霜降り明星のオールナイトニッポン伝説


圧倒的な「主人公芸人」


もう10年前の話だけど、こう見えて僕は芸人をやっていました。

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※見た目的には全く芸人っぽさのない青木氏

当時サンミュージックという事務所にお世話になっていたのですが、なかなか売れずに燻って、とうとう芽が出ることなく解散・引退をしてしまいました。
その時はっきりと「あぁ、自分は主人公じゃないんだな」という事実を突きつけられた気がします。


そうかと思えば一方で、圧倒的な「主人公感」で売れっ子街道をひた走る芸人も存在します。

僕が思う「主人公すぎる芸人」。
それは霜降り明星です。



2人それぞれ高校生の頃からお笑いを始め、賞レースの入賞を経験。
粗品は19歳で関西の人気番組「オールザッツ漫才」優勝。
コンビを組んでからは史上最年少でM-1グランプリを制覇し、更に粗品はピン芸でR-1ぐらんぷり(現:R-1グランプリ)も優勝。

今ではテレビにもラジオにも引っ張りダコ。
更に単独ライブでネタを磨くことも欠かさないパーフェクトっぷり。

これだけの実績を重ねて今なお28歳ですから怪物すぎる。
(ちなみに今年はお笑い界初の「3冠制覇」を狙ってキングオブコントにもエントリー)

そんな霜降り明星は誰がどう見ても「主人公」だなと思うわけです。



主人公・霜降り明星は、プライベートでどちらか片方にスキャンダルやアクシデントがあっても相方がしっかりフォローします。
せいやのフライデー事件のときには、生放送のラジオ番組で逆風を跳ね返したことも話題になりました。


そして先週(2021年7月30日)のラジオ番組「霜降り明星のオールナイトニッポン」にて、霜降り明星はまた新たに伝説を残したのです。


ノリツッコミとは

今週はワクチン接種の副反応により粗品が欠席。
それによって、せいや1人で2時間の生放送に挑むことになりました。

いちリスナーとして毎週の放送を楽しみにしている僕としては
「お、今週は1人か。まあ、たまにはせいやだけのトークも聞いてみたいからいいか。」
くらいに思っていました。


25:00。番組スタート。
「霜降り明星のせいやです。」
「今週は粗品がお休みなんですよ。」
「そういえば、こないだジムに行ったんですよ。めっちゃ雨降ってる日でね…」

相方が不在であることをネタにしつつ、順調に番組が進行します。

霜降り明星はコンビ揃ってフリートークが上手なんです。
2人ともトークが同じくらい上手いコンビって実はあんまりいないような気がするので、こういうところも彼らの凄いところだと思います。


番組が始まって15分ほど経過したところで
「今日はリスナーの皆さんと交流しようと思ってます。メールを募集しますので『せいやさん、こんばんは』とか挨拶書いて送ってください。」
という主旨で今日の本題に入りました。

「なるほどね、相方もゲストもいないから、リスナーの投稿で間を持たせようって作戦か。」

主人公じゃない元芸人(=モブ)の僕は、単純にそう思ってしまいました。
ところが、これが蓋を開けたらとんでもない企画だったのです。


「じゃあ早速読んでいきますよ。こちらはラジオネーム◯◯。『ミニモニの4人目さん、こんばんは』。」
「いやバンダナ被った人と間違えてる!あんまミニモニじゃなかった人!おれ、せいやや!」

「続きましてラジオネーム◯◯。『ひろゆきさん、こんばんは』。」
「(モノマネで)名前が違うんですよ、僕せいやなんですよ。」

リスナーからの投稿は「せいや」の名前を間違えるというボケばかり。
せいやはそれに全力でツッコんだり、乗っかっていきます。

その後もリスナーからのメールは全て、名前を間違えるというボケのオンパレード。
そしてひたすらそれに応えるせいや。

飛び出すツッコミのワードは面白いし、モノマネのクオリティも抜群です。

なんて器用なんだ…!
モノマネが上手いことなんてとっくに有名だとは思うけど、それにしたって咄嗟にやっているとは思えないほどの切れ味です。


ところでちょっとだけ話が逸れますが、「ノリツッコミ」というのは非常に難しいものでして、よくあるのが
「そうそうそう、◯◯なんつって〜……っておい!」
「(し〜ん)」
「いや、誰も笑ってないじゃん!」
みたいに、ノリツッコミ自体では笑いが起こらず、そのあとのスベった空気をイジって笑いにするパターンです。
このパターンはそもそも「ノリ」の部分で笑わせることが難しいから、スベることを前提として、その後で笑いにしようという手法です。
ノリツッコミは非常にハードルが高くなるので、どうしてもこのパターンに着地してしまうことが多くなるものです。

ところが、せいやがやっているのは芸人でも相当にレベルの高い「ノリ」の部分で笑わせるというパターン。
どんな振りが来ても、モノマネとワードセンスで笑わせる。その姿勢はストロングスタイルでありながら、かなり高度な技術があることの証明だと思います。


脳がバグる体験


延々とリスナーがネタを振り、せいやが返す。

そのまま番組開始から30分経過。
ここで突然「番組の途中ですが、一曲お聴きください。海援隊で『母に捧げるバラード』です。」というアナウンスが入ります。

お、流石にせいやも疲れるもんな…。ここで休憩タイムだな。

…と思ったら、なんとその曲を歌うのも、またせいや。
自身の十八番とも言える武田鉄矢のモノマネで歌い上げます。

おいおい、マジかよ…今週とんでもない回なんじゃないか…!?

曲が終わってCMに入り、番組が再開されるとまたしてもリスナーのメールに答えまくる時間が始まりました。

最終的な番組の構成としては
リスナーのボケに答えまくる時間

武田鉄矢のモノマネで海援隊の「母に捧げるバラード」
を何度も繰り返すという、とても狂った2時間となりました。
(多分4回転くらいしてる)

僕は途中でradikoをストップさせて、しばらく時間を空けてまた途中から聴き始めたのですが、
「…あれ?これさっきも聴いたっけ?巻き戻った?今どの時間だ?」
とパニックになる始末。

ついには途中で曲紹介をしているアナウンサーの声までせいやがやってるんじゃないかと錯覚したし、番組のエンディングでまた「母に捧げるバラード」が流れた時は、今度こそ本物の武田鉄矢っぽかったのにやっぱりよく聴いたらモノマネだったりして、もう完全に脳がバグってしまいました。

フリートークからのモノマネスペシャル。
せいやの能力の高さと、霜降り明星の愛されっぷりを感じることができた充実の2時間。
番組が終了したとき、思わず家で拍手を送ってしまいました。


相方がお休みというピンチを大胆な構成とハイレベルな実力で引っくり返す霜降り明星。

彼らは正真正銘の「主人公」なのです。

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