史に残る大事業の多くはタイムパフォーマンスを度外視した、ある種の情熱や野望によって成し遂げられている。

 手軽さに堕落したとき、数は増えたとしても人の事業もまた小さなものになってしまう。時間がないからと早々に匙を投げてより手軽なものに消費されていったなら、後に一体何が自分に残るだろうか。

 何かを残したいならタイパなど気にせず、物事に打ち込むことも時には必要なのだ。それを俺は完全に忘れてタイパにかこつけて、自分の趣味ですら怠惰に溺れていたのである。

 とどのつまり、Xなんかで消耗するな。オッサン(俺)よ、大志を抱け。というわけである。

 と、ここまで吹き上がったのはいいが、やっぱり仕事だったり意志の弱さだったりが、目の前に立ちはだかる。
 いくら好きなものがあっても、それにかけられる時間は限られるし、俺のような凡愚には才能の限界がある。どれだけ時間をかけてみたって、せいぜい砂場でちょっと大きな山を作るくらいのことしかできないかもしれない。

 しかし、砂場で築いた高い山はいずれ崩れて平坦になっていくとしても、2,3日は砂山の跡は残ったりする。砂場で作ったものなんて少し目を離せば秒で壊されしまうが、大きな砂山は踏みしだかれても、その痕跡は数日残ったりするのだ。
 小学生の頃、俺は自分の大事業の遺構がまだ消えていないことを見て、ほくそ笑んだものである。
 それくらいで満足かもしれない。少なくとも140文字のポストに消耗し切るよりはいいと思う。

 この記事も、普段よりちょっと高い砂山になればいいなと思ったりする。

(なんでここまでXを例にあげて目の敵にしているのかについては、また別のタイミングでまとめようかなと思う)

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