小型のカメラ(ショートショート)

私は重度のアトピー性皮膚炎を患っている。
今回症状を治すべく、皮膚と気管支系が得意な某大病院へとやってきた。
「久しぶりだなぁ、この病院に皮膚を診てもらうのはぁ」
私はこう呟きながら、受付を済ませた。
紹介状を受付の人に渡すと、2階にある皮膚科へと案内してもらい待合室で、自分の番が来るのを待つ
「葵拓真さんですね、あのうすみません、ここに名前と電話番号、症状などの記載をおねがいします。」
看護師が、私の方に近寄って、そう言うと手に持っている紙を渡してきた。
私「ここに書いたらいいんですか」
看護師「はい、そうです。全ての項目に記載漏れのないよう全部記入お願いします。」
私「はい」
私はなんで初診の場合は、記載をしないといけないのかと考えてみた。
おそらく、患者さんのデータを作るためだろうかという答えを思いついていると、全部記載できたので、提出した。
提出し終えると、番号が出るまで待つのだが、待ち時間が長かったので、病院内を散歩していた。
外来できた人間が行けるところが限られていたので、思う存分探索することはできなかったが、「昔、入院していた時に通った病院内の敷地にある学校が見えるだろうか」などと口ずさみながら歩きまわった。           かなり歩き回ったので、もう番号が呼ばれているだろうと思いもどってみると、まだ呼ばれていなっかたので、安心した。              それから、数分後してから、診察してもらうことができたのだ。
診察室に入ると、笑顔のかわいい女医が、「この病院に来たのは久しぶりになりますね、二年ぶり、」と呟いたので、「そうですね二年ぶり」と返すと、女医はニコッと笑った。                     女医は「今の皮膚の状態をしりたいので、見せてくれませんか。」と言い出した。おそらく服を脱げということだろうかと思い「服を脱いだらいいってことですか。」と確認してみると、「そのほうが見やすいので脱いでください」と言われた。                          指示に従うか迷っていると、後ろで女医の発言を聞いた看護師たちが、カーテンをあわてて、ひろげる様子をみてしまった。
裏方の人間が、私のために環境づくりをしてくれているのかと思うと、皮膚を治すためにも脱がなければならないという気持ちになり、全裸になった。
私が全裸になると、女医は首から下げているチェキを手に取り、写真を撮り始めた。
「上半身だけじゃなくて、足のほうも見せてもらえますか。」
女医の要望にごくりと唾を飲み込み、「ふくらはぎがひどいんですよ」と言いながら、ズボンをめくりあげる。
ブツブツが局地的に集中している患部をみせると、女医は写真を撮りながら、「ひどいですね。アトピーはいつからですか。」と聞いた。
私は、「子供の時からです」と答えると、女医はかわいそうにという顔をして、「あなたは自分の人生にアトピーがないことを望みますか。」などと言い出した。
私はそらもちろんアトピーのない人生を望んでいるに決まっているじゃないかと思いながら、「アトピーがない人生を望みます」と返してしまった。
すると、女医は、「だったら、このカメラのレンズに、手のひらを当ててください。
あなたが一番最初にアトピーを発症した年に私が戻り、赤ん坊だけに有効が認められている特効薬を打って差し上げましょう。
そうすれば、目の前で裸になり恥ずかしい思いをすることもなくなります。」と呟き私に手をカメラのレンズにかざすように指示しだした。
私は恐る恐る指示に従うと、意識が遠いてしまった。
時は、私が生まれる20数年前に女医は、遡った。
女医「ここが、あの患者が一番最初にアトピーを発症した日ね。とりあえず探さないと」と呟きながら、赤ん坊である私を、女医は探しに行った。
その後、現代の世界で、私は裏方の看護師に、「おきてください。先生どこに行ったかしりませんか。」と呼びかけられて、目を覚ました。             私は地べたに落ちているチェキを指さして、今まで何があったのか説明すると、「先生が言ったことが、事実だとしたら、このカメラを使って過去にさかのぼったということではないでしょうか。」と言った。        すると、看護師たちは、慌てた様子で、「次の患者さんも待っているので、待合室におもどりください。お薬も出しておきますので、お気になさらず」と待合室へ行くよう誘導した。                    待合室に戻り数分経過すると、看護師に名前をよばれて、診察料を払い処方箋をうけっとった。                          病院に来ているのに、薬局に立ち寄ってお薬を買わないといけないことに、毎度のことながらためいきがでる。                     私は「これだから、歯医者と比べて、皮膚科は金がかかる。」といつも通りの愚痴をつぶやいた。
なんだかんだで、薬局にいきお薬を出してもらってる間、眠気が襲ってきて、意識が飛んだ。
おそらく過去に戻った女医進展があったのだろう。                                           女医は「はぁ、この病院ねやっと見つけたは、しかし難儀なことに過去の自分が働いていた場所というのが、厄介ね」と呟いた。                     ぐちぐちと女医は呟きながら、赤ん坊にだけ使用が認められているアトピーの特効薬を私に注射した。                      この出来事によって、未来が変わってしまい私のアトピーは治ってしまったのである。                             そして、現代の私は目を覚ました。薬局の待合室にいるのだが、なんだか様子がおかしく感じた。 すると、薬剤師さんに声をかけられた。「葵拓真さん風邪のお薬ですね」

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