私じゃない私

黒いセーラー服着てた私
ミニスカート履いてた私
処女の私
全部私なのに 私はもう私になれない

私の中の命に気がついたら
気づく前の私はもういなくなった

ハイヒールを片付けて
お酒をやめて
髪を切った

私は別の私になった

もう君がいない私はいない
この幸せを知らない私はいない

私の体が私の意思と関係なく揺れる
右へ、左へ、凸。
膨らむ腹
膨らむ手足
まるで水風船になったみたいだ
水はゆらゆら、ポコポコ
その存在感を日々増して
私を私じゃなくしてく
それを受け入れる私の体
私の体は君の入れ物
ご飯も 玉ねぎも 鶏肉も アイスクリームも
私のものではなく君のもの

腹の裂け目から見える君の羽
私の体はもういらないと
背を向け飛び立つ君の体

いいの その背に乗りたいとは思わない
その白い羽が赤に青に緑に染まり
あの遠い山を越えたその向こうまで
羽ばたけ 走れ 私の腹を蹴る足で

羽がもげるその日まで

私の羽は何色だろう
自分の背中を見るには首がもげそう
処女だった私の羽は抜け落ちた
私は別の私になった
また一枚 新しい羽が生える
君が与えてくれた羽
母になった私の羽
君が飛ぶ空と別の空
遠く高く羽ばたけば
私が私を待っている
新しい私が羽を広げる

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