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[psycho-death] hideさんを通じて改めて考える、令和時代の死への向き合い方

はじめに

最初に、なぜこんな文章を書こうと思ったかということを書いておきます。私はいま33歳で、言うまでもなくhideさんのファンの1人です。

hideさんファンと同時に、東京のITベンチャー企業で働くテクノロジー業界の端くれでもあります。特に現在の事業領域が(ゲーム)配信・アバター・VRのような領域ということもあり、そこから見えてくる景色をまとめてみることにしました。

抽象的に結論をまとめると、「hideの魂(psycho)は彼の死後もテクノロジーによって生き続けている。令和時代はそれが一般にも加速し、死というものの概念が変わる。まさに、hideさんが体現したPSYCHOMMUNITY(サイコミュニティ)が一般的になる」ということです。

この note では、hideさんとテクノロジーの深い関係を紹介しつつ、令和時代ではそれがどう一般に昇華されていくのか。という流れで書いていきます。ちょっと長いですが、お付き合い頂ければ幸いです。

2000年に hide MUSEUMに来訪したときの写真

hide x tech の歴史

hideさんのことを知らない方もわかりやすいように、hideさんのことを tech という切り口で紹介していこうと思います。

画像引用元:http://www.mtvjapan.com/news/p9vwcq/hide-mvh

hideさんは X JAPAN のギタリストであり、33歳で亡くなられています。X JAPAN は小泉元首相もファンだということで、誰でも一度は名前くらいはきいたことがあるのではないでしょうか? hideさんは、X JAPAN 活動中からソロ活動も行っており、そちらで知っている方もいるかも知れません。

エレキギターという楽器、「ウェーイ!」みたいな勢いでギュンギュン言わす楽器と思われがちですが、エレキと入っていることからもわかるように、かなりテッキーな楽器であります。機材で音を歪ませたり、音を遅らせたりなど、テクノロジーとは切っても切れない関係にあります。そのため、ギタリストの方は、パソコン・インターネットなどを始めとするテクノロジーに明るいことが多いです。(GLAYのHISASHIさんもそういうキャラですね)

hideさんがどれだけインターネットにハマっていたか・可能性を感じていたかを表すエピソードをいくつか紹介します。

──hideさんは2ndアルバムの頃からインターネットにハマっていました。I.N.A.さんも当時、インターネットはやっていたんですか?

仕事以外ではあまり使ってなかったですね。1日中コンピュータを使っていたから、家に帰ってまで触りたいと思わなくて。

──1997年に六本木のクラブ数店舗を貸し切って行われたオールナイトイベント「hide presents MIX LEMONeD JELLY」では各クラブの様子をインターネットで生中継していましたね。

あれも大変だったんですよ。NTTの業者さんがいっぱいクラブに来て、インターネットを接続する方法をあれこれ試して。そのとき、hideはとにかくインターネットにハマってたんですよね。

引用元
https://natalie.mu/music/pp/hide_ina_kimiseka/page/3

1997年ですよ。Google社の創業が1998年なのでそれより前ですよ?ファイナルファンタジー7が発売されたのが1997年ということを考えれば、その当時の時代背景がわかるでしょうか? 初代Playstationにはインターネット接続機能なんかなかったし、ゲーム攻略サイトなんかあるわけなかったあの時代。その時代に、インターネット生配信を行ったんですね。ほんと先見の明があるというか、新しいものを取り入れてエンターテイメントに昇華する力が高い人でした。また、下記のようなエピソードもあります。

姉帯:hideが97年にロスでレコーディングしていたときに東京とFAXでやり取りをしていたんですが、突然「今後はメールで送って欲しい」と言われたんですよ。「FAXでは受け取らないよ」と(笑)。その時代はまだレコード会社でも各セクションにパソコンは1台という状況だったので、勿論今のようなメール文化はありませんでした。メールを送るにも、いちいちネットワークにつながないといけないですし、その間にメールが消えてしまったりして、FAXだったら15分〜20分くらいでできることを1時間くらいかかっていました。あのときはイジメかなと思いましたけど(笑)、今思えば我々への教育だったんだと思いますね。

