国が子孫を作る(ショートショート)

私の名前は、片栗玄弥、職業は、評論家で何度か本を出している。
そんな私の代表作は、子供を産まない選択という題の本である。
結婚すると幸せになるという嘘偽りを垂れ流すスローガンに嫌気を差し、結婚せずに子供も産まないという選択もいいのではないかという理論を世に発表してきた。
私の成果のおかげで、コンビニからエロ本はなくなり、テレビで性的な描写を制限したり、不倫を絶対に許してはいけないという空気感を出し、結婚と子供には重い重い責任がのしかかるということを、潜在的に意識させるような報道が誕生したのである。
これによって、私の結婚しない道もあるんだよという考えを世に理解してもらう戦略は、成功したのだ。なんて素晴らしいことなんだ。
私は生前そういうふうに、思っており、死んでからも私の選択は間違っていなかったとおもっている。
私は私の実績によってどれだけ、未来に影響力をもたらすことができたのか知りたくなったので、私の死後から50年たったら、蘇生して欲しいと頼んでいた。
そして、私の死後から50年たち、蘇生してもらったのである。
蘇生してくれた人は、「片栗さん…片栗玄弥さん…あなたの死後から、50年経ちましたよ……長い眠りから目を覚ましてください」と声をかけた。
私はその声に気がついて、目を覚ました。
「お気づきになられましたか、あなたの思想は未来に大きな影響を与えてしまった。」
私はあたりを見渡して、何も違和感を感じなかった。
私の目の前にいる人間が、本物そっくりのロボットということでもなさそうだったからだ。
私を蘇生してくれた人に礼を言った。
すると、「私の名前は1308です。国が労働者として働かせるために作り出した人間です。あなたのように、名前のある人間はいません」と言った。
私はどういう状況が起こっているのか。状況が呑み込めず、困惑していた。
すると、1308は、「あなたの死後、恋愛もののエンタメは、性的な連想をさせるので、卑猥だということで、規制されてしまい。夜の営みや結婚などについて無関心、無知識の人間で溢れてしまい結婚する人や出産する人の数が大幅に減ってしまったのと、数年前の不景気によって、ちゃんとした育児をするだけのお金がない人が多くなってしまったことがさらに少子化を進めてしまったことで、人材不足がより深刻になってしまった。そこで国は労働者の人材を確保するために金がない男と女を集め毎日性行為をさせて、子供を産ませることにした。
工場のように、子供を作らして、番号で呼ぶようになり、無償で教育を受けさせて、成績が優秀な人と成績が悪い人にわけられて、それによって仕事がそれぞれ振り分けられるシステムになったのです。」
私「そうですかぁ」
1308「片栗さんは、この未来を目指して、本を出し続けていたそうですね。どうですかこの未来の仕組みは、あなたが望んでいたものですか。」
私「…………」

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