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見えないものに期待して

 特にピンと来る洋服はないけど、せっかくここまで来たしな。うーん。まぁでも、この中だったらこれがまだマシかな。よし、一応これ買っとくか。

 普段は忙しくてなかなか行けないショッピングモールに行くと、特に欲しいものがあるわけでもないのに、手ぶらで帰宅するわけにはいかないとついつい商品に手を出してしまう。こんな経験はきっとみんな人生で一度はあるんじゃないだろうか。今しかない、次のチャンスはもうやって来ないって自分で自分を焦らせてしまって。一旦時間をおいて冷静に考えてみると、下手に買わなきゃよかったなと後悔するというお決まりのパターン。

 こんな感じで、突然目の前のことだけしか見えなくなることって多分、買い物の以外の場面でもあるんじゃないかなって思う。目の前にあるものだけであれこれ悩んで、その時存在しないもの、目に見えていないもの、これから出会うかもしれないものを待ちきれず、突っ走ってしまったり。例えば、人間関係。本当にその人が好きなのか分からないのに好きだと思い込んで、勝手に恋愛ごっこみたいな状態になってしまう場面。今更自分の気持ちに正直になって、本気でこの人を好きって思えていないんだと自覚するのがかえって怖くなって、自分自身で歯止めがかけられなくなってしまう状態。

 「人の意見を鵜呑みにするんじゃなくて、自分の目で直接見たことを信じるべき」だと教わって来た。その教えには賛同出来るし、情報過多な社会を生き抜くためには必要な術なんだと思う。

 一方で、この教えだけではなくて、見えないものを信じて、気長に待てるかどうかも大切なんじゃないかなって思う。ある意味「賭け」みたいなもので、本当に自分に合うものや人に出会えるのか保証されているわけでもない。しかも、この考え方はある意味で「現実的でない」「空想止まり」ってネガティブに捉えられがち。

 けれど、時には心に余裕を持って、ふっと力を抜く時があっても良いのかなって思う。突っ走ってばかりいても、空回りして、逆に疲弊してしまう気がする。リアルなものだけに囚われるんじゃなくて、もっと寛容な心で、目に見えてないものに期待を寄せてみたって良いんじゃないかなって思う。

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