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験担ぎマインド
情けない話、私は弱い。
少し不安な事があると、昔からその不安を振り払う為に験担ぎをしていた。
簡単なゲームの様な私なりの験担ぎは『マンホール踏むとあかん!』とか『横断歩道の白線を踏んだらあかん事になる!』とか、その他しょうもない験担ぎだ。
この簡単なミッションをクリアすると全て大丈夫!みたいな験担ぎを子供の時から何となく行って、不安を封じ込めていた。
G.Wが始まろうとしていた日の事である。
私は通勤に30分を要すが、その通勤コースをその日の気分によって変えている、その中でもお気に入りは、公園の中を歩いて横断するコースなのである。
そう、その日も私は公園を歩いていた。
公園には立派な用水路がある。
水量は多くはないが流れる水のせせらぎが心地よい。
私はゆっくりと深呼吸をする。
すると、誰かが私にが語りかけてくる。
よく耳を澄ますとーーー
ーーー『我は用水路』
『私を飛び越えて見せよ、さすればその不安、我が譲り受けよう。』
少し前から気になっている事が、私の頭を支配し始めた頃、不安と言う虫食いは、私の心を少しづつ蝕んでいたのである。
『えっ!は、はい!』
『公園の用水路様。今回に限っては験を担ぎたいのです!しかも特大です!なんせ勢いを付けたいのです』
『ならば飛び越えよ!』
飛べそうと言えば飛べそうな距離だが、多分私にはギリギリの距離。
3〜4mは有にある、着地点は乾き切った砂で、もし滑ると推定3メートルは転落。
『血だるまのオッサンおるー』と阪神帽をかぶった子供たちに指を刺されている私が想像できる。
落ち着け、まずネガティブを捨てて、成功のイメージをしよう。
よしまずは体を軽くする為にカバンを下ろそう。
『カバンは下ろしてはならぬ!カバンを担いだまま飛び越えよ!』
『ええ!用水路様!カバンにはパソコンも入ってますし携帯も入って…』
『何度も言わすな!早よ飛べ!』
分かっている、今回の不安は大きい、それなりの験担ぎが必要なのは重々承知。
落ち着け、私はゆっくり息を吸って止めた…
『オリンピックスタジアムの歓声は最高潮。
全ての競技は終わり、残すは走り用水路跳びを残すのみ、緊張の面持ちで用水路を睨んでお腹ます!』
私の金メダルは確定だが、観衆は私のワールドレコードを期待して歓喜している。
ここまでやってくるのにどんだけの物を捨てて来た、私にはコレしか無い、子供の頃から練習に明け暮れた日々を思い出せ!
後は夢を掴むのみだ。
私は両手を大きく上げゆっくりと手を叩いた
。
『パン! パン! パン! 』
スタジアムの観衆もそれに応えるように手を叩く。鳴り止まない歓声と手拍子!
行くぞ!
右脚に力を入れて胸を張る。
『ワーーーーーーーーー!』
私は用水路を飛び越えた。
そして私の中の不安は消え失せた。
しかし私の不安は次の日もまた現れ、2回目は着地に失敗危うく転落しかけた、しかしその恐怖に打ち勝ち、実に私はG.W中にその用水路を3回飛び越えた。
そしてG.W明けに私の大きな不安と立ち向かった結果…。
惨敗。
私の思いは実らず、験を担げなかった。
そして私はまた、公園にいる。
心無しが前より用水路が小さく見える。
用水路が私に話しかけてきた。
貴方は未来に不安を感じる。
貴方は過去に後悔を感じる。
しかし、貴方は今を歩いている。
これが全てである。
『カッコつけるな用水路!』
『名言ぽい事言うな!』
『全然あかんかったやいかぁ!』
『もう二度と飛ばん』
と、私は言い放ち、私はゆっくり息を吸って止め、胸を張り、また助走をつけるのでる。
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