変化逃亡罪(ショートショート)
わがままを振りかざし、現状に苛立ち自分の環境を大きく変化させたくなる。
つまりわがままの権化であって、罪なんだ。
主人格から分岐した人格が、そういう思考に陥り、少し前のとある行動について、主人格である私に、意見を述べてきた。
「なんで、前の会社を辞めた。あれは、なぜだ。コロナ、上司言い訳だろ、閉塞感に耐えかねて、吹っ切れたんだ。つまり逃亡した。罪なんだよ」
主人格は、呆然として、分岐人格の話に耳を傾けて、頷いて、「あれは、逃亡なんかじゃない。打開策が思いつかない。人件費削減による出勤日数がないせいで、失敗で不足した信頼を取り戻す時間さえなかった。つまり閉塞感による精神圧力が原因だ」と言った。
分岐人格は、「なるほどなぁ、つまり心を言い訳にして逃れるために辞めたということか。」と言って、嘲笑した。
主人格は、ちょっと苛ついた口調で「あんたは、頑張れたかもしれないのに、理由をつけてやめたっていいたいのか。」と言った。
分岐人格は、「そうだ」と言って手を叩き「今では、そうかもしれないと思ってる」と言った。
主人格は、やれやれと分岐人格に呆れていた。なぜなら、前の職場を辞めるという行動に移す前、分岐人格から、今の職場を辞めるべきだと言ってきたからである。
主人格はいいようにコロコロ変えて、リスクを回避しようとする分岐人格の性格に嫌気をさしているが、同じ心から、生まれてるため、追い出すことができない。
主人格は、深呼吸をして、整えて、「前の職場の環境から逃れるために辞めたのは、正しい判断ではなかったかの議論をしたところで、無意味ですよ。ちゃんとこれからについて話すべきです。」と述べた。
分岐人格は、「あなたの意見が正しい。そうですねこれからについて話すべきだ」と言った。
主人格は、まったくすごく単純で、その気になりやすいやつだなと、思いつつ「そうだろ、今回話し合う課題は特にないが、何か話したいことはないか。」と言った。
分岐人格は、やれやれ主人格から違う議論をすべきだと言っておいて、特に話すことがないとは、まったく無くてもなんか言ったらいいのにと、ため息をついた。
分岐人格は、「前の職場を辞めて、すごく不景気な時期に次の職探しをすることになって、ようやく見つかった職場は、何年かしたら辞めるとか考えないよな」と言った。
主人格は、「それは、当分ないと思う。」といつつ、不安げな顔をした。
分岐人格は、嘲笑いながら、「今はそんなふうに思ってるけど、どうなるかわからないから不安なんだろ」と言って、挑発した。
主人格は、ムッとした顔を浮かべ、何も答えられなかった。
分岐人格は、勝ち誇ったと言わんばかりの、ガッツポーズやってみせた。
主人格は、それを見て、少しため息を、ついた。
なにが、正解で自分に合っているかわからないからだ。間違いだと思ってたことが正解かもしれないし、正解と思っていることが間違いかもしれない。
どっちみち、未来は待っていて、選んだ道とは違う他の道とくらべることができないから、変化を受け止めて成長していけば、逃亡する必要なんてどこにもなかったんだろう。
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