歌と絆


まだネットの掲示板に
みんなが音源をベタベタ貼り付けてた時代

別のものを求めて聴きまわっていた時に
たまたま出会った歌声でした

この素敵な男声の持ち主のこと
何も知らないし
特に人柄とかに興味もなかったけど、
一応当時の認識としては

ボーカロイドという音楽ソフトで作成され
インターネットで発表されていた楽曲を
「歌ってみた」と題して
自身の歌唱を収録・編集した動画を
インターネットに投稿した人

そしてたぶんその動画の音源が
無断転載とか色々を経て
私の耳にたまたま入ったのでした
(今振り返るとめちゃくちゃな時代ね)


最初は「好き」って事に自覚がないまま
いつの間にか
その歌を聴くことが
私の生活の一部になっていた

歯を磨いて布団に入ったら
イヤホンを耳につけて再生する

毎晩のルーティン
同じ一曲を毎晩聴いていた


その歌声は魔性で
初めて出会った時から
私の気持ちを掴んで離さなかった

初めて出会ったその一曲は

媚びるような嫌味のない、
やさしくて甘い声
透き通るような
爽やかさもある声

歌詞の中のたった一文字でさえ
この楽曲のための声を選んだみたいな歌い方

たった一文字の音の中の強弱でさえ繊細で

たった一文字にすら、
私は惹きつけられていた

どこのパートを聴いても心奪われる
例えば満天の星空とか
大輪の花みたいに
見逃すことができない
思わず目が奪われてしまうみたいに
耳と心がその歌声のことしか見なくなる

歌い出しに比べたら
少し力んだようなビブラートの発声も
悲痛な叫びのような歌詞に見合ってた

たまらないと思った

曲の後半のとあるパートで
ケロケロとした(機械音みたいな)声の
加工が入るんだけど
聴き慣れない単語を
ふわふわした音色(声)で繰り返すから
まるで呪文みたいに頭のなかで反芻した
めまいに似た感覚だった
クラっときた
たまらなかった

人間の脳みそはきっと
求めている音が耳に入ると
快感を覚えるんだと思う

正直、
私は楽譜の事はとても疎いんだけれど
この歌声の耳心地の良さが教えてくれたのは
仮に世界の全ての人が
「彼の歌は楽譜と違うんだ」と言っても
関係ないんだということ。

「歌」として
私の見ている世界の中で
この歌は「完全」だった

歌声と出逢った当時
15歳の私は
自分がこの歌のどこが好きかなんて
分からないまま
何が好きかなんて話せないまま
心が求めるまま
聴いていただけだった

あの頃より言葉を学んだと思って
がんばって文字にしてみたけど、
それでも表現しきれてない自覚がある

本当はもっともっと素敵で
もっともっと愛があって
大好きだってことを表現しきれない
こんなもんじゃない

この歌に対しての気持ちは
世界を周っても宇宙に行っても
この世のどんな言語を知っても
表現しきれないんだと思う

好きが世界より溢れてる


毎晩同じ曲ばかりを
何度も聴いて過ごしてた

嫌いな先生の授業のある前の夜
金縛りにあった次の日の夜
嫌な夢で起きた夜中
友だちとケンカしちゃった日
得体の知れない怖さに襲われる時

私の不安をかき消してくれた

心が歌しか聴かなくなるからね

もちろん何気ない日常の中にも

この歌声との思い出はたくさんある
いつも一緒にあった歌でした
でもやっぱり何故か
夜に聴いてた記憶

そんな日々を長らく過ごしていた

ある日
ふとようやく思った

この人
他にも歌っているだろうか



続きはまた次回に書きます

読んでくれた人

ありがとうございました

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