おふくろの味
つい最近、お母さんの手料理の中で好きなのは何かという話題になった。
「オカンに作ってもらった記憶がないからばーちゃんの生姜焼きかな」
そう答えて一瞬ひどい空気にさせてしまったけど、友達が良い人達で助かった。
友達はそんな話をした事も忘れている頃、京阪電車に揺られながら考え、思い出した。オカンの手料理。しかも2つ。
1つ目は小学生の時に双子の兄とオカンと作ったきな粉だんご。手料理かと聞かれれば難しいが、とても楽しかった思い出として記憶に残っている。
2つ目はグラタン。何歳の時だったか、昼ごはんか夜ごはんに食べたかも覚えていない。アツアツのグラタン。
確かその1回きりの料理の為にグラタン皿を買っていたと思う。その日のオカンはそれくらい張り切っていた。
料理はしないけど、3分クッキングはかかさず観る変なオカンだったから、作った理由もそれに影響されたとかちっぽけなものだったと思う。
それでも幼い僕は嬉しかった。理由などどうでも良く、ただお母さんが自分のために美味しいものを作ってくれている、その気持ちが嬉しかった。
「今年は28日に帰省するわ〜」
もうすぐ24歳になる僕はオカンにLINEを送る。
「おばあちゃんが何でも好きなもの作ってくれるから何でも言いや〜」
すぐにオカンから返事が来る。
「生姜焼きかな」
3時間ほど空いて、返信を送る。
グラタンが食べたい、と言えるほどまだ大人ではないし、
グラタンが食べたい、と言えるほどもう子供ではなかった。
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