少女君は、和む(ショートショート)

増税反抗騒動、性差別、色々な問題が蔓延る現代社会に生き自称革命家を夢見る女は男の子を身籠った。
その女は、「我々は、男にいいように扱われてる男性社会を正さなければ、女に未来はない」とうっとしいカラスの鳴き声のように、街中で演説しまくった。
でも、何も変えられないし、何を変えたいのか明確にはわからずふわふわとした倫理観だけが、気力として残る。
つまり頑張っているけれど、なんの成果も得られることができずに、時間だけが過ぎていっているということだ。
だから、本当の意味での平等である象徴を私が産まないといけないそうゆう思いで、息子の名前を、少女くんと名付けた。
少女くんは、すっかり幼稚園に上がる歳になり、微笑ましい毎日を過ごしていたが、ある日私にこんな質問をしてきた。
「ねぇママ、なんで男なのに、少女っていう名前なの」
私は少し困惑しながら、「変な名前だからって恥ずかしがる必要なんてないの、あなたはね、男女平等の象徴になるんだから」と答えてみた。
すると、「そっか、じゃあ変じゃないよって、莉乃ちゃんに答えないとねぇ」と息子は妙に納得してくれたが、安心はできないなと少し思いながらも受け流した。
数日後、幼稚園から電話があった。
「もしもし、少女くんママさん、少女くんが、飯田君の顔を、カッターで傷つけたんですよ、幼稚園にきてもらいますか。」
私は慌てて幼稚園に向かい詳細を聞いた。
事件発生の数時間前、私の息子は、「ママがね、少女っていう名前は男女平等の象徴だから変じゃないって」と莉乃ちゃんに言った。
すると、莉乃ちゃんは、「へーそんなんだ。かっこいいね」とぼそっと言うと、その話を聞いていた飯田くんのグループと揉めたらしい。
飯田は、「男の子に、少女って名前つけるの、もっと意味わかんないけどなぁ、お前の母ちゃん頭の中に虫でも湧いてるんじゃないの」というと、少女くんは、親を馬鹿にされた怒りで、「……虫なんか湧いてないもん」と言い返した。
莉乃ちゃんは、喧嘩をやめさせようと思って「あんたたちねぇ、少女くんの気持ちを考えなさいよ」と言って精一杯仲裁しようとした。
しかし、飯田君は、「あぁ悔しいよなぁ少女君なぁ男なのに女みたいな扱いされて、それともお前は、男として価値のないひ弱な子ですかねぇ」と挑発した。
この挑発に乗ってしまった少女くんは、「なんだって」と言って飯田くんを睨んでしまった。
飯田くんは、「おぃ、やるのかぁ」と言って、拳を振り上げた。
もう少しで、少女くんが殴られそうになったところを、莉乃ちゃんは「やめて」と止めに入ったが、飯田君に「邪魔なんだよ」と言われて、顔面を殴られてしまう。
その光景を見ていた少女くんは、レクリエーションの時間で使うはずだったカッターを取り出し、飯田くんを、切りつけた。
この事件に関係のあるママたちが集められ、先生が説明してくれた内容を聞いていると、飯田君のお母さんが、「よりひと、こっちにきなさい。男なんだから女の子を守るように、言い聞かせているのに、女の子を殴ったとはねぇ、まったく呆れて言葉も出ないわぁ、人様に迷惑をかけてぇ、すみませんねぇ、ほらぁ頭を下げなさい」と飯田くんを説教した後、私たちに向かって飯田親子は、頭を下げた。
本来なら、私にではなく、莉乃ちゃん親子に頭を下げるべきだと思いながらも、受け入れてしまっている自分がいた。
それに、カッターで傷を負わせてしまった息子の方が悪いと思い。
「謝るのは私たちのほうです。大切な息子さんの顔を傷つけてしまってすみませんでした。」
私は深々と頭を下げて、謝った。
すると、飯田くんママは、笑いながら、「こんな傷、大した傷じゃありませんよ、よりひとは体が丈夫ですから2、3日したら治ります。お気になさらないでください」と言った。
私は、「そうですか、」と少し頷いた後に、飯田くんも何かと大変なんだと察した。
その時莉乃ちゃんは、けがの治療をうけに、病院に行っていなかったのだ。
数日後莉乃ちゃんママから、少し殴られた衝撃で、頬が赤くなったのと、歯が折れただけで大事にはいたらなかったと、連絡があった。
それは良かったと、安堵して、「よかった」と返し、飯田くん親子の話になった。
莉乃ちゃんママは、「頼仁くん反省しているみたいで、よかったわぁ」と言うと、私は複雑な顔をしながら、「それは、そうなんだけど、気になることが多くてね」と言った。
莉乃ちゃんママは、少し食い気味で、「気になることって何よ、男の子には、あんなふうに言ってやるのが1番良いのよ」と言う。
私は、ため息をつきながら、「男の子だから傷が早く癒える特殊能力をもっていると、お考えなんですか」と問いかけると、莉乃ちゃんママは、「そういう意味じゃなくて、あなたの息子のおかげで痛い目にあって、きっと反省しているから良かったと言っているのよ」とホッとした顔で言った。
私は「なるほどね、ごめん私すごいこういうことに対して熱くなってしまうところがあって、イライラしたよね」と言うと、莉乃ちゃんママは、「うん、ちょっとね、物事を考える視点が私と違うみたいでイライラしたけど、面白そうだから、頼仁くんが心配だと思う理由を聞かせてよ」と言ってくれたので、私は、「それは、女は弱い生き物、男は女を守る生き物という教育を受けてることかなぁ」と言った。
すると、莉乃ちゃんママは、悪態をつきながら、「その教育のどこが、ダメなの、よくうちの親も弟にそんなことを言ってたけど、つまり、男なんだから、しっかりしなさい女の子を守る盾になり、頼られる人になりなさいってことでしょう」と言い放った。

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