『緋弾のアリア』シリーズ忘備録

はじめに


・最近電子書籍で『緋弾のアリア』シリーズを買いなおして読みなおすなどしていたら、記憶にあった以上に面白かったとともに、何点か気が付いたこと、気になることがあったので忘備録代わりにnoteを書いてみる。
・このnoteを書く上で同様のことがネット上に書かれているかは特に調べていないので他と被っているかもしれない、また全体的に想像を多分に含むがこれらについてはご容赦を。。。
※事の性質上ネタバレあり


気が付いたこと

1:2度目のタイムラインの衝突

『緋弾のアリア』と同様の世界観を有している小説『やがて魔剱のアリスベル』内のタイムラインと2度目の衝突がおそらく次巻(38巻)あたりで起こりそうだ。

世界観のタイムライン図

『緋弾のアリア』はガンアクションに始まり超能力、妖怪、宇宙人、異世界など非常に要素が多いが、『やがて魔剱のアリスベル』ではアリア内で少し触れられた程度の時間遡行が本格的に描かれている。
『やがて魔剱のアリスベル』は2013年の4月から物語がスタートし、1度目の遡行で2010年11月19日へ、2度目に2009年12月23日、そこから未来へ跳躍して2011年3月11日に行った後、元の時間軸へと還ってきていた(その後静刃・鵺はまた過去へ戻る)。

『緋弾のアリア』はまっすぐに時間が進むため、1度目の衝突は2010年1月10日に起こり、その様は16巻で描かれている。そして『やがて魔剱のアリスベル』内の最初の時間遡行で到達した2010年11月19日からの時間では、(おそらく)アリスベルの誕生日である12月1日に刻の結晶で未来に追いつこうとした静刃らにアリア・レキが襲撃する様が描かれていて、これが2回目の衝突となると考えられる。
そして現在の最新刊である37巻は正確な日時が描かれていないものの、34巻の最後で雪花の口から平成22年(2010年)11月1日を迎えたことが語られていて、かつ36巻内でも11月内であることが示されている。よって近いうちに2回目の衝突が起こりそうだ。

『やがて魔剱のアリスベル』4巻の「緋色の挑戦者」内で描かれている未来の内容としては、アリアが緋緋粒子を自由に出せるようになっていること、キンジが不知火の依頼を受けてアリアと離れていること、アリアはそれを一時的なものでなくパートナーがとられたと解釈していることといったところだろうか。

『緋弾のアリア』はキンジの視点でのみ物語が展開するので、「緋色の挑戦者」の内容が直接描かれる可能性は低いと思われるが、少なくとも次作以降でキンジは不知火から(おそらく不本意な形で)依頼を受けることになるのだろう。
※ちなみに『やがて魔剱のアリスベル』4巻が刊行されたのは2014年のことのようなので、例年通りに12月に最新刊が出れば、8年越しでどのようなストーリーが展開されていたのかがわかるかもしれない。

2:璃璃色金の動き

37巻でレキが不審な動きを見せていて、これはいつも通り風こと璃璃色金の意向を受けていることが示されている。璃璃色金が何を考えているのかは現時点では明らかではないが、これまでにも璃璃色金について記述されているポイントがあったので、なんとなく思考の傾向程度は分かるかもしれない。

まず、璃璃色金は『緋弾のアリア』と同様の世界観を有している漫画『フェンリル』内にフェンリルとして登場している。漫画内の記述からわかることとしては、璃璃色金が宇宙に還りたいと考えていること、未来視の能力を持っていること、この時点(12世紀)では人の感情を嫌うような様子は見せていないことがある。

次に、『緋弾のアリア』内の記述からわかることとして、19巻の瑠瑠色金の発言より「人に触れられず、永遠に眠り続けること」を望んでいること、22巻の理子の発言よりその瑠瑠色金と仲違いをしていること、25巻のネモの発言より璃巫女はN側につくべきであること、26巻の玉藻の発言より「璃璃の」が放置できない動きを見せていること、30巻の金一の発言より白雪も(おそらく)伏見でこの件について対応していることがある。

