秕とシイナ

ごきげんよう。青の半纏です。

秕。難しい漢字、というか読みが分からなくないですか?
粃とも書いたりするそうですが、読みは「シイナ」。

中身がない皮ばかりの果実を意味する言葉です。

先ほど仕入れた実感を伴わない空虚な豆知識を知った風な語り口で話すボクがまさに粃もかくやという感じはあるのですが、話の本題はそこじゃなくて。

夏川椎菜さんのファーストアルバム、ログライン。

最初の印象はアルバムの曲順で一番目にパレイドが置かれていたこと。この曲自体は3rdシングルの表題曲。そしてボクがむちゃくちゃ好きな曲です。

パレイドについては基本的には歌詞に共感をしています。
音が良ければ歌詞はどちらでもよかろうと思っていた自分も大きな進歩を得たなと思わなくもありません。

それについて掘り下げてもいいんですが、ここでは蛇足なので止めておきます。

そして購入の決め手になった曲はM2「ステテクレバー」。
先ほど書いた「音が良ければ歌詞はどちらでもよかろう」なゴーストが囁いてくる、いや喧伝してくる感覚を覚える疾走感にあふれたナンバー。

そしてよくよく聴くと歌詞もムチャクチャいい。

歌詞が昨今のソーシャルネットワーク事情に対する風刺を帯びているのです。別のプロの方の添削があるにしても20前半の作詞かよと思わされる完成度。でもそのアンテナはたしかに若さがあるゆえの柔軟さから生まれるものだなあと感心しかありません。

このあとナイモノバカリに接続するのがええねんだとか、イエローフラッグがまたええんじゃと語彙力がないオタクだというのを露呈してしてしまうので各曲の掘り下げも割愛。

これはどちらかと言うと買ってない方向けの話なのですが、CDを買うと歌詞の書いたブックレットが付くじゃないですか?

表紙から開いて1ページ目。

あえて見ずに、最初はなんならブックレットを開かず再生して最後まで聞いてください。
そして手にとってページを開いてください。
脳ミソのなかに収まった神経がフォークダンスです。

まあ、これだと訳が分からないと思うのでサクッと書くと「たった一文読んだだけで、それまで聴いた曲の有り様が変わるぞ」ということです。

簡単に説明できることを長々書く大人になってはいけません。
ソースはボクです。

話をレールに戻すと、この聴き方を推奨しているのはさらっと聴くとノリで音を楽しめるし、一曲ごとの完成度を楽しんだり、シングル収録曲は配された場所での映え方やアレンジバージョンとを楽しめます。

そして先に申し上げた「たった一文」を読むことで曲に一本、筋を通してくれる。これまで聴いたものがむくりと起き上がり、姿を変えていく様はぴりぴりと快感を放流してくれます。

空っぽの「秕」の頭で曲を聴き、その一文を読んでからまた聴く。そこには「シイナ」がギュウギュウに詰まっています。すごい満足感をボクは覚えました。

今回のアルバムは曲も歌詞もカタカナがふんだんに散りばめられています。

日本語においてカタカナを使うときは外来語を使うときが基本ですが、あとは文字面をある種のアクセサリーとして使う場合や通常の語義と異なる用途で使うなど、ある種のラインを設けるのに使ったりとそこに意図が宿ります。

夏川椎菜さんとその旗のもとに集った作り手の人たちが意図を持って作ったアルバム・ログライン。好評発売中です。
悪いことは言わない。買った方がいい。ジャケもオシャレ。

そして聴いた感想は吐き出してシマエバイイ。
お粗末。

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