地方フリーランスエンジニアが考えていること

「個人でエンジニアやっています」
個人事業主としてITエンジニアをやっている僕が仕事を聞かれた時の答えである。
フリーランスエンジニアと言うのは、なんか気取っている感じがして恥ずかしいが、個人事業主と言うと無骨でかっこいい気がする。
そんな小さな葛藤があるところが僕のフリーランス人生を表しているような気がする。

はじめてのフリーランス

2016年、21歳の時に、大学を休学して行ったフィリピンで3ヶ月の語学留学を終えて沖縄に帰ってきた僕は、生活費を稼ぐためにFacebookでアルバイトを募集した。18歳くらいから色々なところに顔を出していたミーハーな僕には数百人程のFacebookの繋がりがあって、すぐに仕事の話が来た。

なんでも、その方の個人的な繋がりで仕事になりそうな話があって、エンジニアの手があると良さそうな時に僕の投稿が目に入ったようで、連絡をくれたらしい。
「雇用じゃなくて業務委託にしたいんだよね」
会社を立ち上げるタイミングではどうやら人を雇用すると言うのはなかなかハードルが高いらしく、僕は業務委託として仕事をすることになった。
これがフリーランスエンジニアとしての僕のキャリアのスタートである。

業務内容は、ミーティングに参加して、アプリケーションの仕様を考えて、それを実装していくという感じ。よくあるITエンジニアのお仕事という感じだ。
時間に対して対価が支払われる形式、専門用語では準委任契約と呼ばれる形式で仕事を請け負っており、当時の時給は1500円程だった。
普通にコンビニでアルバイトをすると800円程度だった時代なので、学生身分では割のいい依頼だと思って仕事をしていた。
流されるままにフリーランスのエンジニアになった僕は、何の知識もないまま仕事をしていた。
そんな僕に最初の試練が訪れる。2016年分の確定申告である。

当時、税務に対する知識があまりなかった僕は、貰っているお金の種類が違うということに気づいていなかった。雇用されて支払われるお金は給与、業務委託で支払われるお金は事業売上ということになるらしい。
この違いが何に影響するかというと、学生の味方「扶養」である。

扶養というのは、ざっくり言うと、規定以下の収入しかない人は、家族の中で扶養家族という位置付けで、税制の優遇や社会保険の補助が受けられるというものである。
よくある103万円の壁と呼ばれるのはその収入の規定のボーダーラインを指している。
…が、これはあくまでも雇用されていて、給与を受け取っている人の話であり、僕のような事業売上を持っている人はこの額が38万円まで下がる。
つまり、38万円以上もらっていると、扶養から外れてしまい、税金や社会保険の優遇が受けられなくなるのである。

最終的には事業売上は経費を計上することで扶養から外れずに済むのだが、当時の僕にとっては大問題。扶養から外れるということは、親の税金負担を増やし、保険料を払わないといけない。学生の僕には、大きな罰金刑を食らったことと同じくらい辛いものがあった。

後に知識をその時点で整理して、翌年開業届と青色申告の手続きを済ませることで、事業所得が103万円までは扶養から外れないようにした。
学生フリーランスが最初にぶつかる壁はおそらくこの扶養問題であるだろう。みんなにも気をつけてほしい。

そんな感じで最初の1年目を終えた僕は、世間にいるような「フリーランスとして独立するために準備した」人たちとは違う形でフリーランスデビューをし、その結果税金でてんやわんやすることとなった。その後ろめたさもあり、胸を張って「フリーランスだ!」と言えないのである。

フリーランスは恋人、社員は配偶者

人と話をすることが好きで、コミュニティへの参加もよく行っていた。沖縄にもたくさんのITコミュニティがあり、よく遊びに行っては知らない知識を手に入れて、その中にいる人たちとおしゃべりすることが好きだった。余談だが、飽き性なため、コミュニティに行くことは好きだが、自分が立ち上げたコミュニティはすぐになくなってしまうことが多かった。(CODEBASEは僕が立ち上げていないので、心配はない😂)

本質的にはミーハーで、色々な人と関わりを持つことが好きだった僕にとって、フリーランスという立場はかなりいいように働いてくれた。

フリーランスの良いところは、特定の企業に属しているわけではないため、さまざまな種類の仕事を同時にすることができるというところだと思う。もちろん競業避止義務などの法律的な制限はあるが、基本的には同時に様々なアプリケーションを作る業務に携われたりする。
雇用の場合でも、様々な業務をすることはできると思うが、それを会社を超えて取り組めるというのがその良さであると思う。

フリーランスは会社にとっては切りやすいものであり、それは同時に入れやすいものでもあるということを強く感じていた。逆に言うと、社員は会社にとってはとても切りにくい、それはつまり入れにくいということでもある。だから社員の雇用にはたくさんの面接ステップが必要なのである。フリーランスは面談して良さそうだったらOK、気軽である。

今は幸いなことに世の中には仕事が沢山ある。法律も整備されている。もっと切りやすくしてくれた方が会社に入りやすいのにな、と、常日頃思っている。

管理の哲学

フリーランスになりたいと思っている人は、どこから仕事を持ってくるかということに関心がある人が多いような気がする。しかし、殊この業界においては、いろんなコミュニティに顔を出したり、エージェントさんと契約したりすればいくらでも仕事はあると思っている。

もっと大事なのは、何でもいいから自分なりに管理するという汎用的な力のような気がしている。それはスケジュール管理でもいいし、お金の管理でもいいし、文書の管理、人の管理でもいい。何かを管理するために、自分が考えた最適な方法で管理術を身につけることが大事だと思う。

フリーランスは管理の連続である。スケジュールもそうだが、仕事量や取引先との関係性、使っているツール、休み、請求書見積書領収書。。。もし自分に部下がつくような仕事をしている場合はその部下の仕事も管理する必要が出てくる。

会社であれば、役割が分かれているため、税務や会計に専門家がいる。仕事量をコントロールする上司がいる。会社から支給されているコミュニケーションツールがある。会社はその仕事に専念するために他の仕事に専念する人たちがいる。フリーランスにはそれがない。

管理には管理の哲学と手法がないと破綻してしまう。何をもって管理できているとするのか、何のために管理する必要があるのか、そこの無限の問いに自分自身が対応するための力がないと、フリーランス以前に仕事人としてうまく成果が出せないことになる。重要なのは管理をするための力であると思う。

どこにいるかではない、足がどこまで届くかである

地方のフリーランスエンジニアだからといって、その地域の仕事しかできないかというとそんなことはない。特にITエンジニアという職業は、場所を選ばない仕事であることも多い。

何が場所に囚われている原因かというと、足を伸ばす先がその場所に止まっていることだと思う。

物理的に足を伸ばして各地に行き、その場所のカンファレンスや勉強会に参加してみると、それだけで新たな人と繋がることができる。その瞬間仕事になることは少なくても、いつか仕事になったりする。特に僕はその体験が強烈に強い。
それはITに限る必要もない、ゴルフで行ってもいいし、大学の基調講演を聴講してもいい。とにかく足を遠くに伸ばすことが大事だと思う。

それはインターネット上でもそうである。SNSもそうだが、オンラインコミュニティに参加して様々な人と交流することもできる。そこで繋がったことがいつか仕事になることもある。

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