【カード勝手に解説シリーズ】0愚者フール~可能性の若者~
タロットカードにおいて、大アルカナのゼロ番に配置されるカード。「愚者」や「フール」と呼ばれる、大アルカナのカードで、タロットカードを購入し初めてお目見えする時、カード作成者の拘りがなければほぼほぼ一番最初に対面します。
背景が黄色で、イケメンの若者が楽しそうにふらふらと崖を歩いている、印象がめちゃくちゃ残るカードです。後ろにはわんちゃんもいて、なんだか危ないけれど、楽しそう…いや、なんか阿呆そうな感じがしますね。
同じルーツで遊戯用に発展していったタロットカードの親戚、トランプカードに例えると、愚者はジョーカーの立ち位置となります。トランプにおいてのジョーカーはゲームの種類によって柔軟にその力の形を変えて、どのカードにも取って変えられない唯一無二の威力を発揮します。
大富豪(地域では大貧民)だと最強のカードとして君臨できるし、ジョーカーが加わったポーカーのルールでは、足りないカードの代わりとして化けて見せ、役を完成させることだって可能にします。
ババ抜きでは、最後にジョーカーを引くとゲームオーバーになるなど、そのゲームを終わらせる力だって持ち合わせているのです。
なんて恐ろしいヤツなのでしょう。
そんなジョーカーと同じ立ち位置とされている大アルカナ0番「愚者」
なぜこんなにも強大な力をもったカードが「愚者」すなわち「バカ・愚か者」と呼ばれるのか。
改めて「愚者」のカードの絵柄を見ると、黄色の背景、太陽をさんさんと浴び、空を見上げて明るい顔をしている若者が目に入ります。若者の手には花があり、小さな鞄を棒に吊るして肩に乗せています。
若者の足元は崖であり、彼が歩いている荒地と背景の雪山がこの先の道は険しいことを表現しています。若者は朗らかな顔をし天を見上げているせいか、足元の崖に気が付かないまま歩んでしまっています。
空を見上げて足元の崖に気が付かないこの様が、愚者と呼ばれる所以なのかもしれません。
確かに、こんな間近に危険が差し迫っているというのに、何わろとんねん、ってツッコミたくなるような。
いや、そこ危険やん!前見て!みたいな。
しかし、タロットカードにおける「愚者」は、もちろん、そのような意味で使いません。
大アルカナ0番「愚者」
このカードがスプレッド上に出たなら、その相談者には無限の可能性があり、何かが始まる予感や、若者のような「自由」さをテーマにして読み解きます。時には、変わった人…と捉えることもあります。
この若者は無限の可能性を持つ旅人であり、これから世界を自分の足で歩き、苦難に挑戦し、乗り越え、糧にして、長い時間をかけ、やがて全てを超越した次の「世界」の概念となります。
非凡であるが、今はまだ無知な神様のたまごだと私は読み解いています。このようなカードを象徴に持つような方は、その隠しきれない才能からか個性が強く、物事を多方面から吸収し、それを独特な感性でアウトプットするような、自分の世界を持つ、そんな天才肌な方が多い気がします。
周りから、変人と呼ばれる天才たちです。
タロットカードは時の流れを重視します。現在・未来・過去、時は時計と同じで右回りに刻みます。「愚者」のカードは私たちから見て左を向いており、時の流れの法則ですとそのまま歩んでしまえば過去へと逆らってしまいます。
(まぁ、そのまま崖下へドボンなだけが気がしますけど、それは置いといて)
私たちは当たり前のように、過去には戻れません。それを前提に「愚者」の前後のカードを並べると、面白いことが起きるのです。
「愚者」が歩いている方向、そちらは過去であり、タロットカードには輪廻転生の概念があることから「愚者」の過去は、タロット占いにおける最強の吉札の女、大アルカナⅩⅩⅠ「世界」になります。
逆に、「愚者」が向いている反対の方向には、人間界に創造をもたらしたコミュニケーションの鬼である大アルカナⅠ「魔術師」がいます。
そう、この若者の前世は「世界」であり、完成された「世界」より全てをリセットして自分が何者かを知るために「世界」に降り立った旅人で、これから愛や希望や喜び、辛苦や怒りや快楽などを得る旅に出る代償に今までの何もかもを投げ打って無になった「愚か者」なのです。
当然、過去には戻れません。この「愚者」も私たちと同様、未来へと歩みます。未来…絵の向かって右側には崖から戻る道とわんちゃんがいます。そう、この若者は心配せずともちゃんと気付くんです。
崖やん、と。
自分の足元がこんなことになっているなんて、と怖かったのでしょうね。「愚者」は未来、この先何をするかと言うと、知識をつけるのです。未来には「魔術師」になっているという、努力の男です。
崖だったことに気が付かなかった無知、わんちゃんが後ろで吠えて知らせていてくれていたのに関わらず、自分の未だ見ぬ未来を思い描いて、進むべき道を見失っていたことを悔み、全知全能の知識を蓄える旅に出ます。
自分が世界そのものだった過去の実績を消し、未来の可能性を信じ、そのためには何が必用なのか知識を蓄えようと今を考えしっかり生きる旅人こそが「愚者」なのです。
「愚者」の正位置では主に自由・天才・未経験のことなどを意味し、逆位置だと無知・無計画さ・浅はかなどを主に読み取ります。
絵柄を見て「愚者」の顔が表に向いている方向は左…先ほどのお話と統合させるとその先には過去の「世界」があり、その世界から転生してきたことを示唆する意味が正位置の読み方として、逆位置となると「愚者」が向いていない方向、即ち右側の未来には「魔術師」が待っているわけで、何故知識を蓄えようとしたのかは自分の無知さを悔いたからであるという意味で読み取れます。
結果的にその無知さは未来の「魔術師」へと導かれるわけですね。
学ぶことや経験することで若者は一歩ずつ一歩ずつ世界を作り上げていくのです。
正位置ではポジティブに、逆位置ではネガティブにその意味を捉えるというのがタロットカードの簡単な読み取り方のひとつでもあるのですが、そう一筋縄ではいかないのも、タロットカードの醍醐味なのでしょう。
「愚者」のカードはタロットカードの長い旅が始まる起点であり、私たちの世界を光あふれるものに築き上げていく第一歩を踏み出すために今をしっかり生きている旅人で、その姿はまるで私たち人間の生き様のお手本のような…「誰だって最初はバカ(愚者)だけれど、自分の無限の可能性と叡智に気付くことができたのなら、愚者でも世界になれる」と若者がしっかり背中を後押ししてくれるような、勇気と可能性が溢れてくるカードなのです。
ちなみに私は、この「愚者」のカードを一枚、お守りとして鞄に忍ばせたりしております。
もう若者という年齢は過ぎたのだけれど、いつでも今が若くて、いつでも挑戦することを躊躇わないよう、忘れないようにと、願いを込めながら。
自分占いであまり出てきたことはないんですけれどね…。
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