本当は完成していたパッチワーク

「これで、もう本当に終わりだ……」
浮かれる人で溢れる金曜日の恵比寿、私はがっくりと肩を落とし、ふらふらと歩いていた。なかなか手放せなかった恋が、今、目の前で、完全に終わりを告げたのだ。

その夜、私は1年前に別れた元カレと会っていた。当時、結婚したい20代後半と、転職をしたい30代前半のカップルだった私たちは、お互いの方向性がそろわないことが引き金となり、別れを選んだ。
最後は別れてしまったけれど、3年もの時間を共にしたその人と、ふたりで丁寧に作り上げた絆は、まるでパッチワークみたいだった。彼の持ってきた生地と、私が持っていたものを、コツコツと縫い合わせ、一つの作品を作っていく作業。
もちろん、上手くいくことばかりではなく、針で指を刺してしまい血が出たり、意見が食い違って、縫うことをあきらめたりした夜もあった。それでも、時間をかけてつなぎ合わせた色とりどりの布切れは、ある程度の大きさとなり、鮮やかなパターンが美しかった。
だから、彼が去ったあと、未完のまま残さされたそのパッチワークを、私はなかなか捨てることができなかった。

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