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【黒沢 薫 Billboard Live Tour 2022 “All U Need Is Luv”】(2022/8/26 Billboard Live 大阪/2nd Set)

 記憶も朧げだけど今さら一言だけ書いていく、去年のライブの感想シリーズ。もう約1年前だよ…。今年のビルボード公演も発表されてますね。

 2022年夏、7年ぶりに開催された黒沢薫氏のソロライブ、通称"ぽんソロ"へ初めて足を運ぶ。平日早めの時間帯の開催、仕事の調整に時間がかかり、数日前にやっと予約できた座席はカジュアルエリアの端。バンドを真横から見るような位置だ。
 正直な所、黒ぽんのソロはそれほど聴き込んでおらず、セットリストも知ってる曲と知らない曲が交互に来るのだろうなと思いながら開演を待っていたが、知ってる曲、[Break it down]からスタート。アルバム【LOVE LIFE】の冒頭2曲が大好きなのだ(もう10年前の作品だと気付いて驚いている)。それまでの空気が一変し、"ショウの始まり"を告げるかのような切り替え具合に、唯一無二のR&Bアーティストのステージを観に来たのだな、と思う。
 2曲目は新譜【All U Need Is Luv】のリードトラックでもあり、本公演のキーワードでもあった[Honey]。ぽんソロ恒例のオーディエンスのドレスコードのキーワードも"Honey"だった。
 ドレスコードを意識して事前準備して向かったライブは今回が初めてだったと思う。私にとってのライブは気になった音楽や人をサクッと観に行くという感覚だけど、準備して数日前からワクワクしてそれ相応の恰好をしてその空間に浸る、という体験はこのライブに行って良かったことの一つだ。

 もう1曲歌った後だったか序盤のMCで面白かった話。
 「色んな人が来てくれていると思うんだけど」とのことで…「ソロも素敵なのよ」と毎回来てくれる人、SKY-HIとのコラボ曲から知ってきてくれた人、偶然ビルボード会員だった人、推しは他にいるけど偵察がてら観に来た人、と順番に挙げていて、心の中で「(ごめんなさい、4番目です)」と苦笑いしてしまった。推しが他にいるというよりは、箱推しなのだ。確かに偵察のような目線もあったけど、でも予想以上に面白い体験が出来ている。
 中盤以降はソロ初期の曲やプロデュース曲のカバーも交えつつ、だったけど…ごめんなさい、サポートとしてバンドに入っていた竹本さんのソロパートが素晴らしかった。と同時に、竹本さんの見せ場を多く作った([心はいつも]も竹本さんとのデュオだった)のは黒ぽんらしい構成だなと思う。
 あと、終盤の[Wake Up]は、今の黒ぽんのSNSでの投稿をずっと追っている身からするとリアルな表現だということは実感していたが、ライブで聴くと説得力が増す。本編だったかアンコールだったか「音楽で世界は変えられないかもしれないけど、世界を形作っている人々の背中は押せるかもしれない」というMCもあったが、必要性を感じたからこそ出来た曲なのだろう。

 全編を通して、しっかりと準備されたステージと空間で、めいっぱいにR&Bとしてのボーカルとサウンドを浴びることができた、という印象だった。
 この"しっかりと準備された"という部分には前述のドレスコードも含まれている。ライブから半年以上経過した2023年3月、イナダシュンスケ氏と黒ぽんのツイートのやり取りを眺めながらふと、「自由に各々のスタイルで楽しむのも良いけれど、ある程度の形式に則ったうえでどう楽しむか」というのがこの人のベースになっているのだろうな、と気付く。
 何より、ベテランアーティストとしての風格や実力という姿よりも、常に最新の音と表現を追い求めるリアルタイム性を持ったR&Bアーティストとしての黒沢薫を目の当たりにできたこと、これに尽きる。次の世代のアーティストをピックアップ(*1)したり共作やプロデュースワークをしたり、そういった活動もずっと見てはいたけれど、こんなに瑞々しくて、でもソリッドで、そして豊かな歌と音を届けてくれるのは、その結果なのだろう。

 次に観る時はどんなステージになるだろうか。世界の状況はどんどん悪化している。それにどう呼応するのだろう。そんな事を気にしながら、着ていく服も考えながら、8月の公演を楽しみにしている。

*1…黒ぽんがピックアップする次世代のアーティストの中で一番ハマったのは、SIRUPだと思う。2017年頃。蓋を開ければ、ああ、この人だったのか!という驚きも勿論あったが。これを書いている2023/6/11、久しぶりにSIRUPのライブを観ます。