見出し画像

会社に辞意を伝えた

先週、会社に辞意を伝えた。
私は以前にもこの会社に辞意を伝えたことがある。

私が勤めている会社はいわゆるクリエイティブ業界のブラック企業で、残業は当たり前で終電帰宅の日々。深夜2時に帰宅して7時におきる生活。土日も出勤していたし、徹夜をすることもあった。もちろん残業代は1円もでない。給与は平均的なOLと同等。典型的な「やりがい搾取」である。

今も帰宅は22時以降が常だが、当時に比べればマシだ。
まあそんなこんなで心身ともに限界だった。会社で動悸がし、過呼吸で倒れ、突然泣き出す。病院には通院し安定剤も飲んでいたが、まともな状態ではなかった。到底自分のタスクをこなせる体力と気力が残っていなかった。

そんなこんなでちょうど一年前、辞めますといった。辞表も出した。社長にも話した。
がしかし、直属の上司に止められた。今辞めてどうするんだ、3年はがんばれ、と(私は中途で入社し、その時は2年たっていなかった)。こんな状態でどう頑張るんだと思った。それでも3年経てばこの業界では一人前になれるから、がんばれ、と。

結果、つづけた。多忙で転職活動(の面接や筆記試験)をする暇もなく次のアテもなかったからだ。途中、時短勤務なども経たがそのあとフルタイムで復帰した。

そんな先日、20時ごろ。幸い周りの社員が出払っていたり帰宅していたりで人が少なかったので、上司に声をかけた。以前辞意を伝えた時と同じ上司だ。ご相談したいことがあるので、向こうで話してもよいですか、と。(普通アポをとってから話すのが筋だと思うだろうが、うちの会社は大きくはないのであまり事前にアポをとって話すような会社ではない。

きっとこの時点で上司は何かを感じていたと思う。だって普通の相談なら、その席の場ですればよいはずだ。わざわざ別の場所で話そうと私から持ち掛けているのだから。

上司はああ、といってついてきてくれた。お互い、テーブルをはさんで向かい合う形で席に着いた。決めていたのに、言葉が出なかった。
あの、あの……。といった言葉が続いた。上司はうん、と静かに言った。

〇月〇日をもって、会社を、退職します。

言った。上司はあの頃のように止めず、「そうか。」と言うだけだった。
意外だった。「一応、理由を聞いてもいいか。上にも話さなくちゃいけない」。静かに尋ねてきた。
「来年から、イギリスに行くんです。」
そうか。お前、イギリス大好きだもんな。いつから行くんだ。
「2月からです」
そうか……。仕事的の区切り的にはもう少しいてほしいが、もう2月に行くなら仕方がないな。今の仕事をしっかり終わらせろよ。

それで終わった。もちろん手続き的な話はこれからするのだが、余りにもあっけなく終わった。びっくりした。
こんなにすんなりいってびっくりしました、と正直に伝えると
「だって俺が行くなって言ったら行くのか?」と笑いながらきいてきた。
いいえ、行きます。だってイギリスですから。
「そうだろう。だから仕方ない」


ただ、仕事がなければすぐ帰国することを伝えると
「そういうやつに限って長く向こうにいたりするんだよ。俺にはわかる……」とだけ言っていた。


とまあ、忘れないうちにあった出来事を下書きもせず書いているのだが。
私は退職するころには今の会社にいて3年になる。正直、キャリア的には今イギリスに行くべきではないだろうなと思っていた。周りの私への扱いや仕事内容もステップアップしていたし、「これから昇進していくんだからこういうことも覚えていかないとね」といわれ、今までとは異なる業務内容を教わっていた。それが簡単に辞められて、なんだか不思議な気持ちなのだ。

イギリスに行くという理由を伝える前から辞意を受け入れられていた。自慢じゃないが、うちの会社はあまりにも人が辞めづらい雰囲気(一年中激務が故、仕事上の区切りの時期がなく、だいたい辞める人はある日突然来なくなる。後日保険証だけが郵送で会社に届くなど日常茶飯事なのだ)なので辞めるといえば止められると思っていた。

引き止められなかったのは、もうこの会社には私が必要がなかったのだろうか。
もしくは、この会社にいないほうが私にとって幸せだと思ったのだろうか。
あるいは、3年もたち一人前だと思ってくれたのか。

その理由は、わからない。

イギリスに行っても今の職種が向こうで通用するとも思えないし、何より英語も話せない。今ここで渡英することで、大きくキャリアが変わろうとしている。正直不安だ。家族も不安がっている。私はこの先どうなるのだろう。見えない不安が、押し寄せる。一歩一歩、夢だった渡英に近づいているというのに。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?