特に注目するべきはネモが璃巫女はN側につくと考えていることだろう。璃巫女は璃璃色金の意向を受けて行動する以上、璃璃色金がパンスペルミアの扉に近い姿勢であるとネモが認識した上での発言と見るのが自然だ。
37巻内でレキはリユニオンのことを「集うべきでない集い」と発言しているが、これは扉派である璃璃色金にとって集うべきでない(=砦派に有利)のか、中立な立場で未来視の能力を使ったうえで集うべきでないと判断したのか、現時点では複数の解釈が可能なように思われる。

少なくとも璃璃色金の現時点での目的が宇宙に還ることからは変わっていそうだ。緋緋色金が既にそれを達成している以上、璃璃色金もアリアに協力すれば宇宙に還れる可能性が高いのだから。

3:ジーサードの動き

30巻でベイツ姉妹の発言よりジーサードが『F』に触れようとしていることが示された。そしてこの『F』がフシであることが36巻でジーサードによって明らかにされた。ジーサードは最愛の人であるサラ博士を蘇らせようとしていることから、このフシは不死鳥=鳳とみて間違いないだろう。2010年時点ではあらゆる願いを叶えると考えられているはずの鳳の力をジーサードが使おうとすることには合理性がある。

とはいえ『やがて魔剱のアリスベル』内では、ジーサードがその力を使うことに成功したような描写はない。よってこの企みは失敗するのだろう。『やがて魔剱のアリスベル』1巻では平成20年(2008年)に貘と出会い、それからアリスベルは鳳凰戦役のために欠片集めを開始してその中で武偵とも対峙したという記述があるが、もしかしたらこれはジーサードのことなのかもしれない(だとしたらジーサードは負けたのだろうか)。

気になったこと

1:「緋色の挑戦者」の不知火の発言

「緋色の挑戦者」において、不知火はアリアにキンジがサッカーを手伝った報酬として、依頼を受けたと発言している。しかしこのサッカーの件は22巻の公安0課のリクルート騒ぎで契約満了となっているはずだ。
もちろん不知火はアリアに本当のことを言う義務はない。この件が契約満了になったことをキンジがアリアに伝えているとも考えづらいので、方便としてサッカーの件を持ち出しているとも考えられるが、その場合アリアには言えない理由でキンジは不知火に協力していることになる。
『やがて魔剱のアリスベル ヒロインズ・アソート』の「パンスペルミアの追撃者」では、2013年1月時点でキンジは東大に入学していて、かつ公安0課にも所属している。また、アリアが貘の身柄を交渉材料にしようとしていて、これは「緋色の挑戦者」内の構造と類似している。
もしかしたら「不知火の依頼」は2013年まで尾を引き続けているのかもしれない。
一体キンジは何ゆえに不知火に協力することになるのだろうか。

2:静刃はどの時点に戻ったのか

『やがて魔剱のアリスベル』の最終巻では、静刃は鵺と一緒にキンジを助けるために3年前に戻る決断をする。これは鵺の能力の限界としているが、この3年前という数字にはやや問題があるとも考えられる。
というのも、22巻の「アノニマス・デス」内で公安0課がキンジを勧誘するのは2010年3月31日である。しかし、静刃が過去に戻るのはどれだけ早くても2013年6月12日以降なのである。3年が正確に36か月を指しているとすると戻れるのは2010年6月までであり、この場合静刃はさらに時間遡行をして、3週目の世界として23巻でキンジに協力していることになる。
もし3週目に入っているのであれば、鵺の3年縛りの意味が薄くなるように感じられるが、最初に戻った時点からさらに戻らなくてはならない事情があったのだろうか。

