半年で追いついたオタクによる鬼滅のネタバレ
ごきげんよう。青の半纏です。
最初に、もはや言わなくてもわかると思いますがネタバレします。
最終話までします。なぜか。
僕が話したいからです!!!!
なんで売れたか、みたいな話よりもなんでこんなに面白いんだろというのを言語化します。これはボクの脳トレです。なので最終話まで読んでる、ネタバレを食らっても折れないアイアンハートの持ち主が読んでると想定します。
実はすでに僕が言いたいことの一部を他の人が言ってます。
アッチャン、カッコイー、デン!
さて最初から人のふんどしを借りるみたいでイヤなんですが、いま言っとかないと後からパクリと思われるのもイヤです。
ともかく、鬼滅は基本的に
・既存マンガのいいとこどり
(どこまで意図したかはともかく、ジョジョ、BLEACH、進撃の巨人など既存の売れてる漫画のエッセンスが入っている)
・老若男女に受ける構造
(家族愛や戦うヒロインの要素、刀など少年に受ける要素、死生観)
が根本的にあると思っています。
これはYou Tubeの解説と一緒です。先に言われてしまいました。
ていうか、言語化されなくてもみんななんとなくレベルでも感じてただろうと思う。
基本的には鬼滅の刃は「喪失と、そこから回復を目指す物語」だと思っています。
鬼にされた禰豆子を兄である炭治郎が人間に戻そうとする物語です。
後に産屋敷一族にとってもその構造を持った物語であると分かります。
なんならラスボスである鬼舞辻無惨でさえもそうなのです。
マンガでいえば古くは「どろろ」なんかが該当すると思います。
わりと昔からある作品の構造です。
でも上記の要素でここまで面白くなるんけ……って考えたときにふと脳みそがチリチリしました。
「でも人気漫画にある共通点を見つけた」「刀」
……バクマン。
バクマン〜〜〜〜〜!!!!!
過去にジャンプで連載されていた漫画家を目指す少年、サイコーとシュージンの物語である「バクマン」
そのなかのシュージンのセリフです。
すみません。ここからはバクマンのネタバレもあります。
ふとそのとき一気にズルズルと記憶が引っ張り出されました。
バクマンのなかでは売れるマンガの条件、みたいなものを議論している場面が多数登場します。
キャラクターのシルエットは一見して分かるもの、刀を持たせるなどです。
そのなかでもコミックス10巻。残り3回の連載会議にライバルである新妻エイジが執筆している「CROW」「+NATURAL」と競りあえる作品を提出できなければジャンプでの契約をやめると啖呵をきったエピソードがあります。
そしてそのとき足りない要素として出てきた「シリアスな笑い」
本人はむちゃくちゃ真剣やっているのに周りから見ると不思議と笑える。
ドッキリなんかが典型だよねと作品の中でも話題になります。
これが鬼滅にはあります。
それは竈門炭治郎自身がまずそうです。1話の雪を落下するシーンのセリフ回しを始め、シリアスシーンに突如挿入された言葉の言い回しによる笑いや手鬼の「年号が変わっている!!」とセリフなどが当たります。
シリアスな笑いはドッキリ的なものだけではなく、炭治郎が散り際の鬼に優しく振る舞った場面などで起きます。ドラマとそこに起きるカタルシス(浄化)によっても起きます。緊張と緩和というやつです。
トータルするとシリアスに留まらず、interesting(興味深い)な笑いが随所にあり、それが独特のテンポ感を生んでいます。
そしてそんな天然な一面を重視しながらも実は炭治郎は戦闘において「徹底的に思考するタイプの主人公」なんです。
そもそも鬼滅の刃の作中で炭治郎が圧倒的な力で敵を倒すシーンはほぼありません。ワンピースでルフィがギア2で敵を倒したときや仙人モードでペインを圧倒したNARUTOのような爽快な戦闘シーンはほぼないんです。
炭治郎が対峙したお堂の鬼、手鬼や沼の鬼、朱紗丸と矢琶羽、響凱、下弦の伍とその家族、下弦の壱、上弦の陸、上弦の肆、上弦の参、そして鬼舞辻無惨とことごとくが劣勢からのスタートです。
強者としての戦いではなく、常に力が足りず、考えた末にヒノカミ神楽や透き通る世界へのヒントを掴むわけです。
この漫画の凄いところは炭治郎自身に特別な由来の力はあるものの、少年漫画にありがちな急速なパワーインフレが起きないのです。一番パワーアップに寄与した痣でさえ、戦闘の決定打にはなりません。(無一郎vs上弦の伍のシーンくらいですね、圧倒的だったのは)
これは「鬼舞辻無惨を戦闘シーン無しで2巻に登場させた効果」もあります。鬼舞辻は鬼の王様なので少なくとも新たに設定を付け足さない限りは「常に最強の鬼」です。
そして配下に十二鬼月がいる。そこのパワーバランスの見せ方で鬼殺隊メンバーを劣勢に追いやり、「上弦の陸でこれとか無惨どうなるん!?」という見せ方ができたところです。
読者の想像力のなかで勝手にインフレはしますし、結果として開示したその力はさらに圧倒的でした。なにせ弱っているはずの状態でさえ柱の半数に他の隊士加えたメンツを同時に蹴散らす力の持ち主なので。
ですがそこにも「老化を促す薬」など「相手がありえなく強いなら弱くしましょう」というアンサーもファンタジーながらに地に足がついている。ファンタジーとリアリティを同居させようという吾峠先生の思想が強く現れています。
特に漫画を見慣れている人へ「ご都合主義のありがちな作品だよね」と思わせないようにする工夫があったと思います。(みんながそう思ったかは別の議論です)
これは週刊連載にありがちなテコ入れもなく、設定がブレなかったのも大きいと思います。
2巻の時点で既に無惨と縁壱との関係性が明示されているところから見るに縁壱>無惨>上弦の鬼>柱>下弦の鬼>一般の鬼殺隊士と鬼という一連のパワーバランスを最初から設計して、それを変えなかったところです。
そしてこの最終話に至るまでのおおよその物語のガイドラインは序盤の時点で決定されてないと、このラストに至れないのではないかと思います。予想でしかありませんが。
各世代の読者に共感しうるポイントを作りつつシンプルな話の構造、パワーバランスの基本固定、独特な笑いの生み出し方など最初から面白さのポイントがブレなかったのが素晴らしいなと思います。
バクマンを読んでからこの漫画を読むと「バクマンを教科書にして書いたんではないか」と思われるくらい練り込まれているんですよね。ジャンプの作品ですし、世代的に読んでいそうではありますが。
個人的には最終話の感じは好きです。基本が救われない物語ではあるものの、人の想いは不滅であること、転生というかたちで報われたことは熱心な読者に対しての救いになったと思います。
さらっと一コマで青い彼岸花の真実も回収してきてさすがだなと思いました。
そら鬼には見つけらんないよって気持ちになります。
吾峠先生が今後どうされるのか分からないですが、今回の作品を読む限り、サイクルヒットを打てるタイプのマンガ家さんなのではと期待は高まるばかりです。
とりあえず、鬼滅早く全部アニメ化して!!!
おしまい。
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