日差しの街(ショートショート)

太陽を活性化させるために、僕たち日差しの街の住人は人間の子供たちを集めている。
「お兄ちゃん、今日も仕事」
兄「あぁ、留守番をしていてくれ」
「僕も行きたい」
兄「大きくなったらなぁ」
兄はそう言うと、大きなリュックに、笛をぶら下げて、出かけていった。
「早くあの笛を吹きたいなぁ」
僕は、兄の大きな背中を見ながら、そう呟いた。
「おい坊主、見張りを頼めるか」
兄を見送り終わると、おじさんが、やってきて、子供たちの指導をしてほしいと頼んできた。
僕の大切な仕事だから、やらなければならない。
「わかった」と大きな返事をして、太陽へと向かった。
太陽に着くと、僕の他に子供達の見張り役のおじさんが、「いいか大切な家族を思って、この動きダンスを踊れ、そうすれば、太陽は活性化し、宇宙は救われるわぁ」と言って、笛を吹き踊りを踊り始めた。
僕は一緒には踊らずに、子供たちがちゃんと踊っているか見張りをしている。
右端にいる女の子が、嫌そうな顔をして踊っていないことに気がついた僕は、おじさんに合図をだした。
すると、おじさんは、私の合図とともに動きその女の子を、注意しにいった。
本来ならば、30秒で終わるのだが、ダラダラと長引いたので、話を聞くことにした。
僕「どうして踊ってくれないんだ。最初は楽しそうに踊っていたのに」
女の子「もう、飽きたから踊りたくない」
僕は困ったなぁと思って、持ってきた笛を吹いた。
今から吹く曲は、子供の機嫌を良好にする効果がある。
笛を吹こうとすると、おじさんが、「おい坊主、笛を吹けるのかぁ」と言ってきた。
おそらく小馬鹿にしているのだろうか。そんな気がした。
僕は完璧に、笛を吹き上げて、女の子の機嫌を治すことに成功した。
おじさんは、驚いて、「笛、ちゃんと吹けてるのになんで、あいつ狩りを教えないんだろ」と小言を言った。
それから数日後のこと、僕は兄に内緒で、人間の世界へと旅立った。
面倒な見張りなどしなくていいし、気分が最高に気持ちよかった。
飛遊ソリで、空中を駆け抜けて、遊んでいると、大雨にみまわれて、雷にあたって、ソリが大破してしまった。
「そっか、今日は雲が分厚かったから、大雨が降ったのかも」
経験の浅さから、失敗してしまって反省する。
ため息をついて、近くにある公園のベンチに寝転がって眠った。
目蓋を開けて、背伸びをして起き上がると、そこには、家族連れの子供がいた。
僕はすかさず笛を取り出し、誘いの曲を吹いてみることにした。
すると、子供がたのしそうなかおをしながら、僕のほうへと誘われて寄ってきた。
この時、僕の笛は通用するんだと実感して嬉しかった。
すると、あわてて、両親たちが子供を抱えようとした。
「こっちじゃないよおうちに帰ろうね」
母親らしき人物が、子供を抱っこして、家へと連れて帰る。
僕はこの子を日差しの街へとつれていくことができたら、兄に認めてもらうことができると思った。
その子の父親が「子供が誘拐される事件があって、笛の音で子供達を誘うようなんだ」と言うと、母親は、「物騒な世の中ね」と言って、眉間に皺を寄せた。
僕はこの会話を聞いた時、僕たち日差しの街の住人たちのことを言ってるのではないかと、少し思いながらも、子供を連れて行く計画を練った。
「きみは、選ばれしものなんだ」
僕はやっとのことで、子供を笛でさそって、日差しの街へと連れて行こうと思ったが、飛遊ソリが大破しているせいで帰れなかったのだった。





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