疲れる人(ショートショート)

どうして人は疲れるのだろうか。休みの日を爆睡期間と呼んでいる私は、ふと疑問に思っていた。

体をそんなに動かした記憶はないのに疲れる。

仕事が休みというだけで、時間を気にせず起きれるというだけで、もっと寝ておきたいという心持ちにさえなる。

仕事を辞めて、就職活動期間の、時間に追われない日々の中でも、なぜか8時間以上は寝れて、だらだらと生活していた記憶がある。

もともと体が弱いのが、原因なのかもしれない。
弱いっていっても、普通に生活はおくれているし、毎日15分程度は、歩いている。

だけど、20歳という若造の体にしては、疲れやすいのである。

その根源は、抑えきれない性欲に操られ、一人で行為を致してしまっているからだろう。

ぼんやりとそんなことを、思っていると、伝説の整体師と名乗る怪しい人物が、声をかけてきた。

「ほぅ、確かに疲れが筋肉の中に、潜んでいますなぁこれは、早く処置しなければ、取り返しのつかないことになりますよ。私の施術を受けてみてはいがかかなぁ、見違えるように体が軽くなりますよ」

私は、この整体師の言っていることに、嘘くささを感じつつも、我に縋りたい一心で、施術を受けることにした。

筋肉が解されていく、気持ちよさを感じて、ぐっすりと爆睡した。

整体師は、「だいぶ、こっていますね、」などと呟き、施術が終わると名刺を渡してきた。

リラクゼーションという文字を眺めたとき、私はなんだ医療系じゃないマッサージ店の店員か、と思った。

まぁ、医療系なら、まず電気を使って、筋肉の張りをほぐすところが多いからなぁ、それにほぐしかたに雑ぽさがあるし、首の矯正をしてくれないから、リラクゼーションだろうなと薄々は気づいてたが、ここまで、自分のマッサージに自信のある奴は、初めて出会った。

私は、「すごく、軽くなったよ。ありがとう」などと、お世辞をいい、この自信過剰整体師を、いい気分にさせてみた。

すると、「そうですか、私の整体師の力量に、ご満足いただけたのなら、幸いです。こうやって、疲れてそうな人を見つけて営業をかけるのが、私の趣味でして、今度疲れが溜まった際は、私のお店のほうに、お越しください」と満足気に整体師は言い、どこかへ去っていった。

私のお世辞にまんまと引っかかってしまった整体師を嘲笑う。そして、施術を終えた後、やっと家に帰ることができた。

数日後、また疲れが溜まってきた。マッサージ店に行こうが、鍼灸に行こうが、歩き疲れが日々溜まっていくし、肩凝りがひどくなっいく……

疲れないことなどあり得ない。皆疲れがたまる疲れる人なのだ………



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