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下着屋さんのお姉さんとわたし

幼い頃から、体が小さかった。
大人になった今も身長は150cmに届かないし、体重も40kgを超えたことはない。
今でこそよく食べるようになったが、昔は本当に少食で、給食のパンは最初に半分減らして最後に半分残すことも日常茶飯事だった。

そして、胸のボリュームも大きくない。
具体的にはトップとアンダーの差は5.5cm、つまりAAAカップ。
そんな私は、C65のブラジャーをつけている。
見栄を張って嘘をついているわけでも、無理をしてブカブカの下着をつけているわけでもない。これが私にぴったりのサイズなのだ。

実寸AAにも満たない私がC65のブラを身につけるようになったきっかけは、ある下着屋さんの店員さんとの出会いだった。

それまでは母が通販でシンプルなAAAのカップのブラを買ってくれていた。
当時の私は下着への興味も知識もなかったので特に不満は抱いていなかったが、高校生になった頃だろうか、「下着屋さんでブラを買ってみたい。」と思うようになった。

家から少し離れたところにある、映画館が併設されたショッピングモール。その中にある、若い女性向けの下着ブランドに足を踏み入れた。
初めて見る上下セットの下着。レースの装飾がすごく綺麗で、眺めているだけで幸せな気分になったのを覚えている。
店内をぐるぐる回っていると、店員さんが「採寸しましょうか?」と声を掛けてくれたので、もちろんお願いした。結果は予想外のものだった。

「お客様のサイズはB65です。」

B65??
AAAじゃなくて??

下着の知識がついた今なら、実寸とブラのサイズは違うと分かる。けれど、その時はただただひたすらに驚いた。
私は、「いつの間にか胸が大きくなったんだ!ヤッター!!」と大喜びした。

その後は気になったデザインのブラをいくつか試着させてもらって、最終的に可愛らしい上下セットの下着を購入した。
下着屋さんのショップ袋を手に帰宅する自分は、なんだか少し大人になったような気がした。

それからもそのお店に通い、数ヶ月に一度は下着を購入した。最初の店員さんだけでなく、他の店員さんも皆とても優しく、素敵なお店だった。
そしていつだったか、いつものようにフィッティングをしてもらうと、店員さんがこう言った。

「このデザインならC65がぴったりですね。」

まじか!!!

いつも店員さん任せだった私は、デザインによってサイズが変わることを知らなかった。
私は再び「また胸が大きくなったんだ!ヤッター!!」と大喜びした。

そうしているうちに、大人になった。
独身時代はそこそこの頻度で下着を新調していたが、結婚してからは自分1人のためにお金を使うことに興味を持たなくなった。

数年後、さすがに下着が傷んできたので、久々にいつものお店に行こうと思ったが、なんとそのお店は数ヶ月前に閉店してしまっていた。

ショックだったが、良い機会だと自分で下着を選ぶための勉強をすることにした。
すると、もちろん店員さんに相談しながらではあるが、ある程度は自分で選択できるようになった。
アンダーとトップの差が小さくても、私にぴったりなのはC65のブラだし、デザインによってはD65を選ぶこともある。ブラのサイズはボリュームの大きさだけでは決まらない。

知識がつくとこれまで以上に下着選びが楽しくなった。
今では、新調した下着を夫に見せつけては、「似合ってるね。」「綺麗やね。」と褒めてもらってニヤニヤする幸せな日々を過ごしている。

けど、やっぱりあの時の店員さんとの出会いがなければ、今の私はなかったのだろう。
自分が思っているサイズと違うことがあること、フィッティングが大切だということ、そして、胸のボリュームが大きくなくても下着を楽しむことはできるということ。

もうあのお店の店員さんたちにフィッティングをしてもらうことはできないけれど、この場を借りて感謝を伝えたい。
私に下着の楽しみを教えてくれて、ありがとうございました。

#下着でプチハッピー


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