見出し画像

心より

ープロローグー

 音楽が好きじゃなかった。

 小さい頃から音楽が好きだった、自分の歳よりも長い間音楽を感じていたから。
 好きなアニソンや、ゲームのBGMがあった。まだ幼稚園生だった自分は、幼稚で立派な音楽に心を奪われていた。
 親はそれを嫌った。楽しそうにしていると、「くだらない」と言っていた。ぼくは親の聞く洒落た昭和の音楽がよく分からなかった。嫌いではなかったけど、好きになれなかった。
 自分の好きなものを肯定したいけれど、自分の嫌いなものを否定する権利は同じようにあるわけで。いい加減言い合いになることにうんざりした。

5歳の子供は、音楽を好きとは言わなくなった。

 ーNewMusicー

 あっという間に大学生になっていた。小さい頃から宇宙が大好きで、憧れを持っていた僕は理学部の宇宙コースに在籍することになった。「友達つくるのが下手な自分が、伝染病とのダブルパンチで、誰と仲良くなれるだろう」そう思っていた。 

 そんなことは杞憂だった。学部のオリエンテーションも終わり、最初に学部で仲良くなったのは白木原という人。前期が始まるまでに話したことは、授業のことだけじゃなくてサークルのこともあった。
 話によると、どうやら少し前の音楽が好きらしい。ギターもしたことがあって、軽音サークルに入りたいそうで。一緒に軽音サークルめぐりをすることになった。

 「軽音サークルってお金めちゃくちゃ使いそうだな」とか、「3年間で上手くなんのかよ」とか後ろ向きなことを考えているうちに、NewMusic愛好会の立て看板の前にいた。白木原は部室を見に行って入部することにしたそうで、自分は「付き添いです〜」って言ってノートに名前を書くだけ書いて勧誘は断った。
 音楽の成績はよかった、テストでも毎回満点だったし、楽器のテストもあっさり通過するくらいに。でも親からはダメ出しばかりで、自分にはセンスがない或いは向いてないんだろうなと思っていた。

「おれも軽音サークル入りたいな」

 白木原に電話でそう言った。小さい頃からモヤモヤしてたことも言った。楽器をやってみたいことも言った。別に友達の付き添いとかじゃなくて、音楽を好きだと言う場にいたくて。

「大学は自分の好きなことやればいいさ」

 白木原は電話でそう言ってた。自分を拘束していた親の姿はもう傍になくて、彼の言葉は分け隔たりなく届いた。
翌日、NewMusic愛好会の立て看板へ行った。
 そこで「サークル入りたいです」って言ってやった、これからお世話になる先輩に、そして心に。

 なんだかんだサークル禁止期間とかで、最初の部会は5月26日になった。自分はやっぱりバンドとか制限されていただけ知らなくて、「ボーカロイドが好きです。バンドのこと分かんないから、色んな曲を知りたいです」って自己紹介した。

 ボーカロイドは好きだと言える音楽だった。最近の技術すぎて、親には評価できなかったからだ。「いい曲聴いてるね」とは言われなかったけれど、「くだらないと」は言われたことがなかった。許された世界だった。
 小学校を卒業する手前、iPodを使って最初に聞いた曲は"メルト"だった。その音楽は確かに僕の心を溶かしてくれた。


つづく

執筆たいへんやな、よくみんなこんなの綺麗に書き切るわ🙄
こちとらまだ1ヶ月分しか書いてないんだぞ!!!
白木原しか登場しとらんやんけ😇
大学のレポートもこの調子で頑張るます

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?