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真夜中の自転車

※夏の夜に昔の思い出話です。ホラーチックなので怖いのダメな人は

  回れ右!!


ある夏の終わり、友人が海に行こうと言い出しました。

女子二人で小さな車で、海沿いを走り海岸に着きました。・

ひとしきり泳いで、人影もまばらになった海岸でぼーっとしていても楽しく

ないので、町に戻って美味しいものでも食べようということになりました。

「もー何しに来たんだかわかんないよ」と私が言うと、「ちょっと夏の思い出

にしたかったのよ。」と彼女は言いました。

彼女は先日2年半付き合っていた彼と別れたばかりでした。

「夏の思いでねー」ため息交じりに私が言うと、

「あとは美味しいもの食べて帰ろう」と彼女は言ってエンジンをかけました。

行きつけの店でなじみの常連さんと話をしているときに、

「あの3丁目の交差点最近やたらと車の事故が多いんだってよ。気をつけて帰

りや。」と言われました。


11時を回ってそろそろ帰ろうということになり、

車に乗り込み、しばらく走らせていると、下り坂にかかりました。

もうしばらく走ると例の3丁目の交差点だなと私が思い、ふと窓の外を見た時

ドライバー側の窓の横に自転車に乗った小学生の高学年くらいの子が並走し

ていたのです。

最初気にならなかったのですが「いや待てよ。この車60キロは出てるよ」と

いうことに気が付きました。

小学生の自転車が60キロの自動車と並走できるわけがないのです。

「ねえ、ちょっとおかしくない。ねえ。」友人に問いかけたけれど、返事がな

く、その間にも車のスピードが上がった気がしました。

私は彼女の腕にすがって「ねえったら!!どうしたの」といったとき、

「バチッ!!」という音とともに

車の中で白い光が見えて、急ブレーキがかかったのです。

「キキキーッ!!」

車は急停止し、そして私たちの目の前をトラックが猛スピードで通り過ぎて行

きました。

目の前の信号は赤でした。


私は呆然としている彼女に「さっきはどうしたの!?」と聞くと「

えっ?なに?」と言うのです。

「なんで、スピード上げたの?自転車と競走でもしたかったの?」と言うと、

「自転車?なにそれ?」といってまるで彼女は並走していた自転車に気が付い

ていなかったのです。

「それより首飾り鎖切れてるよ。」と彼女が私の膝の上を見て言いました。

見るとそれは私が父からもらったペンダントで、鎖が切れてペンダントのふた

が開いていました。

そしてなぜか中にあった金の観音様の絵が焼け焦げたようになっていたのです。

私の部屋について、彼女は今夜は泊るということなりました。

私は化粧を落とそうと洗面台のところに行って顔を洗っていたら、

後ろに人の気配がしたので、「お風呂早かったね。」と言ったら、

そいつは子供の声で「もう少しだったのに・・・」といったのです。

私はタオルで顔を拭き急いで振り返ったのですが、誰もいませんでした。

友人にそのことを話したのですが、結局信じてはもらえませんでした。



その5日後、友人はその交差点で事故にあいましたが、出合頭の事故の割に

軽傷で済みました。

事故の後お見舞いに行ったとき、彼女は事故の時の記憶があいまいだったよう

です。

ただ助手席には私が置いてきたペンダントが今度はふたが壊れたようになっ

て、落ちていたということです。




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