抵抗とは、暴力との非暴力的な闘いである。「信頼、共感、相互の配慮、そして連帯」といったケア関係を紡いでいく中で育まれ、大切にされる諸価値を暴力は破壊する。したがって、「ケアと暴力が相反することは明らかである。暴力は、ケアがなんとか紡ぎ出そうと骨を折るものを傷つけ、破壊するからだ。他方でケアは、暴力を制限し、封じ、防ぎ、回避するための方法を講じるように、わたしたちに要請している。暴力の特徴とは、より大きな暴力への連鎖なのだ。」
それでは具体的に、ケアの倫理から導き出させる平和構築に向かう実践とは、どのようなものなのだろうか。わたしたちは、女性たちを中心としたさまざまな試みの中に、すでにその具体例をいくつもみてきているのではないだろうか。暴力を被った者は、モノのように扱われたがゆえに尊厳を傷つけられ、屈辱を味わう。被害者たちは尊厳をいかに回復するのか、わたしたちはいかに被害者たちの訴えに応えていくのか、そうした問いに応えていくことそのものが平和に向かう実践であることを示しているはずだ。その実践は、暴力に暴力で応えることは自壊的な衝動に他ならず、暴力との闘いではあり得ないという、もっとも平和を希求してきた被害者たちの経験に裏付けられてもいるだろう。