引用元:
https://www.musicman-net.com/special/63368

これまた1997年ですよ。Windows95が発売された2年後からFAXを禁止したと。我々に分かる言葉でいうと、2010年頃から「割り勘はキャッスレスな」といっていうようなものですね。(2010年にはiPhoneが日本でも発売されていたのでギリギリインターネットバンキングできたとは思う。専用アプリはなかったと思いますが)

そういえば、インターネットに繋ぐときの音を取り入れた楽曲もあります。インターネットに繋ぐ音って多分伝わらないと思いますが、昔はインターネットにつなぐのに音がしたんです(笑

そして、hideさんがなくなった後も、周りの人たちがテクノロジーを取り入れて彼の意志を継いでいきます。

没後のテクノロジーとhideさん

hideさんの没後、彼がおもちゃにしていたインターネットはインフラになりました。台風でライブが中止になっても無観客でライブを行い、それをインターネットで中継できる世の中になりました。

台風で無観客ライブを決行・インターネット生配信を行ったX JAPAN
引用元:https://www.barks.jp/news/?id=1000160407

インフラになったインターネットについで、hideさんの意志を紡いだ大きなテクノロジーは、「VR・AR」と「ボーカロイド」でした。

VR・ARとhideさん

hideさんの話をするまえに、まずは最新のVR・ARのテクノロジーを紹介しておきます。2019年では、VTuberがライブハウスでライブをすることができる時代が到来しています。

ARライブをおこなうVTuberのときのそらさん・銀河アリスさん
引用元:https://www.inside-games.jp/article/2018/12/22/119512.html

私も上記のライブに参戦したのですが、非常に感動しました。一言で言うと「VR・ARであることの違和感がなかった」という感じです。生身の人間が出ているライブと同じ盛り上がりでした。特に、会場とのコール&レスポンスだったり、歌の生感だったり、生身の人間と同じような感動を与えつつ、VRならではの仕掛けも用意されていて、新しいエンタメの始まりを感じました。(念の為補足:演者さんは会場の様子を見ながら、リアルタイムで演じています。観客が録画された映像を見ているだけのライブではありません。

このライブを見ていて思い出したのが、X JAPAN の復活ライブです。hide さんの没後、X JAPANは再結成し、ライブを行います。そのステージにhide さんがいたのです。ホログラムで再現されたhideさんがギターを弾いていました。(こちらは事前に決められたように動く映像ですので、先程のARライブとは異なりますが)

ホログラムで演奏するhideさん
引用元:https://www.barks.jp/news/?id=1000038943

この後、ホログラム演出はX JAPANにとっては当たり前の演出となっていきます。没後にもステージに立ち、観客の心を打つということが行われているのです。これは、生前にX JAPANとして活動し、数々の映像が残っているからこそ可能になりました。

ボーカロイドとhideさん

hideさんの没後、レコーディングが終わっていた楽曲が次々とリリースされました。(ちなみにそれらはミリオンヒットになっています)
レコーディング途中だった(歌撮りが終わっていたもの)何曲かも、何年かにわたりリリースされました。ここまでは、よくある話だと思います。

しかし驚くことに、2014年、hideさんはボーカロイドという技術で新曲を発表したのです。新曲といっても全くの新曲ではなく、デモ音源は存在したという意味で、hideの曲だとファンも納得できる作品です。

生前に発表された曲からボーカルトラックを使用し、歌詞に合わせてVOCALOIDの様に1音1音を繋ぎ合わせ、それでも足りない部分を現時点でまだ未公表とされているYAMAHAのボーカロイドの新技術を採用し完成され

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90_%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%AB

そうなんです。本格的な歌撮りがされていなかったこの曲は、生前の歌声をつなぎ合わせる & そうでない部分はボーカロイドの技術によって補完されています。ボーカロイドという技術が、hideさんの意志を継ぐことに一役買っているのです。ここで重要なことは、ミュージシャンという職業上、彼の歌声のデータが豊富にあったということです。

つまり、hideさんは 生前の演奏映像や音声が多く残っていたため、テクノロジーによって彼の意志を鮮明に継ぐことが可能になった。その結果、hideの存在は我々ファンの中により鮮明に生きづつけている。ということです。

上記では触れてきませんでしたが、hideさんの家族・I.N.A. さん・X JAPANのメンバー・多くの怪人たちが hideの意志を継がれていて、1ファンとして大変感謝しております。ありがとうございます。

