目玉(ショートショート)
私は目を擦ってしまった。
もしかしたら、目玉の中にほこりが入り込んでしまい視力が低下してしまったのではないか。
そう思って、眼科へといくことにした。
眼科に行って、視力検査をやった後に、診察してもらった。
先生「近眼ですね、それにすごい目玉が汚れている」
私「そうですか、メガネとかかけたほうがいいですか」
先生「いやメガネかけるともっと悪くなるのでかけない方がいいですよ。」
私「そうなんですね。」
先生「はい、レベル2の段階で軽症なのでそのほうがいいです。」
私「わかりました」
私が帰ろうとすると、先生は微笑みながら、「目玉がすごく汚れていらっしゃるので、洗っていきませんか。」と言って引き止めた。
私は席に座り、「目玉を洗うことってできるんですか」と言って、少し関心を持った。
先生は満面の笑みを浮かべ「はい、すごくスッキリしますよ」と言った。
私は、やってみようと思い「洗います」と返事をした。
すると、先生は助手を呼んで、私が目玉を洗いたいと思っているという趣旨を説明してくれた。
助手は、説明を聞き終えると、私を別室に案内した。
その部屋は少し暗みがかった部屋だった。
「えっ」
助手は、歯医者さんでよくみるようなリモコンで動かす椅子を指差して「あぁ、ここに寝てください」と言った。
私はこの眼科は大丈夫なのかと、思いながら、座り、リモコンによって操作された椅子はベットになった。
私が仰向けの体制になると、助手は、ポケットから、目玉を洗う専用の機械を取り出した。
ジュワーという音ともに、横から水が投入された。
私は「うわぁ」と叫びたくなったが、助手に、きつめの口調で、「目が傷つくのでやめてください」と言われて怒られたので、ぐっと堪えた。
その後、なんやかんやで、気持ちいい感じで、スッキリとした快感を覚えた。
そして、時々通うようになり、気づいたら毎日通っていた。
先生「気に入りましたか。」
私「はい」
先生「だんだんと、視力低下が目立ちますね」
私「そうですか…」
先生「そんなに落ち込まないでくださいよ。」
私「へぇ」
先生「新しい目玉を装着すればいいんですよ。視力低下して見えなくなったら、新しい目玉に取り替える画期的だと思いませんか」
私「それは、目玉はもう消耗品だということですか。」
先生「そうです。理解が早いですなぁ、これからもう古い目玉を捨てる時代がそこまできてる」
私「ほぉ、それは眼鏡よりもいいかもしれない」
先生「でしょ、でしょ、朝メガネを探す動作をしなくて済むんですよ」
私「それはいいですね、やります」
私は眼科の下にある売店で視力2.5の目玉を2個買って、先生に渡した。
すると、先生はその目玉を助手に渡し、お馴染みの場所へと移動して、目玉を交換してもらった。
あれから、数日後のことだ。
居酒屋で、飲み過ぎてしまい終電を逃したので、タクシーを呼んだ。
私はタクシーに乗り込み、スマホを弄っていた。
キュー
運転手がかけた急ブレーキによって、私は、前の席に頭をぶつけた。
その時、ポロッという音がして、視界が真っ黒になった。
「あー、私の目玉がぁ……」
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