チョコレート返済戦争(ショートショート)

男がチョコレートを返済する日それこそが、ホワイトデーだ。       その日が近ずくと、携帯でチョコレートのブランドをこぞって検索する。        私もその中のひとりで、今検索をかけて、出てきた情報をスライドさせて、見ていくと、どういう系統のチョコが喜ばれるのだろうかと、少しなやんでしまった。                               忘れていたというふりをして、ホワイトデーをやり過ごそうと考えたのだが、きっと自分の評判を落としてしまうし、学生時代と同じことになってしまうだろうなと思うと買わなければならないという気持ちにもなる。       学生時代の私は、ひねくれ損のひねくれ王子で、あなたの好意はうけとります。だけど、頼んだわけでもないのに、私がなんでわざわざチョコレートを買って、少しの接点しかないあなたの好意に、こたえる必要があるのかわからないから、お返ししなかった。                      その結果次の年からもらえないようになって、なんか悲しくがんじる学生生活を送ってしまうことに、なったんです。                でも今考えてみてみると、せっかくチョコを大したことのない私にあげたのに、お返しももらえない女の子になんだか同情したくなり、そら次の年もあげたいとは、思わないよなと、納得する。                このくらいの時期になると、チョコ関係の思い出をふと、思い出してしまい友達はお返しするのか聞いてみようという気になってしまうが、どうせ脈なしだろうし聞くだけ損だろうとも思う。
そんなふうにお返しするか悩んでいたある日、よく立ち入るコンビニに、バレンタイン用のチョコレートが売ってあることに気がついた。
「義理チョコやしコンビニでいいかぁ」
私はそんなことを呟きながら、職場の女の人がくれたチョコを調べてみる。
調べてみると、2000円越えするチョコだということが判明した。
その驚くべき数字に驚嘆しながら、安いチョコを買い「もし相手側も調べたら、割りに合わないとぐちぐち怒りだすだろうか。もしそうなったら、値段じゃなくて気持ちが大切などと言い張ろう」などと、決心した優柔不断な私は、迷いながら、買い渡しに行った。
渡しに行くと、突如道が、くねり始め、バレタインデーのお返しを渡しに行くところの、男たちが、集結してしまった。 一人で、うずくまっている私に、村瀬が「あなたも、もしかして、バレンタインデーのお返しを渡しに行くところですか」と話しかけてきた。                 「はい、そうです。」 
「奇遇ですね、私もホワイトデーのチョコを女の子に渡しに行くところなんですよ」
「へー、どんなチョコレートですか、もしかしてそれ、失礼ですが、コンビニのやつではぁ」
「えぇ、そうですが何かぁ」
「近くのコンビニで、済ませてしまうなんて、あなたが好きな彼女が知ったらどうでしょう」
「いや、義理チョコです。」
「そうですか、変な妄想をしてしまって、すみません」          私が、村瀬と楽しく会話していると、割って入るように、男性が入ってきた。                                「おい、おいそこどいてくれよ、ここは、どうなっているんだ。見えない壁にふさがれているみたいだ。」                      男性はそう叫ぶと、ひざから崩れ落ちた。                   状況のわからない私と村瀬、そしてひざから崩れ落ちた男性は困惑している。                                 すると、そこに反バレンタインデーという襷をつけた無精ひげの太ったおじさんが、壁の向こうから近ずいてきた。                数分後、おじさんは壁を取り抜けて、私たちがいるところに、やってきて、「私は一生、彼女もできなかったし、バレンタインももらえなかった。君たちが正直羨ましい。だから意地悪したくなってね、ごめん、僕にチョコをくれたら、開放してあげるよ」と、微笑みながら言った。




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