3:静刃のパンスペルミアの砦の認識

『やがて魔剱のアリスベル』の最終巻で静刃は、砦を人間が不連続体である妖を絶滅させる計画として認識している。しかしながら、『緋弾のアリア』では砦が意味することはレクテイアから異世界人が来ることを受け入れない姿勢のことだとされている。
少なくとも2013年時点の『やがて魔剱のアリスベル』ではサード・エンゲージが達成されていない以上、『緋弾のアリア』内でエンゲージが阻止されることになり、砦の意味が変容したとも考えられるが、この辺の設定についても気になる。
また、2010年に戻った静刃は、砦の意味が変わっていることに気付いているのだろうか。

4:キンジの母親は誰なのか

『緋弾のアリア』シリーズでは、金一・シャーロック・金叉等死んでいたまたは死んだような描写があった人物が生きているということが非常に多い。
そこで気になるのがキンジの母親だ。というよりも金叉の妻という言い方をしたほうがいいかもしれない。「狗を狼にしてはならない」という前提からすると、金叉が何の能力も持たない女性を妻にしていると思えないのだ。
しかし、29巻でキンジたちの母方に星伽からの養子がいてその縁で父・母が出会ったということが明らかにされている程度で、その情報は非常に少ない。
個人的な妄想を書いてしまうと、キンジたちの母親はレクテイア人またはその血の濃い人なのではないだろうか。理由は「そうだと面白いから」というのが正直最も大きいのだが、この妄想を補助する記述がないわけでもない。それはキンジの化学薬品が効きづらいという体質だ。この体質は2巻や16巻など随所で示されているが、32巻でレクテイア人であるエルフのエンディミラには化学物質のトルエンが無効だという記述がある(キンジには効いているが)。地球人とは若干組成が違うためにキンジに化学薬品が効きにくいのかもということだ。
なんにしても遺伝的な要素が持つ意味が強いこの作品において、母親が誰なのかは気になるところだ。

5:超越的な存在について

26巻で言及されていたベレッタとの出会いと宝城院の密談に現場にキンジを引き合わせた超越的な存在が誰なのかについては、おそらく地球史が答えだと考えている。Nの行動は、最終的に地球内に不連続体を呼び込むものなのだから、それを地球史が拒もうとすることは当然の反応のように思える。そこでキンジを使っているのではないだろうか。それ以外で超越的な存在(たとえばポアロ)を登場させるメリットもないように思われる。
とはいえ、ベレッタ・宝城院ともにその行動が導くところは文化レベルの後退であるため、不連続体に対しては間接的な影響しか与えない。そのレベルの事象にまで地球史が手を出すのかは気になるところだ。

6:エスパー周りの血縁関係

『やがて魔剱のアリスベル』で出てくる桃井矢子は2巻で美咲ちゃんと発言していて、その様が親戚のようだと描かれているが、この美咲ちゃんは間違いなく中空知だろう。中空知は異能の旧華族ということになるが、矢子とはどのような関係なのだろうか、また中空知家はなぜ落ちぶれたのだろうか。
また、27巻で出てくる公安7課の斑鳩警視正は『やがて魔剱のアリスベル』で出てくる校長の斑鳩乃重と苗字が一緒だが、この辺の血縁関係は明らかになるのだろうか。

7:「鈍色の挑戦者」の静刃の発言

かなり細かい話になるが、『緋弾のアリア』と『やがて魔剱のアリスベル』で「鈍色の挑戦者」内における静刃の発言が一部異なっている。具体的には、『緋弾のアリア』では「~、偽キンジ。」と発言していて、『やがて魔剱のアリスベル』では、「~、偽遠山。」と発言している。
特に時間遡行モノでは、同じ時間において同じ人物が同じ行動をとることは非常に重要だ。作者が『やがて魔剱のアリスベル』4巻末のあとがきで『挑戦の環』という概念を掲げている。『緋弾のアリア』と『やがて魔剱のアリスベル』で描かれている「鈍色の挑戦者」はその環の中では別のものだったと考えることもできるが、この発言の違いも気になるところだ。

さいごに

もしここまで読んだ人がいたとすれば、お疲れ様です。
いろいろ書いたけど38巻が楽しみですね。

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