PSYCHOMMUNITY

ここら辺りからが本題です。hideさんの造語で、PSYCHOMMUNITYという言葉があります。これは、PSYCHO(精神) + COMMUNITY(共同体) で、精神世界の共同体のような意味です。

PSYCHOの対になる言葉としてPHYSICOという言葉あります。PHYSICOは物理的な・肉体的なという意味があります。サイコロジー(心理学) に対応する、フィジックス(物理学) の語源だといえばわかりやすいかなと思います。

hideさんの没後はまさに、PSYCHOMMUNITYだったんじゃないのかなって思っています。hideさんの肉体は現世にないんだけれども、彼が残した作品・意志を共有し、紡いでいく。それが実現されている21年間だと思います。

時折言及してきましたが、hideさんの意志がPSYCHOMMUNITYとして昇華されていったのは、hideさんの生前のデータが膨大に存在したからです。令和時代を迎え、一般人でも膨大なデータを生前に残すことができる世の中になりました。

令和時代には死は2つの意味をもつ

令和時代は、一億総クリエイター時代が来る。これは何年も前から言われていたことで、TikTok・YouTube・Mirrativ・pixivなど、テクノロジーを通じて自己表現を行う人は確実に増えてきています。そしてそこにコミュニティが生まれることも、平成時代に証明されてきました。

平成時代はYouTuberがなりたい職業No.1になったこともありますね。表現者に憧れる子どもが増えること・表現者にお金が回る仕組みを整備してくことは、今の大人の責務であるとおもいます。あ、脱線してきた。

話をもとに戻します(笑)。そう、令和時代では誰でも表現者としての自分をもつようになると考えていてるからこそ、死というものが2つの意味をもつと考えています。それは、PHYSICO-DEATHとPSYCHO-DEATHです。

hideさんは、21年前にPHYSICO-DEATHを迎えてしまいました。当時中学生だった私も悲しみに包まれました。より人間としての松本秀人として関わっていた、ご家族・バンドメンバーの悲しみは想像することさえできません。しかし、PSYCHO-DEATHはまだおとずれていないと私は考えています。

PSYCHO-DEATHの定義に「表現者」という言葉を使いましたが、より広い意味での表現を意識しています。例えば、オンラインゲームにログインしてアバターを着替えたり、ゲーム配信をすることももちろん「表現」です。

PSYCHO-DEATHがテクノロジーで延命される時代

意志を継ぐ人のテクノロジー活用によって、hideさんのPSYCHO-DEATHがおとずれていないことは、このnoteの前半で述べたとおりです。それがhideさんの職業がら、たくさんの生前データがあったことも述べたとおりです。

令和時代、我々は様々なところに生前データを残しています。TikTokにアップした動画・pixiv上の画像・オンラインゲームの行動データなんかもありますね。バンド活動をやっていれば、録音データがiPhoneに入ってるかもしれません。

それらのデータを教師データとすることで、表現が再度生まれていくのではないかと思っています。具体的には、

・不慮の事故でなくなった友達と、TikTok上で一緒にダンスをすることができる。その友達の動きは、生前のデータから学習して「そのひとっぽい」動きをする。

・なくなってしまった配信者と、一緒に麻雀を打つことができる。配信者の話す内容は、生前のデータからその人っぽいしゃべりが生成されている(もちろん声色やイントネーションも)。し、麻雀の打ち筋もその人らしさがでる。

・なくなってしまった絵師さんの続きをかくAIができる。例えば、コナンの映画が発表されるたびに、その二次創作を書いている絵師さんであれば、その人のタッチでその人が書きそうな構図で毎年かかれていく。

・(一般人の例ではないですが) 将棋の特定の名人っぽい打ち方をするAIと対戦することができる。もちろん、その人のデータを完全に学習しているAIであるので、対峙している人はその人がまるで生きているかのように感じる。

そんなPSYCHOMMUNITYな時代になってくるんじゃないかなって思います。クリエイター・表現者が増えていけば行き、その活動の場がデジタルな場になっていけばいくほど、物理的な死と精神の死は乖離してく。そんな時代になると思います。

まとめ

「あいつはみんなの心にいるよ」という時代から、「表現者としてあいつは、ずっとそばにいる」そんな時代を迎えようとしているのかと思います。



hideさん、安からにお眠りください。

2019年5月2日

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